172 / 172
新章
172 邪神の卵と侵入者
しおりを挟む
「それは…、【邪神の卵】ですか」
トシゾウが取り出した黒色の卵を見つめるシオン。
邪神の卵は手に入れた時と変わらずほのかに熱を放ち規則的に脈動している。
「ああ、これはおそらく迷宮を出てから手に入れた宝の中では最も価値のあるものの一つだろう。だがその活用の仕方が未だ不明なのだ」
「コレットと迷宮で大きな蛇を倒した時のドロップですね。ご主人様にもわからないことがあるのですね」
自分の主人は全知全能ではなかったのかと真顔で言ってくるシオンに苦笑するトシゾウ。
「もちろんだ。わからないことだらけだ」
分からないことがあるのは分かろうとしていないからというのが原因の大半であるのだが、それをわざわざ言うトシゾウでもない。
スキル【蒐集ノ神】を本気で発動させれば対象に宿る情報を根こそぎ攫うことが可能だからだ。
その情報源はトシゾウ本人にも不明であり、時に前世はどこのアカシックなレコードかと突っ込みたくなるような情報まで引っ張り出すことができる。
とはいえ探る情報の深度を深めるほどにかかる負担も加速度的に増えていくので、それを面倒がるトシゾウは滅多にその深さまでスキルを発動させることはない。
【~ノ神】にまで至ったスキルは、それまでのスキルとは一線を画している。
だが、そんなトシゾウにとって【邪神の卵】はかつてないイレギュラーな宝であった。
相当な力をつぎ込んで【蒐集ノ神】を発動させても、わかるのはそれが邪神由来の素材であるということのみ。
トシゾウが討ち倒した特殊区画のボス、テンペスト・サーペントは、おそらくは邪神の関与により本来の性能よりも大きく強化されていた。
その結果として手に入れた【邪神の卵】は相応の価値があるに違いないというのに、それは依然沈黙を保っていた。
トシゾウは卵という名前からしてただ飾るだけの芸術品でないことは確かだろうと考えた。
中には生き物が入っているのかと考え、卵を孵すべく温めてみたり【邪神の天秤】を発動して瘴気を注いだりしてみたこともある。
【邪神の卵】というからには、中には邪神が入っているのだろうと。
ニワトリを育てて食べるように、育てた邪神と戦って素材を手に入れればさぞ貴重な宝になると考えたのだ。
しかしトシゾウの努力に反して【邪神の卵】は沈黙を保っていた。
トシゾウは鑑定と経験から、おそらく何か鍵となる素材のようなものが必要なのだろうと考えている。
モノがモノなので迷宮主やシロにはまだ相談していない。
迷宮を成長させ邪神へと至り、邪神を殺すことが迷宮の目的だという話は覚えているので、下手をすると迷宮主と争いが起こりかねないからだ。
自分の育った家の大屋さんには一定の配慮をする。
トシゾウは常識人なのである。
たとえそれが宝を前にすれば吹き飛ぶ程度のものであっても、場合によっては敵対覚悟で【邪神の卵】について聞き出す用意があるとしても、今は配慮しているのである。
とはいえ、トシゾウもこの件に関してはさほど急ぎでもないため隅に置いているのが現状だった。
「大きいから卵焼きにしたらたくさん食べられそうです」
「黒いから腐ってそうですわ。生きていても、脈動する卵とか食べる気にはなれないわね」
「ウチの料理班長やったら調理できそうやけどなぁ」
黒く脈動する卵を前にトシゾウの所有物たちが所見を述べている。
「ふむ、おもしろいな、食べるという発想はなかった。さすがはシオンだ」
トシゾウは食いしんぼうのシオンから飛び出た思わぬ意見にひょうたんから駒が出た思いだった。
宝を食べる…。宝を食べる、か。
【邪神の卵】が卵だとするのなら、たしかに食材として利用するのも一つの形なのか。
全ての宝には、その宝に相応しい輝ける場所がある。
それは額に収まり壁を彩る絵画でも、魔物の攻撃から身を守り砕ける盾でも同じことだ。
それならば、極上の料理となり腹に収まる【邪神の卵】というのもそれは一つの宝の勝ちではないのだろうか。
どう見ても生きているのに【無限工房】に収納できたり、いろいろと謎の多い【邪神の卵】だが…いっそ砕いて食べれば良いのではなかろうか。
産まれぬなら、喰ってしまうぞ、邪神の卵。
記憶は曖昧だが、前世の偉い武将もそれに近いことを言っていた気がする。
「…食ってみるのも一興か」
「えぇ、トシゾウはん本気で言っとるんか?」
「トシゾウ様、さすがにそれはお腹を壊しますわよ?」
「…卵焼きが美味しいと思います」
食欲スイッチが入りかけたシオンであったが、反対票が2票入ったこともあり結局は保留となった。
トクン、トクン
トシゾウは【邪神の卵】の脈動のペースが心なしか不安定なように感じた。
☆
ザザ…
「――閣下、こちらコウエン、応答願います」
「む、コウエンか。どうした」
トシゾウ達が雑談に興じていたとき、突如その場にいないはずのコウエンの緊迫した声が部屋に響く。
トシゾウは迷宮主から渡された通話・転移機能を持つ【迷宮主の紫水晶】を解析し、魔力を動力とする通話用の魔道具を開発し主要なギルドメンバーに配布している。
コウエンがその魔道具を使用して通信をしてきたようだった。
「報告いたします。現在、冒険者ギルド内、トシゾウギャラリー周辺に賊が侵入。賊の練度高く苦戦中の模様。救援を要請され応援に向かっているのですが…。侵入者の中に角を持つ小柄な者が混じっているようです。レベルの測定が不可能であり、おそらくはただの獣人ではありません。万が一に備えシオン殿もしくは閣下に応援を要請します」
「…わかった、すぐに向かおう」
通信を切り、行動を開始する。コウエンが警戒するほどの相手。これは明確に異常事態だ。
「ご主人様」
「うむ、どうやら我がギャラリーに賊が侵入しているらしい。応援に向かうぞ」
「はい」
当然、万が一に備えて戦闘班にものろし程度の魔道具や高位の通信装置をいくつか回しているが、コウエンから上、つまりトシゾウへ救援要請が回ってくるのはトシゾウにとっても少々予想外のことだった。
コウエンと、コウエンが直接率いる戦闘部隊の練度は戦闘班内でも頭一つ抜けている。
その力を結集すれば王城へ侵入して宝物庫から宝を奪うくらいはできるし、一線級の冒険者と共に迷宮を歩けるし、シオンと戦っても数分は持ちこたえることができるほどだ。
十把一絡げの賊程度ではどれだけ束になっても敵わない。
その規模の戦力を擁する組織は限られているし、それだけの戦力で侵入場所する場所がトシゾウギャラリーだというのは疑問がある。
トシゾウギャラリーにはたしかに金目の品も多いが、言い方を換えればそれだけだ。
コウエンが苦戦するような戦力とは、本来なら敵対組織の壊滅か、いっそ革命を狙うような戦力だ。
角を持つ賊、理屈に合わない侵入者…。この感覚、どこかで…。
装備を整え素早くトシゾウの近くへ駆け寄るシオンとコレットを横目に考える。
トシゾウはビッチ、もとい艶淵狐クラリッサとユーカクで再会した時のことをなんとなく思い出す。
同じ敷地内とはいえ、ギルド長室からトシゾウギャラリーまでは少々距離がある。
【転移の紫水晶】で転移の用意を進めつつ、敵の気配を探った。
ギルドの中はトシゾウの能力の範囲内だ。
スキル【蒐集ノ神】を使用すれば一定範囲内にある宝とその価値を測定することができるし、【転移の紫水晶】にも迷宮の領域内に存在する生物の検索をすることができる。
トシゾウは侵入者の一人が知っている相手であることに気付いた。
「そういえばあいつも迷宮から出ていたのだったか。…本当にこの世界は面白い。飽きる暇がないな」
迷宮から出たことは間違いではないと繰り返し教えてくれる。
「…コウエン、おそらく相手はお前より格上だ。だが良い機会だ。後顧の憂いなく全力で挑め」
「承知しました、閣下」
魔道具越しに聞こえる頼もしい返事に満足する。
さぁ、次はどんな出来事が待っているのか。
待つばかりの退屈な日々はすでに遠い過去のものだ。
蒐集のための日々はこれからも続く。
トシゾウが止まらない限りその日々の騒動が収まることはないだろう。
トシゾウの目的は価値ある宝を集めること。そのための過程を楽しむこと。
迷宮から出たのも、最初は迷宮の中で宝を集められるようにすることが目的だった。
最初は外の世界になど興味はなかったのだ。
だがトシゾウはいつしかこの世界そのものに楽しみと価値を見出しつつあった。
トシゾウの変化と世界との関わり。
それが世界にとってとても幸運なことであったと、後に世界は知ることとなる。
もし世界を闇が覆えば、トシゾウは宝が集まらなくなることを懸念し闇を祓うことに忠力するだろう。
迷宮へ潜る冒険者の環境を変えようとしたように、世界を変えようとするだろう。
トシゾウが迷宮を出て一年足らず。
冒険者の力が増し、人間は緩やかに結束しつつある。
一見安定しつつあるように見える世界。
しかし、トシゾウとトシゾウの築いたものの力が必要とされる時代がすぐそこまで来ていた。
「ほんまトシゾウはんといると飽きへんなぁ」
トシゾウはギャラリーで激しく動き回る二つの点を認識しつつ、手を振るベルに見送られ転移を発動した。
ドォォ……ン
転移が発動したのと、目的地の方向から冒険者ギルド全体を揺るがすような爆音が轟いたのはほとんど同時であった。
瞬く間に移り変わっていく世界の中、トシゾウはその音が新たな競争を始める始まりの鐘の音のように感じていた。
――――――
作者より 書き溜め期間を頂きます。ストックは40話分くらいありますが、より良い作品にしたく、完結の目途がついてから再投稿を行いますのでご了承ください。
進捗状況は【小説家になろう】の方で活動報告を行います。
トシゾウが取り出した黒色の卵を見つめるシオン。
邪神の卵は手に入れた時と変わらずほのかに熱を放ち規則的に脈動している。
「ああ、これはおそらく迷宮を出てから手に入れた宝の中では最も価値のあるものの一つだろう。だがその活用の仕方が未だ不明なのだ」
「コレットと迷宮で大きな蛇を倒した時のドロップですね。ご主人様にもわからないことがあるのですね」
自分の主人は全知全能ではなかったのかと真顔で言ってくるシオンに苦笑するトシゾウ。
「もちろんだ。わからないことだらけだ」
分からないことがあるのは分かろうとしていないからというのが原因の大半であるのだが、それをわざわざ言うトシゾウでもない。
スキル【蒐集ノ神】を本気で発動させれば対象に宿る情報を根こそぎ攫うことが可能だからだ。
その情報源はトシゾウ本人にも不明であり、時に前世はどこのアカシックなレコードかと突っ込みたくなるような情報まで引っ張り出すことができる。
とはいえ探る情報の深度を深めるほどにかかる負担も加速度的に増えていくので、それを面倒がるトシゾウは滅多にその深さまでスキルを発動させることはない。
【~ノ神】にまで至ったスキルは、それまでのスキルとは一線を画している。
だが、そんなトシゾウにとって【邪神の卵】はかつてないイレギュラーな宝であった。
相当な力をつぎ込んで【蒐集ノ神】を発動させても、わかるのはそれが邪神由来の素材であるということのみ。
トシゾウが討ち倒した特殊区画のボス、テンペスト・サーペントは、おそらくは邪神の関与により本来の性能よりも大きく強化されていた。
その結果として手に入れた【邪神の卵】は相応の価値があるに違いないというのに、それは依然沈黙を保っていた。
トシゾウは卵という名前からしてただ飾るだけの芸術品でないことは確かだろうと考えた。
中には生き物が入っているのかと考え、卵を孵すべく温めてみたり【邪神の天秤】を発動して瘴気を注いだりしてみたこともある。
【邪神の卵】というからには、中には邪神が入っているのだろうと。
ニワトリを育てて食べるように、育てた邪神と戦って素材を手に入れればさぞ貴重な宝になると考えたのだ。
しかしトシゾウの努力に反して【邪神の卵】は沈黙を保っていた。
トシゾウは鑑定と経験から、おそらく何か鍵となる素材のようなものが必要なのだろうと考えている。
モノがモノなので迷宮主やシロにはまだ相談していない。
迷宮を成長させ邪神へと至り、邪神を殺すことが迷宮の目的だという話は覚えているので、下手をすると迷宮主と争いが起こりかねないからだ。
自分の育った家の大屋さんには一定の配慮をする。
トシゾウは常識人なのである。
たとえそれが宝を前にすれば吹き飛ぶ程度のものであっても、場合によっては敵対覚悟で【邪神の卵】について聞き出す用意があるとしても、今は配慮しているのである。
とはいえ、トシゾウもこの件に関してはさほど急ぎでもないため隅に置いているのが現状だった。
「大きいから卵焼きにしたらたくさん食べられそうです」
「黒いから腐ってそうですわ。生きていても、脈動する卵とか食べる気にはなれないわね」
「ウチの料理班長やったら調理できそうやけどなぁ」
黒く脈動する卵を前にトシゾウの所有物たちが所見を述べている。
「ふむ、おもしろいな、食べるという発想はなかった。さすがはシオンだ」
トシゾウは食いしんぼうのシオンから飛び出た思わぬ意見にひょうたんから駒が出た思いだった。
宝を食べる…。宝を食べる、か。
【邪神の卵】が卵だとするのなら、たしかに食材として利用するのも一つの形なのか。
全ての宝には、その宝に相応しい輝ける場所がある。
それは額に収まり壁を彩る絵画でも、魔物の攻撃から身を守り砕ける盾でも同じことだ。
それならば、極上の料理となり腹に収まる【邪神の卵】というのもそれは一つの宝の勝ちではないのだろうか。
どう見ても生きているのに【無限工房】に収納できたり、いろいろと謎の多い【邪神の卵】だが…いっそ砕いて食べれば良いのではなかろうか。
産まれぬなら、喰ってしまうぞ、邪神の卵。
記憶は曖昧だが、前世の偉い武将もそれに近いことを言っていた気がする。
「…食ってみるのも一興か」
「えぇ、トシゾウはん本気で言っとるんか?」
「トシゾウ様、さすがにそれはお腹を壊しますわよ?」
「…卵焼きが美味しいと思います」
食欲スイッチが入りかけたシオンであったが、反対票が2票入ったこともあり結局は保留となった。
トクン、トクン
トシゾウは【邪神の卵】の脈動のペースが心なしか不安定なように感じた。
☆
ザザ…
「――閣下、こちらコウエン、応答願います」
「む、コウエンか。どうした」
トシゾウ達が雑談に興じていたとき、突如その場にいないはずのコウエンの緊迫した声が部屋に響く。
トシゾウは迷宮主から渡された通話・転移機能を持つ【迷宮主の紫水晶】を解析し、魔力を動力とする通話用の魔道具を開発し主要なギルドメンバーに配布している。
コウエンがその魔道具を使用して通信をしてきたようだった。
「報告いたします。現在、冒険者ギルド内、トシゾウギャラリー周辺に賊が侵入。賊の練度高く苦戦中の模様。救援を要請され応援に向かっているのですが…。侵入者の中に角を持つ小柄な者が混じっているようです。レベルの測定が不可能であり、おそらくはただの獣人ではありません。万が一に備えシオン殿もしくは閣下に応援を要請します」
「…わかった、すぐに向かおう」
通信を切り、行動を開始する。コウエンが警戒するほどの相手。これは明確に異常事態だ。
「ご主人様」
「うむ、どうやら我がギャラリーに賊が侵入しているらしい。応援に向かうぞ」
「はい」
当然、万が一に備えて戦闘班にものろし程度の魔道具や高位の通信装置をいくつか回しているが、コウエンから上、つまりトシゾウへ救援要請が回ってくるのはトシゾウにとっても少々予想外のことだった。
コウエンと、コウエンが直接率いる戦闘部隊の練度は戦闘班内でも頭一つ抜けている。
その力を結集すれば王城へ侵入して宝物庫から宝を奪うくらいはできるし、一線級の冒険者と共に迷宮を歩けるし、シオンと戦っても数分は持ちこたえることができるほどだ。
十把一絡げの賊程度ではどれだけ束になっても敵わない。
その規模の戦力を擁する組織は限られているし、それだけの戦力で侵入場所する場所がトシゾウギャラリーだというのは疑問がある。
トシゾウギャラリーにはたしかに金目の品も多いが、言い方を換えればそれだけだ。
コウエンが苦戦するような戦力とは、本来なら敵対組織の壊滅か、いっそ革命を狙うような戦力だ。
角を持つ賊、理屈に合わない侵入者…。この感覚、どこかで…。
装備を整え素早くトシゾウの近くへ駆け寄るシオンとコレットを横目に考える。
トシゾウはビッチ、もとい艶淵狐クラリッサとユーカクで再会した時のことをなんとなく思い出す。
同じ敷地内とはいえ、ギルド長室からトシゾウギャラリーまでは少々距離がある。
【転移の紫水晶】で転移の用意を進めつつ、敵の気配を探った。
ギルドの中はトシゾウの能力の範囲内だ。
スキル【蒐集ノ神】を使用すれば一定範囲内にある宝とその価値を測定することができるし、【転移の紫水晶】にも迷宮の領域内に存在する生物の検索をすることができる。
トシゾウは侵入者の一人が知っている相手であることに気付いた。
「そういえばあいつも迷宮から出ていたのだったか。…本当にこの世界は面白い。飽きる暇がないな」
迷宮から出たことは間違いではないと繰り返し教えてくれる。
「…コウエン、おそらく相手はお前より格上だ。だが良い機会だ。後顧の憂いなく全力で挑め」
「承知しました、閣下」
魔道具越しに聞こえる頼もしい返事に満足する。
さぁ、次はどんな出来事が待っているのか。
待つばかりの退屈な日々はすでに遠い過去のものだ。
蒐集のための日々はこれからも続く。
トシゾウが止まらない限りその日々の騒動が収まることはないだろう。
トシゾウの目的は価値ある宝を集めること。そのための過程を楽しむこと。
迷宮から出たのも、最初は迷宮の中で宝を集められるようにすることが目的だった。
最初は外の世界になど興味はなかったのだ。
だがトシゾウはいつしかこの世界そのものに楽しみと価値を見出しつつあった。
トシゾウの変化と世界との関わり。
それが世界にとってとても幸運なことであったと、後に世界は知ることとなる。
もし世界を闇が覆えば、トシゾウは宝が集まらなくなることを懸念し闇を祓うことに忠力するだろう。
迷宮へ潜る冒険者の環境を変えようとしたように、世界を変えようとするだろう。
トシゾウが迷宮を出て一年足らず。
冒険者の力が増し、人間は緩やかに結束しつつある。
一見安定しつつあるように見える世界。
しかし、トシゾウとトシゾウの築いたものの力が必要とされる時代がすぐそこまで来ていた。
「ほんまトシゾウはんといると飽きへんなぁ」
トシゾウはギャラリーで激しく動き回る二つの点を認識しつつ、手を振るベルに見送られ転移を発動した。
ドォォ……ン
転移が発動したのと、目的地の方向から冒険者ギルド全体を揺るがすような爆音が轟いたのはほとんど同時であった。
瞬く間に移り変わっていく世界の中、トシゾウはその音が新たな競争を始める始まりの鐘の音のように感じていた。
――――――
作者より 書き溜め期間を頂きます。ストックは40話分くらいありますが、より良い作品にしたく、完結の目途がついてから再投稿を行いますのでご了承ください。
進捗状況は【小説家になろう】の方で活動報告を行います。
0
お気に入りに追加
508
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(26件)
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です
堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」
申し訳なさそうに眉を下げながら。
でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、
「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」
別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。
獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。
『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』
『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』
――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。
だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。
夫であるジョイを愛しているから。
必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。
アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。
顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。
夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
何回も何回も最初から読み直しての繰り返しで更新常にまってます!
お忙しいかもしれないのですがよろしくお願いします!
返事ありがとうございます。
まだ続くんですね。よかったです。
内政が続くのは仕方ないです。むしろ、長く続けるには、こういった内政=基盤がしっかりとしていないと出来ないと思います。
これからも更新を楽しみにまってます。
あ、これは返事書かなくてもいいよ!
単純な感想ですから(*´∀`)
(`・ω・´)ゞ(=゚ω゚)ノ
そろそろエンディング近いですかね?雰囲気的に。終わっちゃうの?なんかなごりおしい
名残惜しいって言ってもらえるのすごい嬉しい(*'ω'*)
なお書き溜め10万字…まだ続きます!
ひとまず区切りではあるので、しばらくは内政メインになるかもしれませんが、引き続きよろしくお願いしますー。