42 / 63
41 ラリー side
しおりを挟む
「はい、どなた?」と中から声が聞こえ扉が開いた。
その開いた扉の向こうにいたのは、俺の目の前に現れたのは、ずっと探し続けてきたリサだった。
「リサ……リサ、ようやく会えた」
絞り出すように言って彼女を抱きしめた。
驚いた顔をして「ラ…リー?どうして?」と問いかけるリサがもう逃げてかないように、しっかりと抱きしめ、その腕に力を込めた。
リサにジークが言ったことを謝った。
辛い思いをさせたことを。
それなのにリサは「どうしてあなたが謝るの?」と俺の頬に手を当てながら優しく微笑んだ。
俺が「ジークにはちゃんと制裁を加えておいた」と言えば、「酷いことをしていないのか」と「気にしてないのに」と。
酷いことかと言われるとどうかは知らない。
俺はただ殴っただけだ。
あいつのせいでリサが居なくなったのだから。
そう話すとリサは笑っていた。
暫くするとランドルフ殿がやってきて「来たのか?早かったな」と。
あなたのおかげで辿り着けたのだとお礼を言った。
彼は俺のことを認めてくれたのだろうか。そんなことを想いながらリサの手を取った。
すると次に部屋に入ってきたのは、俺と同じ黒髪に赤い瞳を持った小さな子供だった。
「おかあしゃん。ある、おなかすいたの」
そう言ってリサの足に抱きついた。
その子はたどたどしく自分の名前をアレックスだと教えてくれた。
そしてリサがそっと抱き上げて俺の前で「あなたの子よ」と告げたのだ。
王家の血筋にのみ現れる黒髪と赤い瞳。間違うことなく俺の子だ。
「アレックスというのか……」
俺の視界は涙でうるみ、その声は震えた。そしてリサとアレックスの顔を見比べながら、言葉を繋げないでいた。
「おじしゃん。ないてるの?」と心配そうに頭を撫でてくるアレックスに「大丈夫だよ。ありがとう」と言って二人を一緒に抱きしめた。
どうしてもっと早くリサを見つけられなかったのだろうか。
その後悔があふれた。
だが、今までの分はこの先挽回するしかないのだろう。
俺はリサとアレックスの為に生きていこうと決意した。
◇ ◇ ◇
それから俺はリサと一緒に、この家で暮らし始めた。
失ってしまった長い年月を埋めるために、片時もそばを離れなかった。
宰相にはもう帰らないと一言だけ綴った手紙を送り、それから一切の接触を断った。
国の事は俺には関係がない。俺が大切なのはリサとアレックスなのだから。
その開いた扉の向こうにいたのは、俺の目の前に現れたのは、ずっと探し続けてきたリサだった。
「リサ……リサ、ようやく会えた」
絞り出すように言って彼女を抱きしめた。
驚いた顔をして「ラ…リー?どうして?」と問いかけるリサがもう逃げてかないように、しっかりと抱きしめ、その腕に力を込めた。
リサにジークが言ったことを謝った。
辛い思いをさせたことを。
それなのにリサは「どうしてあなたが謝るの?」と俺の頬に手を当てながら優しく微笑んだ。
俺が「ジークにはちゃんと制裁を加えておいた」と言えば、「酷いことをしていないのか」と「気にしてないのに」と。
酷いことかと言われるとどうかは知らない。
俺はただ殴っただけだ。
あいつのせいでリサが居なくなったのだから。
そう話すとリサは笑っていた。
暫くするとランドルフ殿がやってきて「来たのか?早かったな」と。
あなたのおかげで辿り着けたのだとお礼を言った。
彼は俺のことを認めてくれたのだろうか。そんなことを想いながらリサの手を取った。
すると次に部屋に入ってきたのは、俺と同じ黒髪に赤い瞳を持った小さな子供だった。
「おかあしゃん。ある、おなかすいたの」
そう言ってリサの足に抱きついた。
その子はたどたどしく自分の名前をアレックスだと教えてくれた。
そしてリサがそっと抱き上げて俺の前で「あなたの子よ」と告げたのだ。
王家の血筋にのみ現れる黒髪と赤い瞳。間違うことなく俺の子だ。
「アレックスというのか……」
俺の視界は涙でうるみ、その声は震えた。そしてリサとアレックスの顔を見比べながら、言葉を繋げないでいた。
「おじしゃん。ないてるの?」と心配そうに頭を撫でてくるアレックスに「大丈夫だよ。ありがとう」と言って二人を一緒に抱きしめた。
どうしてもっと早くリサを見つけられなかったのだろうか。
その後悔があふれた。
だが、今までの分はこの先挽回するしかないのだろう。
俺はリサとアレックスの為に生きていこうと決意した。
◇ ◇ ◇
それから俺はリサと一緒に、この家で暮らし始めた。
失ってしまった長い年月を埋めるために、片時もそばを離れなかった。
宰相にはもう帰らないと一言だけ綴った手紙を送り、それから一切の接触を断った。
国の事は俺には関係がない。俺が大切なのはリサとアレックスなのだから。
178
お気に入りに追加
397
あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。
ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で、そっと呟いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる