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今住んでいるキャズウェル州は、グランルー王国第三の州でもあり、その州都でもあるマンデビルは国内でも最大級の貿易量を誇るアーレイ港を抱える港町だ。
私とレイモンドが住んでいるのはそのアーレイとカレパス湾を挟んだ向かいにあるドーフィン漁港横のエデン地区だ。
このマンデビルは、東西に40キロ南北に60キロもある大きなカレパス湾を中心に町が発展し、湾の西側は貿易港を抱えるマンデビル中心部で、東側が一般居住区域のエデン地区とドーフィン漁港が並び、マンデビル中心部から北側には貴族街のアンスリー地区が広がっている。
この貴族街に領主の住む屋敷もあるらしい。
そして湾の数キロ沖合に浮かぶ周囲7キロほどのコデン島は、手つかずの自然が残っているらしく、現在は一部の場所のみ人の立ち入りが許可されている。制限されるほど珍しい植物や動物が存在しているという話だが、行ったことがないのでどうなのかは知らない。
そしてこの島が沖合にあることで、嵐で海が荒れても湾内に影響が出ることは少ないらしいことも、ここが貿易港として栄えた理由の一つだという話だ。
そして貿易港に近い中心部は貴族街も隣接しているためか物価も高く、人の出入りも他民族も多くて治安も正直言って安全とはいいがたい。
だが、この町の活気のある雰囲気が気に入り、この町に入り偶然たどり着いたこの漁港に近いエデン区画が私の理想の、そしてこの先の新生活を始めるのにも最適だと思ってここに定住先に決定した。
エデン地区の周辺にある高い建物は見張り台と時計塔くらいで、漁港も少し離れているから朝の喧騒は聞こえてこないし、商店街もあり週末には市も出るし何より物価が安い。
治安に関しては騎士団の駐在もあるが、どうしても貿易港付近の警備に人が割かれるため、他の地域では騎士団よりも地元の若者を中心に構成された自衛団のほうが頼りにされていたりもする。そうなると、エデン地区は自衛団の規模が大きいので、マンデビルの中では一番安全な地域かもしれない。
それに運が良かったのかこの町にたどり着いた時期が丁度引っ越し時期で空き家の数も一年を通して一番多い時らしく、それもあってか家賃も格安で一軒家を借りられた。まあ、そこの大家のセッテおばさんが私の身の上話を聞いて同情してくれたことも大きいかもしれないけど。
「何時でも頼っていいからね。ほんと、男なんてろくでもないねぇ」
そう言って背中をバシバシ叩かれ、大笑いされた。なんでも、大家さんは浮気をした旦那さんを追い出して一財産を築き上げたらしい。それが今ではいくつもの貸家を持つまでになったとか。凄いとしか言えない。
「エレミアだったかい?私の家はすぐそこだから、困ったことがあったらいつでも顔を出すんだよ」
そう言って、今度は頭を撫でられた。もうそんな年齢ではないのだが、自分のおばあちゃんのような人に頭を撫でられると、子供に戻ったような気持になって涙が出そうになった。
そして即決したのだが、それに対して後悔はない。
大通りに出れば、貿易港そばの地域までの馬車も頻繁に運行されているし、欲しいものが売り切れていても次の日には手に入る位、物流面では不便が全くと言ってない。生まれ育った子爵領のほうがド田舎すぎでここの生活が快適すぎる。
その後、セッテさんは、私の刺繍の腕前が上級者だと知り、マルグリットさんの店を紹介してくれたり町の案内を買って出てくれて、美味しい店や安い店を教えてくれたりしてくれる本当のおばあちゃんのような存在になった。
家を借りてしばらくしてから私の体調不良にいち早く気が付き、医者へと無理やり連れて行かれ子供ができていることが分かった時には、相手の男に対して(カイのことよね)何をしているんだと怒り狂っていたので、実は……と詳細を話すと、呆れられた。
まあ、同意の元という事もありセッテさんも「エレミアが納得してるならいいさ。そいつの代わりに私が面倒見てやるよ」と、家族宣言をしてくれたのだ。
そして生まれたレイモンドのことをひ孫のように可愛がってくれるので、その姿を見ては家族っていいなと心がほんわかと温かくなるのを感じたものだ。
そして、もしここにカイがいたら…なんて考えたこともあった。
まあ、叶うことのない夢だから、想像に留めておいた。セッテさんもカイを見つけられないだろうと理解しているのか、それからは彼の事を口にすることはなかったな。
私とレイモンドが住んでいるのはそのアーレイとカレパス湾を挟んだ向かいにあるドーフィン漁港横のエデン地区だ。
このマンデビルは、東西に40キロ南北に60キロもある大きなカレパス湾を中心に町が発展し、湾の西側は貿易港を抱えるマンデビル中心部で、東側が一般居住区域のエデン地区とドーフィン漁港が並び、マンデビル中心部から北側には貴族街のアンスリー地区が広がっている。
この貴族街に領主の住む屋敷もあるらしい。
そして湾の数キロ沖合に浮かぶ周囲7キロほどのコデン島は、手つかずの自然が残っているらしく、現在は一部の場所のみ人の立ち入りが許可されている。制限されるほど珍しい植物や動物が存在しているという話だが、行ったことがないのでどうなのかは知らない。
そしてこの島が沖合にあることで、嵐で海が荒れても湾内に影響が出ることは少ないらしいことも、ここが貿易港として栄えた理由の一つだという話だ。
そして貿易港に近い中心部は貴族街も隣接しているためか物価も高く、人の出入りも他民族も多くて治安も正直言って安全とはいいがたい。
だが、この町の活気のある雰囲気が気に入り、この町に入り偶然たどり着いたこの漁港に近いエデン区画が私の理想の、そしてこの先の新生活を始めるのにも最適だと思ってここに定住先に決定した。
エデン地区の周辺にある高い建物は見張り台と時計塔くらいで、漁港も少し離れているから朝の喧騒は聞こえてこないし、商店街もあり週末には市も出るし何より物価が安い。
治安に関しては騎士団の駐在もあるが、どうしても貿易港付近の警備に人が割かれるため、他の地域では騎士団よりも地元の若者を中心に構成された自衛団のほうが頼りにされていたりもする。そうなると、エデン地区は自衛団の規模が大きいので、マンデビルの中では一番安全な地域かもしれない。
それに運が良かったのかこの町にたどり着いた時期が丁度引っ越し時期で空き家の数も一年を通して一番多い時らしく、それもあってか家賃も格安で一軒家を借りられた。まあ、そこの大家のセッテおばさんが私の身の上話を聞いて同情してくれたことも大きいかもしれないけど。
「何時でも頼っていいからね。ほんと、男なんてろくでもないねぇ」
そう言って背中をバシバシ叩かれ、大笑いされた。なんでも、大家さんは浮気をした旦那さんを追い出して一財産を築き上げたらしい。それが今ではいくつもの貸家を持つまでになったとか。凄いとしか言えない。
「エレミアだったかい?私の家はすぐそこだから、困ったことがあったらいつでも顔を出すんだよ」
そう言って、今度は頭を撫でられた。もうそんな年齢ではないのだが、自分のおばあちゃんのような人に頭を撫でられると、子供に戻ったような気持になって涙が出そうになった。
そして即決したのだが、それに対して後悔はない。
大通りに出れば、貿易港そばの地域までの馬車も頻繁に運行されているし、欲しいものが売り切れていても次の日には手に入る位、物流面では不便が全くと言ってない。生まれ育った子爵領のほうがド田舎すぎでここの生活が快適すぎる。
その後、セッテさんは、私の刺繍の腕前が上級者だと知り、マルグリットさんの店を紹介してくれたり町の案内を買って出てくれて、美味しい店や安い店を教えてくれたりしてくれる本当のおばあちゃんのような存在になった。
家を借りてしばらくしてから私の体調不良にいち早く気が付き、医者へと無理やり連れて行かれ子供ができていることが分かった時には、相手の男に対して(カイのことよね)何をしているんだと怒り狂っていたので、実は……と詳細を話すと、呆れられた。
まあ、同意の元という事もありセッテさんも「エレミアが納得してるならいいさ。そいつの代わりに私が面倒見てやるよ」と、家族宣言をしてくれたのだ。
そして生まれたレイモンドのことをひ孫のように可愛がってくれるので、その姿を見ては家族っていいなと心がほんわかと温かくなるのを感じたものだ。
そして、もしここにカイがいたら…なんて考えたこともあった。
まあ、叶うことのない夢だから、想像に留めておいた。セッテさんもカイを見つけられないだろうと理解しているのか、それからは彼の事を口にすることはなかったな。
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