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30 カイトside

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 頼む……何処だ?何処にいるんだ?


 俺は見逃すことのないように1人1人の顔をじっくりと確認して彼女を探した。

 ようやく掴んだ手がかりを、7年ぶりに見た彼女の姿を、そして自分の子を絶対に手放したりしない。



 7年だ…7年も探し続けたんだ。諦めるものか。




 何度も船のタラップの場所から埠頭への入り口まで何度も往復した。見落とすことのないように集中して人の顔を見た。そう、何度も何度もだ。

 だが、そろそろ出発時刻になるのにエレミアの姿が見えない。


 見逃した?

 いや、ジェイクがいるから乗り込むときに止めるはずだ。



 乗船名簿が違う?

 いや長距離船は厳格だからそれもない。



 まだ来ていないのか?

 どこにいる?

 どこだ?




 焦りが最高潮まで達した時にジェイクと目が合った。そして彼が指さした先に茶色の髪が視界に入った。その瞬間に走り出しその彼女に手を伸ばし名を呼んだ。


「ミア!」

 
 そして振り向いた彼女の、あの藍色の瞳に自分が映ったのを見て彼女を抱きしめた。


「ミア……ようやく見つけた」

「カ…イ……?」

「ミア……なぜ黙って行ったんだ。ずっと探していたんだぞ」

「……どうしてここにいるの?王都じゃ…」

「話せば長いが……だが、これのおかげでお前にたどり着いた」


 カイトはポケットからハンカチを取り出した。7年前にエレミアから渡されて、捨てていいと言っていた彼女にとって黒歴史のあのハンカチだ。


「うそ……そんなのまだ持ってたの?」

「当たり前だろう?お前が残していったのはこれと、あの手紙だけだからな」

「お母さん。この人だあれ?」


 足元から聞こえたその声にようやく我に返った。
 レイモンドは初めて見る自分とそっくりな俺に視線を向けその瞳を輝かせていた。


「レイモンド……この人は……」


 エレミアは俺の顔を見て何か言いたげな視線を送っていることに気が付き、彼女に「言ってくれ」と願いを込めて呟いた。一瞬驚いたような顔をしたが、ゆっくりと頷いた彼女にそっと寄り添うように横に立った。


「この人は、レイの……お父さんよ」




「お父さん?本当に僕のお父さんなの?」


 俺ははレイモンドと視線を合わせるように跪いて、そして抱きしめた。


「ああ……今まで会いに来られなくて、悪かった」

「本当?嘘じゃないの?」

「ああ、嘘じゃない。ごめんな。今まで会いに来られなくて……ミアも苦労を掛けたな…」


 レイモンドを抱き上げエミリアと一緒に二人をきつく抱きしめて、もう離さないと何度も言い続けた。
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