【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします

稲垣桜

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20 ラリー side

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 リサと行動を共にするようになってもう二か月にもなる。

 その間に彼女の意外な一面を知ったり、彼女の実力が想像以上だと感じ、正義感にあふれる彼女のあの笑顔を見る度に惹かれていく自分に気が付いた。


 パレス州で奴隷オークションの会場へ潜入する時も、朝起きると彼女がいなくて焦った。前日には普通に話をしていたのに、何かあったのだろうか。

 だが、奴隷売買に関してはリサも壊滅させることに協力すると話していたのだから、自らどこかへ去るようなことはない。
 潜入している人間にも確認をしたが、何も変化はなかったと報告があった。


 しかし、一つだけ気になったのは、奴隷の何名かが処分されるということで運び出されたとか。
 今回はいつもとは違うルートで出ていったらしく、騎士団もその後を追うことはできなかったらしい。


 リサならそれは可能だったかもしれない。



 そう考えると、リサが彼らを追って郊外へと出た可能性は捨てきれなかった。居てもたってもいられず、出ていったであろう方向の門へと向かった。

 しばらくその辺りを探したが見当たらずリサの行方の手がかりを失ったものの、もう一度と門へ向かうと彼女が歩いてくるのが見えた。


 無事でよかった……



 ただそれだけの気持ちが心の中を占めた。
 彼女がかなりの実力者なのは今までの付き合いでもわかっている。だけど、一人にしたくないのだ。

 何があっても自分が対処できるようにしたい。いや、ただ、俺が彼女と、リサと一緒にいたいのだ。


 そうだ。俺はリサを手放したくない。



 自分の気持ちに気が付くと、それはそれで困ったことになった。

 リサはラリー・ブレイクという俺しか知らない。本当の俺の姿も何も知らないのに、どう打ち明けよう。
 とりあえず契約はガレーヌに戻るまでだと言って、遠回りをして帰るように手を打った。

 モントーネの温泉に行くといった彼女に、帰るまでが契約なのだからと夫婦の振りをつづけた。

 自分の自己満足にすぎないが、少しでも長く彼女の顔を見ていたい。彼女の気持ちを知りたい。そう欲張ってしまったのだ。


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