【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします

稲垣桜

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「森に置いてくる……か。それもいいかもしれないのう」


「お……お待ちください!陛下!!」


 真っ青な顔をしてライト公爵が声を張り上げた。助かりたい一心なのだろうが、この場で声を上げるなど不敬もいいところだ。
 ライト公爵の声を聞き、エレオード伯爵もようやく声を発せられるようになったようだが、その一言目を口から出る前にランドルフの槍が目の前の床に突き刺さる。


「煩いんだよ、お前ら。俺達に目を付けられた段階で終わりなんだよ」

「俺達……?」


 ライト公爵もエレオード伯爵も年齢が若いからか彼らとの面識はなかった。黎明の羅針盤自体、あまり人前に出るようなことはなかったのだから、顔も知られてはいないのも、この場でのことの説明になる。
 だが、並びたてられた騎士の一人が、目の前に突き刺さる槍に見覚えがあったのか、青白い顔がさらに白くなり、突然叫び始めた。


「うわぁぁぁ、俺は、俺は、死にたくない!!無理やり手伝わされただけなんだぁぁ」

「煩い!」


 ランドルフはその男を睨みつけると、その男は急に黙り震えが止まらずにその場に蹲ったが、ランドルフの威圧に耐え切れなかったようで、気を失い倒れ込んだ。そしてその横の騎士の男もまたその槍を見て、ポツリと一言だけ口にした。


「日雷の槍……」

「ほう…お前はこれを知っているのか」

「ひっ…」


 その騎士はランドルフに睨まれ、そのまま固まった。蛇に睨まれた蛙状態だがそれは納得だろう。相手はSSランクなのだから、普通の騎士程度が敵う訳もない。
 威圧されたは、その場に揃っている冒険者が国王の信頼も厚い黎明の羅針盤アウローラコンパスなのだと知って項垂れた。
 彼らに対しては嘘は通用しない。彼らのいう事は国王が言うソレと同等の重みがあるのだから。


「覚悟がきまったようだな」


 国王はセオドアから受け取った紙に書かれた詳細に目を通し、彼らが何を考えてどう行動を起こしたのか。そして暗殺計画に対する処罰を下した。

 他国との友好関係を築き上げる外務大臣と国王の政策に反対し、攻め入る事を推進している一派の頭でもあるライト公爵は、戦争になることで手に入れる利益に目がくらみ、王弟のいない時を狙って計画を進めていたようだ。
 だが、目の前にいる王弟と伝説級のパーティを目の前にし、自分の命運を悟ったようだ。

 
「お前たち、罪状については黎明の羅針盤アウローラコンパスからの報告に間違いはないだろう?刑は追って下すことにしよう。まず斬首だろうなぁ。なに…森が良ければ、森でも良いぞ」

「私が置いてきましょう。デルガの森なら彼らも大いに楽しめると思いますが」


 ランドルフはそう国王に告げた。
 彼からすると、戦争を招こうとしている彼らの存在は、許されるものではなかったからそう言ったのだ。
 デルガの森は、隣国との国境に広がる広大な森で、奥に行けば行くほど高ランクの魔物の住処が広がっている。
 冒険者の間ではランク上げによく利用されている森だが、森の入り口付近ならいざ知らず、ここで言っているは森の入り口ではなく、彼らが出向くことの多いずっと奥だ。


「そうだな。出てこられれば好きに生きるがよい。出られなかったら、それまでという事だな。ランドルフ殿、申し訳ないのだが、三日ほど日を頂けないか?その間に、こちら側の仕事を終わらせておくのでな。後から来てくれるとありがたい」

「仰せのままに」


 そしては側に控えていた近衛に引きずられるように連れていかれた。





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