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 第四王女の結婚式を明日に控え、この日、王都から王女様がアンスリーの領主様の屋敷へと到着した。
 それに先立って、王都から警備の騎士団も大勢アンスリー入りし、周辺の警備等に余念がないようで、無事に式が行われるだろうと領民は胸をなでおろしている。


 ロアーナ王女様は17歳で、お相手の領主様のフォーセット侯爵家のランス様は21歳。お似合いの二人だともっぱらの噂だった。
 当日の予定は、正午に教会で式を挙げてから屋敷までお披露目を兼ねたパレードを行い、その後領主館で披露宴が行われるとのことだ。


 私はアンスリーに立ち入らない事を誓っていたが、流石に婚礼パレードの人出で隊長さんに会う確立など無いに等しいだろうと考えて、友人たちと見に行く計画を立てていた。

 レイモンドはセッテさんが見てくれると申し出てくれたので、安心して出掛けられる。たまには友人と出掛けておいでというセッテさんの言葉がうれしく、お土産をたくさん買っていこうと心に決めた。


 ご成婚パレードが行われる通りには早くからたくさんの人が集まっており、芋の子を洗うような状態になっていた。
 でも私はとある筋の伝手で、その道沿いにある店の二階から道路を見下ろしている。実は、マルグリットさんが、アニバーサリーカードの納品の時に、「見に来るなら店の二階から見ていいわよ」と言われていたので、その言葉に甘えたのだ。
 流石にマルグリットさんのお店は一等地だけあってパレードもしっかりと見える。マルグリットさまさまです。



「そうそう、今回のパレードの警備に、王都から騎士団の副団長も来てるらしいわよ。なんでも王女様が兄のように慕っているほど信頼が厚いってきいたわ」

「知ってる。その副団長って王太子様の友人なんだって」

「みんな、良く知ってるね。私、初めて聞いたわ」

「エミリアはレイモンドしか興味ないもんね」


 そんな話をしているうちに、パレードの先頭が見え始めた。護衛の騎士たちが馬に乗り豪華な馬車を先導しているのだが、まだ馬車が見える様子はない。


「あっ、見えてきたわよ」


 視界の端にようやく馬車が見えた。白くて花が飾られているように見える。

 そして、馬車が近付いてきて、ようやくロアーナ王女様が見え、隣でほほ笑み返すランス様の姿も見える。二人とも幸せそうで見ているだけでも幸せのお裾分けをもらっている様だ。
 このお二方のアニバーサリーカードを手がけたことが嘘のようで、二人の姿を見ても実感がなかなか湧かない。


「ねえ、あの騎士の人、レイモンドに似てない?」

「えっ、どこ?」


 友人の思わぬ言葉に驚き、必死に探す。
 まあ、世の中似ている人は多いもの。髪の色だけでもそう思うかもしれないしね。なんて思って視界に入った黒い髪の騎士に目を向けると、それは間違うはずもない、あのカイの姿だった。


『カイ……』
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