157 / 172
冒険者ギルド世界を変える
155 トーリ少年はお持ち帰りされる
しおりを挟む
「た、助けてくれてありがとう。それじゃ俺はこれで…」
突然の展開に事態が飲み込めないトーリ少年。
しかし、この機を逃すわけにはいかない。
そそくさとその場から逃げ出そうとし、
「却下だ、です」
「駄目ですわ」
しかし回り込まれてしまった。
勇者からは逃げられないのである。
「放せ、放せよ!見逃してくれ。俺はこんなところで捕まるわけにはいかねーんだよ…!」
首根っこを掴まれたままジタバタと暴れまわるトーリ。
トーリを拘束するローブの女は軽々と彼を押さえつける。
「なんてバカ力だ…!」
自分を拘束しているのは自分とそう背丈の変わらない少女だ。
だがローブのフードから覗く可愛らしい顔つきとは裏腹に、まるで巨大な岩に挟まれているようにその場から一歩も動くことができない。
捕まった。逃げられない。
自分とローブの女たちとの力量差を体感し、逃げることはできないと否応なしに気付かされる。
ここに至り、トーリの顔は一気に青褪めていく。
盗みを犯して捕まった者がどういう末路を辿るのか、それがわからないほど子供ではない。
鞭打ち、強制労働、あるいは…。
いや、自分が辛い思いをするだけではない。
「今捕まったら、母さんが…」
トーリが犯罪へ走った原因は家庭にあった。
たとえどのようなリスクをとってでも守りたい大切な存在のことを頭に浮かべ、少年は必死の抵抗を続けた。
だがトーリの運命は、その予想とはまったく別の方向に転がることとなる。
彼を捕まえた二人は無条件に兵士に突き出すことはしなかったのだ。
白い獣人の綺麗な紫の双眸が少年を見据える。
トーリは自分の目を覗き込んでくる視線から目を離すことができない。
単純に頭を押さえつけられているからという理由もあるが、それ以上に体が鉛のように動かないのだ。
蛇に睨まれた蛙、と言うのも少し違う。
まるで神に自分の全てを見透かされていくような、そんな得体の知れない感覚に体が抗うことを諦めているようだった。
「この子、なんとなく悪い子じゃない気がします。兵士さんに渡すのは止めましょう」
「そう?どう見ても普通の悪ガキですわ。たしかにただ兵士に突き出すのも後味が悪いですけれど…、まぁシオンがそう言うのなら」
シオンの勘は勘の域を超えている。
勘とは、これまでの経験から発生する無意識の判断だ。
多くの人に出会い、時に虐げられ、それでも【超感覚】の助けも借りて生きてきたシオンの勘は、その年齢に見合わない、一種の特殊能力の域に達している。
コレットは、親友の人を見る目が飛び抜けて優秀であることを認めている。
兵士には引き渡さない。
シオンの判断は正しいものではないかもしれないが、さりとてコレットにそれを否定する気はなかった。
兵士に引き渡した場合、むち打ち程度で済めば良いほうだ。
人一人の命など軽いものだ。ましてや身寄りのないコソ泥の末路は悲惨である。
犯罪者に温情を与え、ゆっくり更生を促すほど余裕のある世界ではない。
別に兵士が悪いわけではなく、社会を維持するためにはやむを得ないことであるとも言える。
しかしどれだけ厳しい罰則があろうと、生きていくための盗みがなくなることはない。
為政者として、元拾い屋として、二人はその辺りの事情をよく理解している。
「ではまずは盗んだものを持ち主に返して謝るところからですわね」
「うん」
少年は必死に騒いで暴れるが、努力もむなしくズルズルと引きずられていった。
「ちぇ、…すいませんでしたぁー」
ゴチンッ
「いってぇー!くそ、謝ってるじゃねぇかよ!」
ゴチンッ
「うぐぐ、す、すいませんでした…」
「…おうクソガキ。勇者様のお顔に免じて許してやるよ。もう同じことしないようにしっかり躾てもらうんだな」
コレットと店主からゲンコツをもらい、涙目の少年。
シオンとコレットは、商品を盗まれた店主に事情を説明し、兵士へ引き渡すのを止めてもらうように頼んだ。
商品を盗まれた恨みは大きいのだろう、トーリを兵士に突き出さないことに難色を示していた店主であったが、二人が捕まえていなければ逃げられていたことは事実であり、さらに盗まれたすべての品を代わりに購入したことにより納得してくれた。
「しかし、勇者様なら勇者様と最初に教えてくれれば良いのによ」
二人の正体に気付いて恐縮する店主。
「ごめんなさい。しかしそれでは筋が通りませんわ。お願いする以上、まずは誠意をお見せしたかったのです」
初めから身分を明かせば話は早かったが、身分に任せて事態を解決するのは二人にとって本意ではなかったため、最初は勇者であることは伏せて店主に説明していた。
「さすが勇者様だ。このガキが盗んだのは高い品でな、危うく店を潰すかどうかというところだったんだ。兵士の代わりにキツイ折檻を頼むぜ」
「えぇ、甘い処置はしませんわ。お任せください」
「何が勇者だ!そんなの知ったことかよ!」
ゴチンッ
「いってぇー!」
店主同様、二人の正体を知った時のトーリの驚きは相当なものであったが、さりとてそれで態度を変える少年ではなかった。
いくら勇者であろうと、それがなんだというのか。
生きるための稼ぎを駄目にされ、危うく兵士に突き出されるところだったのだ。
勇者なんて何もせずに自分たちを見下す貴族と同じだ。
ふつふつと湧き上がる怒りを堪えられるほどトーリは大人ではなかった。
「ふんっ、ギゼンシャめ!言っとくけど俺はまた同じことをするぜ」
怒りに任せて吠える。
半分は負け惜しみだが、もう半分は決まりきっていることをただ宣言しているだけだ。
幼く、碌に仕事もないトーリにとって、盗みは生きるための術である。
誰が何と言おうとも、自分の守りたいものを守る方法が盗みしかないのなら、トーリは同じことを繰り返すだろう。
自分の置かれている境遇への、やり場のない怒り。
少年とて盗みが悪いことだということは知っている。
盗まれた側にも生活があることも知っている。
衣食足りて礼節を知る。
それでも、盗まなければ生きていけないから盗むのだ。
今を反省した素振りでやり過ごすこともできる。
賢しらな少年はそのことに気付いていないわけではない。
しかしそれを良しとせずに吠えるのが、いや吠えずにはいられないのがトーリに残された矜持であり、幼さだった。
自分は悪いことをしている。しかし、好きで落ちぶれたわけではない。
配られた手札が悪かった。
それでも必死に生きようとしているだけなのに、なぜこのような目に遭わなければならないのか。
それも、勇者という、“持っている”人間によって自分は罰されている。
それを素直に受け入れられるはずがないのだ。
少年の精いっぱいの虚勢は、情けない己を肯定し奮い立たせるために必要な事であり、何が何でもこの世界を生き抜いてやるという決意の表明。
一見無謀で愚かな行為にも見えるが、少年は熱くなっていても頭が回る。
勇者が自分へ無体なことはしないだろうという幼い打算があることも事実ではあるが。
「…さて、ひとまずこれで店の方は問題なしですわ。あとはこの子をどうするかですわね。…どうして盗みをしたのですか?」
「お前には関係ねーよブス!」
「ぶっ、ブス…?」
「ブス、ギゼンシャ、おせっかい勇者!」
「……」
やむを得ない事情から盗みを働く者は一定数存在する。
事情があっても犯罪は犯罪。
それを肯定する気はないが、ここで会ったのも何かの縁である。
可能ならば少年の抱える困難の解決を手助けしようと考えたコレットであったが…。
いつまでも反省するフリすらしない少年の態度に、少しお灸をすえることにした。
決してブスと言われたことに腹を立てたわけではない。決して。
コレットは大人なのである。
「コレット、ごにょごにょ…」
空気を読んだシオンが、怒れる相方に素晴らしい提案をする。
「それは名案ですわ。女の子を怒らせたらどうなるかを教えてあげましょう」
「な、なんだよ。殴るのか!?お前ら勇者だろ?それに俺は殴られたくらいで…!」
「乙女はそんな野蛮なことはしませんわ。ただ、少しお話を聞かせてもらうだけですわ」
コレットはニッコリとほほ笑んだ。
後悔先に立たず。
トーリはその言葉の意味を知ることになる。
たしかに新たな勇者は前の勇者のように残酷ではない。
それどころか慈悲の心と責任感に溢れている。
少年の悩みを全て聞き出し、可能なら解決するべく二人の勇者は行動を開始した。
突然の展開に事態が飲み込めないトーリ少年。
しかし、この機を逃すわけにはいかない。
そそくさとその場から逃げ出そうとし、
「却下だ、です」
「駄目ですわ」
しかし回り込まれてしまった。
勇者からは逃げられないのである。
「放せ、放せよ!見逃してくれ。俺はこんなところで捕まるわけにはいかねーんだよ…!」
首根っこを掴まれたままジタバタと暴れまわるトーリ。
トーリを拘束するローブの女は軽々と彼を押さえつける。
「なんてバカ力だ…!」
自分を拘束しているのは自分とそう背丈の変わらない少女だ。
だがローブのフードから覗く可愛らしい顔つきとは裏腹に、まるで巨大な岩に挟まれているようにその場から一歩も動くことができない。
捕まった。逃げられない。
自分とローブの女たちとの力量差を体感し、逃げることはできないと否応なしに気付かされる。
ここに至り、トーリの顔は一気に青褪めていく。
盗みを犯して捕まった者がどういう末路を辿るのか、それがわからないほど子供ではない。
鞭打ち、強制労働、あるいは…。
いや、自分が辛い思いをするだけではない。
「今捕まったら、母さんが…」
トーリが犯罪へ走った原因は家庭にあった。
たとえどのようなリスクをとってでも守りたい大切な存在のことを頭に浮かべ、少年は必死の抵抗を続けた。
だがトーリの運命は、その予想とはまったく別の方向に転がることとなる。
彼を捕まえた二人は無条件に兵士に突き出すことはしなかったのだ。
白い獣人の綺麗な紫の双眸が少年を見据える。
トーリは自分の目を覗き込んでくる視線から目を離すことができない。
単純に頭を押さえつけられているからという理由もあるが、それ以上に体が鉛のように動かないのだ。
蛇に睨まれた蛙、と言うのも少し違う。
まるで神に自分の全てを見透かされていくような、そんな得体の知れない感覚に体が抗うことを諦めているようだった。
「この子、なんとなく悪い子じゃない気がします。兵士さんに渡すのは止めましょう」
「そう?どう見ても普通の悪ガキですわ。たしかにただ兵士に突き出すのも後味が悪いですけれど…、まぁシオンがそう言うのなら」
シオンの勘は勘の域を超えている。
勘とは、これまでの経験から発生する無意識の判断だ。
多くの人に出会い、時に虐げられ、それでも【超感覚】の助けも借りて生きてきたシオンの勘は、その年齢に見合わない、一種の特殊能力の域に達している。
コレットは、親友の人を見る目が飛び抜けて優秀であることを認めている。
兵士には引き渡さない。
シオンの判断は正しいものではないかもしれないが、さりとてコレットにそれを否定する気はなかった。
兵士に引き渡した場合、むち打ち程度で済めば良いほうだ。
人一人の命など軽いものだ。ましてや身寄りのないコソ泥の末路は悲惨である。
犯罪者に温情を与え、ゆっくり更生を促すほど余裕のある世界ではない。
別に兵士が悪いわけではなく、社会を維持するためにはやむを得ないことであるとも言える。
しかしどれだけ厳しい罰則があろうと、生きていくための盗みがなくなることはない。
為政者として、元拾い屋として、二人はその辺りの事情をよく理解している。
「ではまずは盗んだものを持ち主に返して謝るところからですわね」
「うん」
少年は必死に騒いで暴れるが、努力もむなしくズルズルと引きずられていった。
「ちぇ、…すいませんでしたぁー」
ゴチンッ
「いってぇー!くそ、謝ってるじゃねぇかよ!」
ゴチンッ
「うぐぐ、す、すいませんでした…」
「…おうクソガキ。勇者様のお顔に免じて許してやるよ。もう同じことしないようにしっかり躾てもらうんだな」
コレットと店主からゲンコツをもらい、涙目の少年。
シオンとコレットは、商品を盗まれた店主に事情を説明し、兵士へ引き渡すのを止めてもらうように頼んだ。
商品を盗まれた恨みは大きいのだろう、トーリを兵士に突き出さないことに難色を示していた店主であったが、二人が捕まえていなければ逃げられていたことは事実であり、さらに盗まれたすべての品を代わりに購入したことにより納得してくれた。
「しかし、勇者様なら勇者様と最初に教えてくれれば良いのによ」
二人の正体に気付いて恐縮する店主。
「ごめんなさい。しかしそれでは筋が通りませんわ。お願いする以上、まずは誠意をお見せしたかったのです」
初めから身分を明かせば話は早かったが、身分に任せて事態を解決するのは二人にとって本意ではなかったため、最初は勇者であることは伏せて店主に説明していた。
「さすが勇者様だ。このガキが盗んだのは高い品でな、危うく店を潰すかどうかというところだったんだ。兵士の代わりにキツイ折檻を頼むぜ」
「えぇ、甘い処置はしませんわ。お任せください」
「何が勇者だ!そんなの知ったことかよ!」
ゴチンッ
「いってぇー!」
店主同様、二人の正体を知った時のトーリの驚きは相当なものであったが、さりとてそれで態度を変える少年ではなかった。
いくら勇者であろうと、それがなんだというのか。
生きるための稼ぎを駄目にされ、危うく兵士に突き出されるところだったのだ。
勇者なんて何もせずに自分たちを見下す貴族と同じだ。
ふつふつと湧き上がる怒りを堪えられるほどトーリは大人ではなかった。
「ふんっ、ギゼンシャめ!言っとくけど俺はまた同じことをするぜ」
怒りに任せて吠える。
半分は負け惜しみだが、もう半分は決まりきっていることをただ宣言しているだけだ。
幼く、碌に仕事もないトーリにとって、盗みは生きるための術である。
誰が何と言おうとも、自分の守りたいものを守る方法が盗みしかないのなら、トーリは同じことを繰り返すだろう。
自分の置かれている境遇への、やり場のない怒り。
少年とて盗みが悪いことだということは知っている。
盗まれた側にも生活があることも知っている。
衣食足りて礼節を知る。
それでも、盗まなければ生きていけないから盗むのだ。
今を反省した素振りでやり過ごすこともできる。
賢しらな少年はそのことに気付いていないわけではない。
しかしそれを良しとせずに吠えるのが、いや吠えずにはいられないのがトーリに残された矜持であり、幼さだった。
自分は悪いことをしている。しかし、好きで落ちぶれたわけではない。
配られた手札が悪かった。
それでも必死に生きようとしているだけなのに、なぜこのような目に遭わなければならないのか。
それも、勇者という、“持っている”人間によって自分は罰されている。
それを素直に受け入れられるはずがないのだ。
少年の精いっぱいの虚勢は、情けない己を肯定し奮い立たせるために必要な事であり、何が何でもこの世界を生き抜いてやるという決意の表明。
一見無謀で愚かな行為にも見えるが、少年は熱くなっていても頭が回る。
勇者が自分へ無体なことはしないだろうという幼い打算があることも事実ではあるが。
「…さて、ひとまずこれで店の方は問題なしですわ。あとはこの子をどうするかですわね。…どうして盗みをしたのですか?」
「お前には関係ねーよブス!」
「ぶっ、ブス…?」
「ブス、ギゼンシャ、おせっかい勇者!」
「……」
やむを得ない事情から盗みを働く者は一定数存在する。
事情があっても犯罪は犯罪。
それを肯定する気はないが、ここで会ったのも何かの縁である。
可能ならば少年の抱える困難の解決を手助けしようと考えたコレットであったが…。
いつまでも反省するフリすらしない少年の態度に、少しお灸をすえることにした。
決してブスと言われたことに腹を立てたわけではない。決して。
コレットは大人なのである。
「コレット、ごにょごにょ…」
空気を読んだシオンが、怒れる相方に素晴らしい提案をする。
「それは名案ですわ。女の子を怒らせたらどうなるかを教えてあげましょう」
「な、なんだよ。殴るのか!?お前ら勇者だろ?それに俺は殴られたくらいで…!」
「乙女はそんな野蛮なことはしませんわ。ただ、少しお話を聞かせてもらうだけですわ」
コレットはニッコリとほほ笑んだ。
後悔先に立たず。
トーリはその言葉の意味を知ることになる。
たしかに新たな勇者は前の勇者のように残酷ではない。
それどころか慈悲の心と責任感に溢れている。
少年の悩みを全て聞き出し、可能なら解決するべく二人の勇者は行動を開始した。
0
お気に入りに追加
508
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です
堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」
申し訳なさそうに眉を下げながら。
でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、
「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」
別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。
獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。
『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』
『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』
――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。
だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。
夫であるジョイを愛しているから。
必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。
アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。
顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。
夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる