インターセプト

レイラ

文字の大きさ
上 下
68 / 224
5幕

イップス3

しおりを挟む
 イップスが判明して、慧は相当落ち込んでいた。いつもなら、授業中だって慧は真面目で、俺と違って勉強している。だけど、イップスとわかってから、上の空になっている。

 イップスと言われて、正直、受け入れられるものではないよな。他のことをする分には、いつものように普通にできる。それなのに、特定の動作だけできなくなってしまうんだから。

 慧にとっては、バスケのときだけ足が震えて動かない。そんなことあり得るのかって思うよな。俺には何ができるんだろう。よりによって、なんで慧がイップスなんかに。

 授業が終わって、部活の時間となった。今日はメンタルのトレーニングと勉強がメインだ。メンタルのことだし、慧は、今、メンタルでやられているから、気が乗らないだろうな。

「慧、大丈夫か? 無理するなよ」

 俺が慧にかけられる言葉はそれしかなかった。慧は軽く首を縦に振って、とぼとぼと体育館へと向かった。その背はなんだか寂しそうだ。メンタルは難しい。

「慧、やっぱりショックなんだろうな……」

 美香が俺の横で呟いた。美香の言う通りだ。慧の背中からも伝わってくる。俺たちにできることがないから、悔しさも込み上げてくる。

 イップスは精神面からくるから、このまま、気持ちがさらに沈んでいくことはないのかな。ますます慧のことが気になってきた。

 体育館につくと、慧がひとりでシュート練習をしようとしていた。シュートをしようとしても足が震えてジャンプができなくて、少しイラついて、床にボールを叩きつけた。

「もっと、練習して上手くならないと……」

 慧の寂しそうな声が聞こえてきた。慧の心が壊れていくような気がする。声を聞くだけで辛くなってくる。

「慧、違うよ。こうやって練習を増やしてどうにかなるものじゃない」

 俺は慧をハグして宥める。

「辛いよな、バスケのときだけ足が動かなくなるなんてさ……」

 慧は俺にしがみついた。慧の目からは涙が溢れていた。

 どうしたらいいかわからないよな。早く解決策を見つけてたい。でも、そのやり方を誰も知らない。だから、俺は慧の思いを受け止めるしかないんだ。

 俺も凄く辛い。こんな慧見たことない。いつだって、リーダーシップがあって、チームをまとめて、励ましてくれて。何もできないけれど、受け止めることはできる。だから、せめて、慧の思いは受け止めるよ。

 慧は、たくさん泣いて少し落ち着きを取り戻してきた。

 その頃、メンバーが全員揃って、高宮コーチ、精神科医、メンタルトレーナーを待つ。

 人間のメンタルは複雑だ。もっと単純だったらいいのに。俺はメンタルについて、あれこれと考えていると、高宮コーチ、精神科医、メンタルトレーナーがやってきた。

「よろしくお願いします」

 俺たちは高宮コーチ、精神科医、メンタルトレーナーに挨拶をした。これからメンタルのことをしっかり勉強しよう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

“5分”で読めるお仕置きストーリー

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:3,635pt お気に入り:61

Head or Tail ~Akashic Tennis Players~

SF / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:8

性的イジメ

BL / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:3

わたしの家の“変わったルール”

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:653pt お気に入り:42

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,390pt お気に入り:1,558

コート上の支配者

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:285pt お気に入り:6

天と地と空間と海

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:1

処理中です...