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宝箱は冒険者ギルドを立ち上げる

39 宝箱は変革を決意する

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 人族至上主義者は言う。
 自分たちは世界の中心たる迷宮に選ばれた存在だ。荒野にいる蛮族や、迷宮を持たない他種族とは違うと。

 彼らは近年力を付け、人族の領域に住む他種族の数は減り続けているらしい。

 他者よりも優れている。神から選ばれている。
 そういう考えは理解できないわけではない。賛同はできないが。

 人族はたしかに優秀だ。
 創意工夫に富み、攻撃に優れる火魔法を扱える。
 身体能力は並みだが、好奇心が強く探求心に満ちた優秀な種族だ。

 だが他種族にも同様に長所がある。

 魔法を扱えないが、非常に高い身体能力を誇る獣人。
 高い知性を持ち、風属性をはじめとした魔法の運用に優れるエルフ。
 土属性の魔法を扱い、優れた加工技術を持つドワーフ。
 海人については詳しくないが、水を含む迷宮特殊区画で圧倒的な力を持つという。

 トシゾウの目的は価値ある宝を蒐集すること。
 そのためには人間を迷宮の奥まで潜らせ、産出した素材を手に入れさせる必要がある。

 それは人族単体の力で為せることではない。

 かつて迷宮最深層へ冒険者が訪れていたころは、人族以外にも多くの種族の冒険者たちがいたものだ。

 各種族が力を合わせ、レベルと装備の質を高めていくようにする必要があるだろう。

 人族を含む全種族が、力を合わせて迷宮へもぐれるようにする。
 どうすればそれが実現できるか。

 …人族至上主義者とかいうのを皆殺しにするか?

 いや、人族至上主義とまではいかなくとも、人族を優位だと考えている者は多い。きりがないだろう。殺しすぎて人族の力がこれ以上下がるのは問題だ。

 …他種族の力を高めるか?

 人族の力を削ぐよりは建設的で現実的だ。
 他種族を迷宮で強化し、ラ・メイズ内に強固な勢力として独立させるか。
 数は少なくとも、人族単体よりもはるかに高い実績を上げることができるだろう。
 そこからなし崩し的に他種族の権力を浸透させていけば…。

 戦争が起こるか。
 たとえ戦争が起こったところで、人族の兵士の練度は知れている。

 いざとなれば力づくで他種族の力を認めさせることもできるだろう。
 しかしそれでは禍根が残り、長続きはしない。全種族が協力しなければ、迷宮最深層へ至ることはできまい。

 しかし気長に活動を続ければ、人族の意識を変えていくことはできるかもしれない。
 そこで少数の人族至上主義者が障害になるようなら、そいつらは刈り取ってしまえば良い。

 うーむ。その辺りが妥当だろうか。ひとまず方針はそれでいこう。

 ならばまず人族ではない種族の協力者が大量に必要だな。いればいるだけ良い。
 次に拠点が必要だな。いざという時でも持ちこたえられる、大きく頑丈な拠点が欲しい。

 人族の抵抗に対しては、ダストンら人族の上層部のコネを利用して、…そういえばコレットも貴族だったな。だがあちらはまだ落ち着くまで時間がかかるだろう。

 …差し当たり今日からやることは決まったな。とにかく人間、次に拠点だ。

 俺はシオンのおかげで、人間を所有できるということを知った。

 俺は昨日から奴隷を買おうと考えていた。
 昨日までは人族でも良かったのだが、こうなると他種族の奴隷を優先的に購入したほうが良いな。
 まずは所有する人間を増やし、役に立つ宝として鍛えていくか。

 素晴らしい宝を蒐集するため、地道な種まきから始めようではないか。

「シオン、俺の所有物として、いろいろと働いてもらうぞ」

「はい!」

「まずは拾い屋をすべて拉致してこい」

「はい!…はい?」

 理解できない命令に目を白黒させるシオン。いかん、まだ説明していなかったな。

 どんな命令でも、その意図を明確に理解させることは重要だ。
 命令した側は思わぬ失敗のリスクが減り、された側も自信を持って命令を遂行することができるようになる。

 俺は説明を始めようと口を開きかけて、

 キュルルル。

 自分とシオンから同時に出た腹の音に我に返る。

「とりあえず飯にするか」

「はいご主人様」

 目的のために熱中すると我を忘れるのは俺の悪い癖だ。まずは腹ごしらえをするとしよう。
 俺とシオンは腹を鳴らしながら食堂に向かうのだった。
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