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「明日、話が終わったらすぐに出られるようにしてくれるか?」

「ふふっ。ようやく?もっと早くに限界が来ると思ってたわ」


 二人を寝かしつけて、ローレンスはリサと二人でゆっくりと話し始めた。
 ローレンスは早々に帰るつもりではいたが、思いの外、この懐かしい場所に絆されたのか、ついつい長居をしてしまった自覚はあった。
 子供達も初めて来た王都に興味津々な様子もあっただろうからと、すこし甘く考えていたようだ。


「兄も元気になったから、いつでも帰れたんだがな」

「懐かしかったのよね?それに、可愛い甥を放っておけなかった…そうでしょ?」


 図星を付かれたのか、ローレンスも言葉に詰まった。リサと離れる原因を作ったジークフリートの事は未だに許すことはできないが、数日だが、子供たちと過ごしている姿や、周囲からのジークフリートの努力や後悔を耳にするにつれ、もう少しもう少しと帰る日が伸びていったのだ。


「アルとアナに悪いことしたな…」

「大丈夫よ。今日も帰ってきた時はいつも通りだったもの。ただね…アナが買ってもらった絵本を読んで、あんなふうになっちゃったの」

「絵本?」


 リサはその絵本の話を始めた。それは冒険物で、その話のモデルになったのは黎明の羅針盤アウローラコンパスのメンバーだったから、二人とも急に戻りたいと思ったのだろうという事だった。


「でもね。あの子たちも王都の様な町より、あの家の方が楽しそうなのは事実なのよね」

「そうだな。また来たい時は、屋敷も残っているから遊びに来ればいい」

「そうよ。さすがにここでの滞在で、あなたの事も知られてしまったみたいだし」


 ローレンスは渋い顔をしながら、リサを見た。
 王弟が王都に戻ったことがいつの間にか知れ渡り、それが王都の市民たちの間にも広がっていたのだ。だから、簡単に帰ってさようならなどと簡単に済ますことはできない程、収拾が付かないところまできていた。
 だからこそリサはその噂を利用し、周囲を安心させるとともに子供たちが飽きるまではここに居させようと考えていた。


「今日ね、セオから連絡が来て、明日お土産を持ってくるって」

「土産?」

「そう。お土産黒幕。それを渡して、帰りましょうか」

「そうだな。その土産があれば、もう安心だ」


 そして王宮での最後の夜、二人はゆっくりと眠りについた。



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