やり直ししてますが何か?私は殺される運命を回避するため出来ることはなんでもします!邪魔しないでください!

稲垣桜

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第八章

149 敵の心内

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 イアン・フォン・コレール子爵は、今、ロウファッジ伯爵の嫡子のフレデリックと木立の中から野営地を眺めていた。
 イアンは今回の討伐のリストに、自身の息子のマルクスとロイドは選ばれなかった事が気に入らず苛立っていた。王太子も参加する討伐隊に参加できるのと出来ないのとでは、この先の未来が大いに変わるからだ。
 だが、このままアーモア侯爵の思い描く未来が来るのであれば、その考えも意味のないことだ。


 イアンが連れてきたフレデリックは、父親のやっていたことは知っていた。その父親が逃げてしまってから、残された妻と子は何も知らないと押し通すしかなかった。
 リオネルさえいなければこんな思いをすることもなく、今もこの討伐メンバーに選ばれていたかもしれない。

 二人はお互いの暗い部分を共有しているようで、野営の方向へ憎しみのこもった視線を向けていた。



 二人はこの地にある工作をするために、先発隊が来るより前に来ていたのだ。

 アーモア侯爵から受け取ったモノをこの森に仕掛けるためなのだが、それも終わり、経過報告を兼ね、その者たちの末路を見届けたくてここへとどまっているのだ。


 フレデリックはアーモア侯爵から受け取った黒い石を森の各地に忍ばせてきた。そして、肝心のものは指定された場所へと設置済みだ。



 もう楽しみでならない。



 早く彼らの苦痛にゆがむ顔を見たいものだ。




 そう、早く……



 フレデリックはアーモアに踊らされているとは思いもしていないだろう。

 父親を助けるという甘言に乗せられてはいるが、あのロウファッジの息子だけありその考え方は偏っている。
 自分は上位に立つべき人間なのだという意識が強く、特に自身も火の一族なのにもかかわらず、デフュール公爵家との差を気に入らないと常々思っているような人間だった。

 何世代も前に分家となった一族なのだから、本家に対し文句を言う立場ではないのだ。

 その髪や瞳の色、そしてその魔力の多さなどが公爵家である証拠でもあるのだから。


 そんなことに考えが及ばない時点で、何もかもが足りないと判断されてもおかしくはないのだが、フレデリックはそういう事は考えたことも無ければ、ただ、自分の気持ちのみを優先していた。

 だからこそ、アーモア侯爵に付け入られたのだ。






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