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第八章

145 野外演習の発表

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 ホールデン・フォン・アーテル伯爵は、アルドーレ騎士学校とジュネス学園の総学園長を務めている人物で、もとは侯爵家の出身だ。
 しかし、兄が家督を継いだために妻のアーテル伯爵家に婿入していた。

 だが、本人はその伯爵という地位には満足してはいない。もとは侯爵家なのだから、どうしても卑屈になっているところが否めないのだ。


「アーテル様。王宮より学園生の魔物討伐についての質問状が届いております」


 ―――魔物討伐…最近、国内や国境でからか…


「フィリップ、上位貴族を中心に、実践講習に参加できそうな、剣術と魔力系の成績の優秀な生徒をリストアップして持ってきてくれ」

「わかりました。まとめてからお持ちいたします。それと、アーモア侯爵よりの件で明日にでも伺いたいと連絡が来ておりますが」

「了解したと伝えてくれ」


 机の上に積み上げられた書類を順番に手を取り、一つ一つ目を通しながら、この先に起こるであろう出来事を想像して思わず笑いが出そうになるのを堪えた。



 ◇ ◇ ◇



「国からの討伐に関する質問状ですが、学生の参加には問題がないということで返事を出します。その討伐に向かわせる学生ですが、このメンバーでいかがでしょう。一応、卒業した学生で優秀者を筆頭に4名ほどをつけますが、妥当ではないでしょうか?アーモア侯爵」

「この先、この国を背負うであろうメンバーだな。何人落とせるのか……楽しみだな」

「ロウファッジのところの倅はいるな。コレールを付かせよう。そしてには頑張ってもらわねばな」

「そうですね。必要なものも用意済みですからご心配なく」


 学園長室のなかで、アーモア侯爵とアーテル伯爵の二人の声が静かに響いていた。




 ◇ ◇ ◇



 王都には2つの学園がある。

 1つは、貴族の男子と庶民の有望者が通うアルドーレ騎士学校。そしてもう1つは貴族の子供達と庶民の有力者が通う王立ジュネス学園だ。

 アルドーレ騎士学校は15歳になる男子が入学する学校で、騎士の心得や基本を学び、ジュネス学園はアルドーレ騎士学校を卒業した男子と、16歳になる令嬢たちが魔術や一般教養社交術などを学ぶところだ。

 アルトゥールは春からジュネス学園の3年生となり、ジェラルドとリオネルは1年生になった。
 学園は共に王都にあり、基本的には全員併設の寮から学園に通う事になっている。領地へ帰るのは長期の休みくらいなのだが、アルトゥール達はクラウディアに会うため、転移陣を使用して週末にもたびたび帰っていた。
 その為、クラウディアは領地で兄達の目を気にすることなく魔術陣の研究や新しい知識の吸収に没頭できている。


 だが、今年はいつもと違うことがあった。
 例年にない魔獣の発生により、学生の実力者で実習を兼ねた魔獣討伐実習が行われることとなった。
 そのメンバーと日程が発表されたが、実力が高いものは魔力の多い高位貴族がほとんどで、今回のメンバーも公爵家が中心だった。



* * * * * * * * * * * * *


【グループA】
 〇デフュール公爵家   ニコラス
  ウィルバート公爵家  ローラント
  ヴォルテックス侯爵家 ジョザイア
  エクレール侯爵家   ザカライア
  エリオット子爵家   ブラッド

【グループB】
 〇ラファーガ公爵家  シモン
 〇ウィルバート侯爵家 テオドール
  エストレージャ王家 レイナルド王太子
  クロスローズ公爵家 アルトゥール
  ラファーガ公爵家  ジョスラン

【グループC】
 〇ルシエンテス侯爵家 ルーファス
  クロスローズ公爵家 ジェラルド
  デフュール公爵家  リオネル
  コーネル侯爵家   ヴィル
  パジェット侯爵家  オリオン

  
  日程:約一週間
  場所:カトゥリエの森周辺
 尚、〇の付いているものはリーダーとして任命するものとする。
 詳細は本日、〇時〇〇教室にて。




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