【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします

稲垣桜

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 温泉の湯気が立ち込める道を歩きながら、ラリーとリサは目的の場所へと向かっていた。

 この温泉街には宿泊案内所が存在し、個人個人に合った宿を案内してくれる。
 他の町の案内所は金額や料理の有無くらいだが、ここでは温泉の性質や広さ、個室への温泉完備など多岐にわたる項目から選ぶことが出来る。

 ここに来る間にどんな宿がいいかをリサから聞いていて、彼女は広い露天風呂と食事は外せず、ラリーも食事と個室に温泉がある部屋があることが物珍しかったので、それらをすり合わせ一つの宿に決めた。もちろん、ラリーが勝手に決めたのだが。

 そしてその宿に到着し、案内された部屋を見て驚いた。


「わぁ~広い」


 リサの第一声はそれだった。部屋が3つあり、しっかりと手入れされた庭には露天風呂まで完備されていた。
 流石に一泊の宿泊料が高いだけあるのか、部屋の周囲には防音と遮蔽の魔道具が使われているようで人の視線などは全く気にならないように、完全にプライベートが守られているようだ。さすが、高級宿だと納得するほどだ。


「ねえ、ラリー。こんな良い宿、高かったでしょ?いいの?」

「気にするな。俺も泊まりたかったし、リサへの感謝の気持ちだ」


 その言葉に甘えて、リサは早速、宿の売りでもある露天風呂へと向かった。部屋のお風呂も捨てがたいが、流石に一人じゃないからと遠慮する。

 宿の露天風呂は広い庭をじっくりと見ながら入れるように考えられていて、ついつい長湯をしてしまいそうになる。今日だけでなく明日も泊まることになっていると思うとリサは思わず顔がほころぶ。


 そしてこの宿は、様々な柄から気に入ったものを選べる館内着に人気があるらしく、簡単に脱ぎ着できるよう袖付きラップタイプで腰はリボンで結ぶタイプだった。その楽さが気に入られているようで、この町では定番の館内着になっていた。


 リサもこの館内着を気に入り、大柄な花をモチーフにしたものを選んだ。

 ラリーも大浴場に行ってきたようで、同じような館内着を着て部屋でくつろいでいる。


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