インターセプト

レイラ

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5幕

イップス9

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 メンタルトレーニングも取り入れてから、あっという間に3ヶ月が過ぎた。

 この頃は、だいぶ、慧も再び取り戻してきていた。俺らが心配する必要はなかったんだ。思ったよりも慧は、心が強かった。

 でも、それは、ちゃんと弱さと向き合っているからだと思う。すごいなぁ、慧は。

 俺が心配し過ぎたのかな。

 そういえば、もうすぐ期末テスト。それが終わったら、春休みだー! と浮かれている場合じゃない。ちゃんと勉強しないと3年になれない。

 勉強しないと。バスケもできなくなってしまう。

 真剣に授業を受けようと頑張ってみるものの。

「無理だぁー」

 俺の声が教室に響いて、笑いに包まれた。

「って、なに、声上げてるんだ。ちゃんと勉強すればいいだろ。無理なら」

 数学の先生が遠い目で俺を見てくる。低い声が教室を静かにさせた。

「すみません……」

 俺はため息をついた。頭が混乱する。なんだ、この得体のしれない公式は。わからなすぎて嫌になる。サイン、コサイン、タンジェントがなんだって?

 期末テスト期間もあって、部活はメンタルトレーニングを中心に、バスケの練習は軽めのシュート練習やパス、ドリブル練習、フットワーク練習の基礎練習のみ。実践を交えた練習はしていない。

 これは勉強の時間を確保するために、高宮コーチが提案したものだ。高宮コーチは勉強のことをも考えて、徹底させている。勉強が本業だと。

 また言ってしまうが、高校の勉強って社会人になって必要なのか。何のための授業なんだよ。それよりも、もっと他に大事な勉強があるのでは。

 俺は社会のことについては、大事かなと思っているので、政治や歴史などは、頭に入ってくる。でも、理科や数学といったものは重要だと思わない。

 だけど、最近は高学歴のほうが就職にも有利になる。それって、どうしてなんだろう。考えても俺の頭では、わからないか。

 とにかく、ここを頑張らないと、本当に3年生になれない。また、この時期から考えないといけないのは、これから先はどうするか。

 大学に行くのか、就職するのか、専門学校に行くのか。

 俺は兄ちゃんや姉ちゃんみたいにバスケの才能はないし、母ちゃんを楽にさせるためにも就職することになるのかな。

 そのためにも勉強はしないといけないのか。

 そんなことを考えながら、毎日が過ぎていく。

 あっという間に期末テストの日。

 俺はほとんど勉強していない……ことはない。実は心配した美香がずっと、勉強に付き合ってくれた。

「こらっ、すぐにめげないの。バスケと同じでしょ」

 なんて言いながら、バスケに例えて教えてくれていた。なんて、卑怯な手を使うんだ。バスケに例えれば頭に入るなんてことないし。

 それでも、テストのときは、美香のおかげで、スラスラと解くことができた。美香、ありがとう。

 なんとか、俺も進級できそうだ。

 テストも終わり、春休み。

 春休みが終われば、新たな冒険が始まる。

 今度こそ、インターハイ、ウィンターカップの連覇を狙う。

第1部 完
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