やり直ししてますが何か?私は殺される運命を回避するため出来ることはなんでもします!邪魔しないでください!

稲垣桜

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第九章

200 ため池決壊対策

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 テオドールの担当は、国内の貯水池の決壊と洪水の発生の阻止ということだが、それがなかなかに難しい問題だった。

 目の前に王国の地図を広げ、土地の高低差や水量、そして川の流れや天候など、色々な要素を調べ出して書き出し、資料として渡された(クラウディアが書き込んだ)地図を見ながら照らし合わせる。

 今、王国内にある貯水池は100以上あるが大型に絞ると18か所で、今年はどこも7~8割の貯水率で推移しているらしい。そのどれもが決壊するような感じはないが、実際に見に行く方が確実だ。その他にも洪水の可能性のある場所も確認したい。そう頭の中で情報を整理していた。


「ここは、降った大量の雨が一気に流れ込むと、川の水量が多くなるだろう。隣の州の川幅が狭く曲がったここでは堤防は大丈夫か?」

「ここは確かに大雨の時は危険水位に達していることが記録されているが…」

「では、幅の拡幅を進めた方がいいか?」


 その地域の降水量や貯水池の様子を調べてみるが、ここ数十年もの間、被害のないことが伺い知れる。


「ここも見てくるか…」




 各地を見回っていく間に、その地方に伝わる話を耳に挟んだ。
 はるか昔、この地方は雨が降らなかったのに、一晩で川が増水し川が氾濫したと伝えられているという内容だった。それを記録するように石碑が置かれているとのことだが、その石碑は古く、刻み込まれていた文字は劣化し見えなくなっていた。


「村長、その洪水はいつの話かわかるのか?」

「わしの、爺さんの爺さんのその前くらいかのう?大体150年は経っておるかもしれん」

「そんなに前の事か?」

「その間は一度も洪水は起きてはおらんが、もし今起きれば、王都への物流は、半分以上は止まる可能性はあるのう」


 テオドール達は調査のために宿泊している部屋へ戻り、地図を広げて聞いたことを確認し始めた。


「さっきの村はここだろう?この川の上流は…ここだな。この地域は、雨の降る量は多いのか?」


 手元にある数多くの書類を片っ端から確認しながら、必要な事は書き込んでいった。


「その辺りはここ数年、雨が少ないようです。川幅が広い分、下流の渇水にはなっていないようですが、この状態が続き干ばつになると雨の状態にも寄りますが、鉄砲水の可能性も排除できないかと」

「テオドール殿、この資料としてもらった地図の書き込みは素晴らしいですな。降水量の予想量や、地形、高低差なども考慮されて、このまま治水工事の基盤にもなりそうなほど詳細に調べられています。どなたが書かれたのですか?」

「それはあくまで資料として渡されたものなのだ。誰の手によるものかは聞いてはいない」

「そうですか…一度会って話をしたいものですね…」

「今度聞いておこう。それと地質と気象に詳しい人間を現地に派遣する手配もだな」





 そんな時、カディネ州のトラン近郊にある貯水池付近で最近、怪しい行動をしている集団がいるとの報告を受け、テオドール達は急遽、現地へと入った。
 潜入捜査をすることになったのだが、テオドールの黒髪は目立ちすぎる為、ネイサンが代わりにその役目をすることとなった。
 彼は宰相直轄の組織の一員でもあり、こういう潜入行動は得意分野だった。今回もいつものようにその集団に近付いっていったが、慣れているようで、すぐにその集団にもぐりこんだ。
 そして必要な情報を手に入れることができたようで、口の軽い人間には感謝だと後から話していた。


「それは事実か?」

「時期は収穫の時期に合わせるようだが、まあ、彼らは下っ端で確実な日程は知らないらしい。しかし、話から収穫祭が行われる前1カ月以内とみて間違いないだろう」

「それならまだ3カ月あるな…では、私は一度、王都へ戻る。そのまま見張っててくれ」


 彼が手に入れた情報は、トランにある最大の貯水池の一角を人為的に決壊させ、特産の薬草や収穫間近の作物を冠水させ、大規模な被害を与えることが狙いなのだという計画だった。
 そんなことをして何の得があるのだろうかと思うのだが、今はその理由よりも阻止の方が大事であり、捕らえてから理由を問い質せばいいと考えた。

 テオドールはすぐに王都へと出発し、その後の手はずを整えるために。



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