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第八章

148 野外演習開始

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「みんな、集まったな。幸い、あれから魔物の目撃報告は上がってはいない。そのため、現地に行って判断するが、少し奥まで行くことになるかもしれない。心配することもないだろうと上の判断だ。では出発する。なお、今回は王太子殿下が参加されることもあり、特別に転移陣の使用が認められた」


 その一言で、過酷になるであろう道中の日程がなくなったことを喜ぶ声が上がった。
 普通であれば、王都から馬車に乗ってカトゥリエの森まで行くか、近くの町まで転移陣を使い、そこから馬車に乗るのだが、今回は現地に特別に転移陣を敷設することになったからだ。

 学園の内部へ移動し、転移陣が設置されている部屋へと進む。行く先のカトゥリエの森の入り口に野営地の側に、行く先の転移陣が用意されているとのことだった。


 「では、グループAから順番に出発する」その声で、順にカトゥリエの森への転移を開始した。


 

 野営地に着くと、今回の討伐は王太子を始め国内の有力貴族の子息が参加しているのだからと、先遣隊がテントなどの設置を終わらせていた。
 バックアップは必要なのだろうと思われるが、最低限の準備がしてあるだけで、グループごとに分けられたテントもごく普通の代物だった。

 テントの設営までは特別待遇がなされたが、それ以降は身分の差などなかった。
 王太子であろうと子爵家であろうと一緒の学生なのだから。




 一日目は、まず飲み水の確保から始まり、近くの沢まで順番に汲みに行くという簡単なものだが、この沢までがわざわざ悪路を選んだのかと思うほどの道で、上のもの曰く「訓練の一環」なのだそうだ。

 沢まで何度か往復したところで、食事の準備を担当する班は別れて作業を続けた。そういっても、野営なので簡単なものが多くなるのだが、今回は珍しく料理の質が変わったと話題になっていた。


「今日のメニューはすごいな。担当はだれだ?」


 そこには沢で釣ってきたであろう魚を、香草を使って焼いたものや、きのこをオイルで揚げ焼きにしたもの、野菜の煮込んだスープに、簡単なパンも焼けていた。


「今日はCグループですよ」


 ジェラルドが家へ帰った時、野営の時の料理がおいしくないという話になって、その話に興味を持ったクラウディアが出発までに考えてくれたのだった。
 
 アルトゥールもジェラルドも、クラウディアには心配をかけさせたくなかったので、討伐の詳細は教えず、ただ野営をしながらの訓練だと言ってある。


「いつもは硬いパンとスープだが、今日のパンは柔らかいな。スープも味わいがあって美味い」

「家に戻ったときに料理長にアドバイスをもらったんですよ。さすがに硬いパンばかりは辛いかと思って。でも、もう期待しないでくださいよ。これ以上は無理ですから」


 ジェラルドとリオネルは、クラウディアにアドバイスを受けたことを一言も言わずその場をすりぬけ、早々に食事を終わらせた。

 片付けも終わって、各グループから2名ずつ交代で見張りに立つことになっているのだが、野営地には魔物除けの陣を展開済みだ。
 しかし、見回りも練習が大事だということで、これもまた敬虔だと交代で見回りもしていた。

 そして、残った者達は次の日の予定を組んだり雑談したりしていたのだ。


「ジェリーとリオは同じCなんだな。私がBで、ローがAか」


 レイナルドが班分けに異論があるような口ぶりで話しかけてくる。


「レイ、そう言っても、ほとんど一緒に行動してるじゃないか」


 確かに言われた通りなのだが、なんだか気に入らない。まるで子供のような顔をして文句を言っているレイナルドにリオネルが言った。


「まあいいさ。帰ったらゆっくりと話でもしよう」


 そう言い残し、見回りを交代するために、テントの外へと出て行った。





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