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第八章

134 ニックとテオとサラ

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 ニコラスはテオドールにさっきの話の続きをしなければという義務感というか、自分の彼女への気持ちを偽りたくないという気持ちが強く、きちんと話をしなければと考えていた。

 部屋へ戻ると、ウィルバート兄妹が揃ってお酒のグラスを傾けている姿が目に入った。
 どうもテオドールだけでなく、サラも話を聞く気らしいことがその表情から伺い知れる。

 
「サラ…まさかお前も聞く気か?」

「ダメかしら?可愛い妹の事だもの、聞く権利はあるわよね」

 
 ニコッと微笑んでニコラスの顔を見て、有無を言わさないように席を勧めた。


「はあ…わかった」


 そしてニコラスは溜息をついて順を追って説明し始めた。
 ディアーナを気にかけていたこと、正体に気が付いたこと、気持ちを伝えたことなど、当たり障りのない事柄を話した。
 そして話し終わってからサラにはすべてお見通しだったことが、ニコラスにとっては少なからず衝撃的だった。
 女の直感というのは怖いと思った瞬間だった。
 
 
「なあに?ニックはまだディーと付き合ってなかったの?私はもうそういう関係かと思ってたわ」


 少し酔いが回ってきているのか、サラは考えることなく思ったことを口から出ているようで、少々危なっかしい。だが、そう思われていたという事は、他人から見ると二人の関係はそう見えるのだろうかとニコラスは少しうれしかった。


「サラ…お前、飲み過ぎだぞ」


 テオドールがたしなめるものの、お酒を控えるつもりはないようだ。
 しかし、サラがいることで話が進むことも否めない。それでついつい飲ませすぎた感はあった。とはいえ、瓶の中身はそう減ってはいないのだから、アルコールに弱いのだろう。
 
 
 
 そこにクラウディアが戻ってきたが、よそよそしさを感じるその様子にサラが声をかける。


「ディア、ここにおいで」そう言って、自分の横の席をポンポンと叩く。その酔った笑顔が可愛くて、愛しい感情が湧いてくる。『サラ可愛い』そう言うとサラは抱き着いてきた。


「ねえ、ディア?ニックや兄さんじゃなくて、私の方がいいわよー」


 彼女が何を言って何をしているのかを自分でわかっているのか疑問だった。その最たる行動は、クラウディアの身体を触りまくる事だったのだが…

 
「んー。ディアの腰って細いのよね~。胸も大きいし、柔らか~い。ニックも兄さんも触ってないよね?私のよ」


 そう言いながら彼女の胸を揉んでいるサラは、もう完全な酔っ払いだった。
 クラウディアも恥ずかしくて赤面していたが、その言葉に顔を赤くしたのはテオドールも一緒で、さっきの部屋でのことを思い出し顔に出たのがニコラスに気付かれていた。
 





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