56 / 63
55
しおりを挟む
そして国王は侍従にちらりと視線を向けると、その侍従はサッと謁見の場を出ていく。
「黎明の羅針盤の皆には、今回の働き、感謝する」
「いえ、元より、私どもの自由を保障してくださった陛下の御身に関することであれば、いつ何時でも参上仕ります。ラリーもいる事ですし、いつでも気軽にお呼びいただければ」
「そうか?では、そうするとしようかのう」
ランドルフは国王にそんなことを言いながらラリーの顔を見ていた。
兄弟なのだから、もっと親密な時間を過ごしてもいいと思っていてそう言ったのだが、ラリーは少々めんどくさそうな顔をしている。
そんな話をしていると、国王への知らせと共に謁見室の扉が開き、ジークフリートが中へ入ってきた。
「父上。お呼びでしょうか?」
そう言ったものの、謁見の間に並び立つそうそうたるメンバーに、一瞬だが身体をこわばらせた。
ジークフリート個人は、アウローラコンパスのメンバーと面識はないが、今まで教えてもらった容姿や、彼らから感じる気のようなものが、普通の冒険者ではないということを感じ取っていた。
「陛下。コレですか?ラリーの枷は?」
ランドルフも面白そうに思っているのだろう。国の王太子を捕まえてそれをコレ呼ばわりしているのだから、不敬もいいところだが、国王は笑いながら「そうだ」と答えている。
「ランディ。言い過ぎだろう?まぁ、あながち間違いではないがな」
ローレンスもまた少し棘のある言い方をしながらジークフリートに視線を向ける。
「叔父上…まさか、ここを離れるおつもりですか?」
「離れるもの何も、俺のいるべき場所はここではない。帰るべき家に帰るだけだ」
「なぜです!このまま残っていただく判断はされないのですか!」
「なぜ私が残らねばならない。兄上も健在で不穏分子は捕らえた。お前ももういい年齢だろう。私などいない方が国にとってもいいことだと、なぜわからない」
まるで駄々っ子のように御託を並べるジークフリートに、ランディもレイもセオも呆れたような目で見ているのだが、ジークフリートはローレンスだけに執着しているような、そうな風に感じていた。
「ラリー、帰るぞ」
「ああ、リサ。いいか?」
リサはそのまま転移の陣を展開して子供たちのいる部屋へと向かい、すぐにアルとアナを連れて戻ってきた。荷物は先に家へと運んでおり、ローランスの屋敷の人達にも挨拶済みだった。だが、また来ると約束は忘れずにしておいた。子供達のことを気にしていたこともあり、成長を見せる為にも定期的に顔を出すことにしたのだ。
謁見室に連れてこられた二人は父親の姿を確認すると、その足に抱き着き、それからようやくランディ達がいることに気が付いて、今までにない笑顔で名前を呼んでいる。
ジークフリートは彼らが家族としてそこに存在していることを感じ取り、身体の力が一気に抜けるような脱力感に襲われ、そのまま立ち尽くしていた。
そしてその隙に……
「では、兄上。私はこれで」
「陛下。さようならぁ」
アウローラコンパスのメンバーはリサの展開した転移の魔法陣で、一瞬にしてその場から姿を消した。
「黎明の羅針盤の皆には、今回の働き、感謝する」
「いえ、元より、私どもの自由を保障してくださった陛下の御身に関することであれば、いつ何時でも参上仕ります。ラリーもいる事ですし、いつでも気軽にお呼びいただければ」
「そうか?では、そうするとしようかのう」
ランドルフは国王にそんなことを言いながらラリーの顔を見ていた。
兄弟なのだから、もっと親密な時間を過ごしてもいいと思っていてそう言ったのだが、ラリーは少々めんどくさそうな顔をしている。
そんな話をしていると、国王への知らせと共に謁見室の扉が開き、ジークフリートが中へ入ってきた。
「父上。お呼びでしょうか?」
そう言ったものの、謁見の間に並び立つそうそうたるメンバーに、一瞬だが身体をこわばらせた。
ジークフリート個人は、アウローラコンパスのメンバーと面識はないが、今まで教えてもらった容姿や、彼らから感じる気のようなものが、普通の冒険者ではないということを感じ取っていた。
「陛下。コレですか?ラリーの枷は?」
ランドルフも面白そうに思っているのだろう。国の王太子を捕まえてそれをコレ呼ばわりしているのだから、不敬もいいところだが、国王は笑いながら「そうだ」と答えている。
「ランディ。言い過ぎだろう?まぁ、あながち間違いではないがな」
ローレンスもまた少し棘のある言い方をしながらジークフリートに視線を向ける。
「叔父上…まさか、ここを離れるおつもりですか?」
「離れるもの何も、俺のいるべき場所はここではない。帰るべき家に帰るだけだ」
「なぜです!このまま残っていただく判断はされないのですか!」
「なぜ私が残らねばならない。兄上も健在で不穏分子は捕らえた。お前ももういい年齢だろう。私などいない方が国にとってもいいことだと、なぜわからない」
まるで駄々っ子のように御託を並べるジークフリートに、ランディもレイもセオも呆れたような目で見ているのだが、ジークフリートはローレンスだけに執着しているような、そうな風に感じていた。
「ラリー、帰るぞ」
「ああ、リサ。いいか?」
リサはそのまま転移の陣を展開して子供たちのいる部屋へと向かい、すぐにアルとアナを連れて戻ってきた。荷物は先に家へと運んでおり、ローランスの屋敷の人達にも挨拶済みだった。だが、また来ると約束は忘れずにしておいた。子供達のことを気にしていたこともあり、成長を見せる為にも定期的に顔を出すことにしたのだ。
謁見室に連れてこられた二人は父親の姿を確認すると、その足に抱き着き、それからようやくランディ達がいることに気が付いて、今までにない笑顔で名前を呼んでいる。
ジークフリートは彼らが家族としてそこに存在していることを感じ取り、身体の力が一気に抜けるような脱力感に襲われ、そのまま立ち尽くしていた。
そしてその隙に……
「では、兄上。私はこれで」
「陛下。さようならぁ」
アウローラコンパスのメンバーはリサの展開した転移の魔法陣で、一瞬にしてその場から姿を消した。
149
お気に入りに追加
397
あなたにおすすめの小説

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる