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第八章

169 療養

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 暑い夏が過ぎ、クロスローズの領地の木々が赤く山々を染め、そろそろ雪が舞い落ちる頃に、通常の生活に戻るクラウディアの姿があった。
 

 彼女が領地へ着いてから、お見舞いの花がたくさん送られてきており、リオネルからも何度となく手紙と花が送られてきていた。

 クラウディアはベイリーから、リオネルの身体はすっかりと回復しており、もう学園へ通い始めているとも聞いていた。



 リオネルからの手紙には、いつもクラウディアへの感謝と共に、彼女への愛情が溢れ、毎回『早く会いたい』と書かれていた。
 そしめいつも一緒に送ってきている花のことも絡めた一文も書いてあり、そんな気の利いた一言にクラウディアの心は温かくなっていた。

  
 ―――リオネル様はお優しいのね。

 
 リオネルの回復度合いから、回復魔法が効いたのだろうと理解はしていた。だが、そのことを確認するわけにもいかず、自分の行った回復魔法に関しては推測の域を出なかった。

 だが、それによって自分に移した毒の解毒と浄化にここまで手こずっていたことが、クラウディアにとっては想定外で、何が間違っていたのかを時間があれば、常に考察していた。
 

 いつもの部屋にこもり、中央の机の上を片付け、その開けた場所に毒と各魔力の関係性や、闇が及ぼす影響について色々な本を引っ張り出した。
 
 セグリーヴ侯爵家にも行き、みんなから『後先考えずに行動しない事!』と怒られ、何故かベッドに押し込められたのは未だに不思議でならなかった。

 『今日のクラウディアの定位置はここだからな』とそのベッドの横にカイラードが座り、時々クインが顔を出しにくる。もちろん侯爵夫妻も同様だった。

 クラウディアは言い返しても論破されるだけだと考え、素直にそのままベッドに横になって、その状態で話すことを決めた。
 話すのなら文句は言わないだろう。だって、ちゃんと横になってるのだから。そう屁理屈ではないけれど、勝手に結論付けてカイラードとクインにしつこく話しかけたのだ。


「クラウはゆっくり休むという言葉を知らないのか?」

「知ってます!もうクロスローズの家でたっぷり休みましたわ」

「そうかもしないが、今日は休むんだ!転移陣を使って、体に負担がかかっているだろう」


 クインにそう言われたクラウディアは、渋々だが、引き下がった。
 確かに久しぶりの転移陣は、少しだが疲れを感じていたのだ。体力が全回復していないという証拠なのだろう。そう考えて、クラウディアは大人しくすることにして、その代わりと言うことで、明日はたくさん話しをすることを二人に約束させた。




 翌日にはすっかりと体調も戻り、起きてすぐにセグリーヴにもある自分の部屋(勉強部屋)へと向って、こちらに置きっぱなしになっていた本を漁るように読み始めた。
 今回の件に関係するような事柄が何処かに書いていないかと、端から順に目を通した。

 その気持ちのまま本を読み漁っていたらカイラードに見つかり、大目玉を食らった。


「無理をするなと言ってるだろ!またベッドに押し込めてやるぞ!」

「カイラードお兄様、ごめんなさい!もうしませんから、それだけは…」


 その後ろからクインも顔を出して、二人のやりとりを見て笑いながら「食事だよ」と声をかけた。



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