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窓から差し込む光で目が覚めた私は、視界に眠るカイの姿を捉え一瞬時間が止まった。
(ああ、そうだ。昨日、カイと知り合って呑んで、送ってもらって、それで……)
どうみても事後を物語る周囲の状況と自身の身体の痛みを感じながら、カイを起こさないようにベッドからそっと出て、さっとシャワーを浴びて着替えた。
(朝の馬車で王都を出る計画だったし、カイを起こさずこのまま出発しよう。別れの寂しさを味わいたくないし、何より恥ずかしい)
そして持っていた紙に彼へ伝えたいことを書いてサイドテーブルに置き、部屋を後にした。
宿の人は昨日、帰ってきた時にカイと一緒なところを見ていたらしく、「帰るまで声はかけないでおくよ」と言ってくれて、申し訳なくて恥ずかしかったけどお礼を言って宿を出た。
地方へ行く馬車のターミナルへと向かい、そこで、候補地へ行く馬車の停留所へ行くと流石に朝一の出発の馬車はすべて同じ時間の出発だった。
そこでどれに乗ろうか考えて、旅の途中に何かあると怖いので一番強そうな御者のいる馬車を選んだ。
まあ、途中で乗り換えもあるだろうから、それが最適かどうかは愚問かもしれないけど。
私の他にも女性が独りで乗る人もちらほらいるようで、道中は楽しくなりそうだなと思いながら馬車に乗り、新しい生活を開始する街へと旅立った。
「ごめんねカイ……、ありがとう」
その頃、目が覚めたカイは、リアの姿が見えないので辺りを見回していた。
サイドテーブルに彼女の書いた手紙を見つけ、慌てて部屋を出た。
*********************************
カイへ
王都での最後の夜に貴方に出会えたことは
私にとって転機だったわ
黙って出発することを許してね。
沢山話が出来てよかった。ありがとう。
リアより
*********************************
カイは宿の主人からリアが1時間ほど前に宿を出ていったことを聞いて、すぐに馬車のターミナルに向かったが、そこにはもう次の馬車を待つ人たちの姿がちらほら見えるだけでリアの姿はなかった。
「リア……どうして黙って行くんだ……」
カイはリアの手紙を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。
(ああ、そうだ。昨日、カイと知り合って呑んで、送ってもらって、それで……)
どうみても事後を物語る周囲の状況と自身の身体の痛みを感じながら、カイを起こさないようにベッドからそっと出て、さっとシャワーを浴びて着替えた。
(朝の馬車で王都を出る計画だったし、カイを起こさずこのまま出発しよう。別れの寂しさを味わいたくないし、何より恥ずかしい)
そして持っていた紙に彼へ伝えたいことを書いてサイドテーブルに置き、部屋を後にした。
宿の人は昨日、帰ってきた時にカイと一緒なところを見ていたらしく、「帰るまで声はかけないでおくよ」と言ってくれて、申し訳なくて恥ずかしかったけどお礼を言って宿を出た。
地方へ行く馬車のターミナルへと向かい、そこで、候補地へ行く馬車の停留所へ行くと流石に朝一の出発の馬車はすべて同じ時間の出発だった。
そこでどれに乗ろうか考えて、旅の途中に何かあると怖いので一番強そうな御者のいる馬車を選んだ。
まあ、途中で乗り換えもあるだろうから、それが最適かどうかは愚問かもしれないけど。
私の他にも女性が独りで乗る人もちらほらいるようで、道中は楽しくなりそうだなと思いながら馬車に乗り、新しい生活を開始する街へと旅立った。
「ごめんねカイ……、ありがとう」
その頃、目が覚めたカイは、リアの姿が見えないので辺りを見回していた。
サイドテーブルに彼女の書いた手紙を見つけ、慌てて部屋を出た。
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カイへ
王都での最後の夜に貴方に出会えたことは
私にとって転機だったわ
黙って出発することを許してね。
沢山話が出来てよかった。ありがとう。
リアより
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カイは宿の主人からリアが1時間ほど前に宿を出ていったことを聞いて、すぐに馬車のターミナルに向かったが、そこにはもう次の馬車を待つ人たちの姿がちらほら見えるだけでリアの姿はなかった。
「リア……どうして黙って行くんだ……」
カイはリアの手紙を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。
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