インターセプト

レイラ

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第2部 2幕

再びインターハイ予選9

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 ハーフタイムは10分。10分の間に作戦タイムだ。

「もっとスピードがあると良いかもしれない。確かにフェイクを入れてプレーをするのもいい。だけどフェイクを入れさせないくらいの速さがあると、もっと差をつけられる」

 高宮コーチが提案する。

 セットプレーという、それぞれの動きの型が決まっている戦術は、何度もやっていると、相手チームにバレてしまう。そのため、型にはめないプレーも必要になる。そのひとつにスピードがある。

 速ければ速いだけ良いというわけではないが、スピードがあると、どんな戦術になるか、予想ができなくなる。点を取るチャンスが増えるということだ。

「とにかく足を止めない。走ろう。走るのが少ない」

 慧が言うと、俺たちは頷いた。

「よし! 行くぞ! 城伯 1,2,3,ハイ!!」

 皆で円陣を組んで、俺が声をかけた。

「おぉー!!」

 第3クォーターが間もなく開始される。

「メンバーは慧、樹、灯、貴、智樹」

 高宮コーチが名前を呼ぶ。

 達也を除いて、スタメンがコートに戻ってきた。

 達也のことは心配だが、今は試合に集中しないと。

 もしかしたら、達也は病院で検査をしているかもしれない。歩けない状態だったから。でも、達也は達也で頑張っているはず。だから、俺たちはバスケでプレーすることで達也にも勇気を。

 俺は拳で胸を叩いて、達也、見てろ! 必ず勝ってインターハイに連れていくと合図をした。

 笛がなり、第3クォーターの始まりだ。

 平塚高校もメンバーをスタメンに戻してきた。立川、安井、館野、山木、川野だ。

 さぁ、ここからが本番。今、リードしているからといって油断すると、バスケは、あっという間に逆転し、差をつけられてしまう。

 第3クォーターの始まりは城伯高校のディフェンスから始まる。

 俺は川野を走らせないように、しっかりとディフェンスにつく。

「ふー」

 川野は一息ついて、周囲を見る。俺の目を見て、パスするぞと合図している。

 川野はパスをすると合図をしたものの、1対1の勝負を仕掛けた。

「勝負!」

 川野はフッと笑って、ゆっくりだったドリブルの速度を急に上げて、ゴール下まで駆け抜ける。

 そのままシュートをしようとしたが、俺はそうはさせないと、手を出す。

「しまった」

 俺は思わず唸った。手を出したのはいいが、明らかに、これは……

「ファウル!」

 審判はファウルの合図をする。

 俺の手が川野の顔に直撃した。

 川野はシュートを放つ途中のファウルだったため、フリースロー2本が与えられる。

「どんまい」

 慧が俺の肩を叩いて、声をかけてくれた。そのとき、慧の強い意志を感じとれた。

 まるで、俺が必ず取るから任せろと言っているみたいだ。

「サンキュー、慧」

 俺は慧に感謝すると、フリースローを見守った。

 川野の1本目。

 川野はスッと膝を曲げて、膝のクッションを使って、ボールを放つ。

 ん? これは微妙にズレている。運が良ければ入るけど。

 ゴンッ

 ボールはボードによって弾き返された。

 やっぱり思った通りだ。わずかだが、微妙にボールの軌道がズレた。ボードに当たっても入る時は入る。この場合はボードに当たった時にリングから少し逸《そ》れたため、入らなかった。

 2本目のフリースロー。

 川野は落ち着かせて、1本目と同じルーティーンでボールを放つ。

 今度はちょっと足りない。リングに当たって2本目も落ちた。

 その落ちたボールをすかさず取ったのは、慧だった。

「走れ!」

 慧の声に俺はすぐに走った。

 行けるぞ! 慧にパスをくれと手で合図をする。

 慧はまだ、自分の陣地のフリースローラインあたりから、ロングパスで俺にボールを投げた。

「いけー!」

 灯と貴の声が重なる。

 また、ベンチでは口々に

「いけるぞー!」

 と、声を出していた。

 記録をとりながら、美香は

「樹ー!」

 と、叫んでいる。

 美香の声が誰よりも耳に響いたような気がした。

 その声に集中力が増したか、俺は落ち着いて、ゴール下のジャンプシュートを決めた。

 シュートをする直前に、慌てて安井がブロックしようとしていたが、すでに遅い。

「よしっ!樹、ナイス!」

 慧は言いながら、ハイタッチを求めた。

「慧のおかげだよ、サンキュー」

 俺は慧に感謝してハイタッチをした。

 城伯高校のディフェンス。

 川野は俺を観察しているのか、じっと、見つめている。

 俺は隙を見せないようにディフェンスをする。

 川野は、ドリブルで切り込んでいくことも、パスを出すこともできずに、少し焦りを感じているのようだ。

 時間を見れば、あと6秒でシュートを打たなければ、24秒ルールにより城伯高校のボールとなる。

 川野は24秒もあり、半ば強引に俺を抜いて行こうとした。

 チャンス! このときを待っていた。俺は川野の右側を通り過ぎながら、ボールを奪い取った。スチールだ。

 俺が通り過ぎようとした瞬間、川野はディフェンスがズレて、ゴール下までドリブルで駆け抜けるドライブができると判断した。

 だから、河野にとってもチャンスと感じたかもしれない。

 そこを狙って、俺はボールを奪うことができた。

 突然のことに、平塚高校のディフェンスは、慌てて戻ろうとしたとき、既に俺はレインアッブシュートを決めた。

「ナイスカット! 樹!」

灯と貴と慧と智樹、そして、美香の声が同時にした。

 俺はチームのメンバーにやったぜというアピールと、川野に対して少し体が接触してしまったので、謝る合図も含めて、手を挙げた。

「チームの活気が出てきたな」

 川野は俺に呟いて、フッと笑った。次はやってやるからなと目を輝かせた。
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