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第八章
128 孤児院へ
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クラウディアは礼拝堂から出て、孤児院にいるシスターの元へ向かっていた。
子供たちは神官の方から勉強を教えてもらっている時間だ。その間にこれからの打ち合わせをしようとシスターと約束をしていた。
「クラウディア様。わざわざ申し訳ありません」
シスターがクラウディアを出迎える時は、いつも慈愛に満ちた優しい笑顔を浮かべている。
対外的なものではなく、彼女にとっては全ての人々に対して、こんな表情を浮かべて接しているのだろう。それほど彼女は素敵なシスターなのだ。
「いえ、今日は教会へ来ていたので、そのままこちらへ寄らせていただいたのです。あれから、どうですか?」
三年前にシスターに提案していた、この孤児院を成長して出なければいけない子供たちのその後のことについての話をするためにきたのだが、今の状況の確認や見直しや要望などを聞くために、シスターを訪ねたのだ。
「ここを出て行った子達が時々訪ねてきてくれるのですよ。見習いとして入った店の方がよくしてくださると。来るたびに手土産まで持ってきてくれるのです。クラウディア様、本当にありがとうございます。今まで、仕事を得られずに、路頭に迷う子や犯罪に手を染めてしまう子も多かったので、私もとても嬉しくて」
「シスターがしっかりと行儀作法を教えていたからこそ、彼らも気負うことなく新しい道へと歩んでいけているのですよ」
「クラウディア様にそう言っていただけるなんて嬉しいですわね」
「シスター、その他の事でお困りのことはないですか?」
「大丈夫ですわ。毎回、公爵様から過分な寄付をいただいておりますし。足りないことと言えばそうですわね…小さな子供たちの相手をする元気な方かしら」
「子供たちの相手ですか?」
「ええ、私では子供の体力にはついていけません。それに他の仕事もあります。大きな子供達も勉強と教会の手伝いもありますから、幼い子供たちと思いっきり外で遊んでいただけるような、その様な方がいらしていただけると助かりますわね」
シスターが言う事にも一理あった。クラウディアでは本を読んだりすることはできても、外で遊ぶには子供達全員の相手をする体力が足りない。幼い子供たちは遊ぶのが仕事なのだから、思い切り動き回る環境は必要なのだ。
―――こういう時は、お兄様のような方が一緒に来ていただけるといいのよね。
そう考えて「ではシスター。私が誰か連れてきますわ」そう返事をして、他にも色々な話をしていうるうちに、あっという間に時間が過ぎた。
そして時間がきたのか、教会から神官長がわざわざクラウディアを迎えに来て、帰りの馬車へと送っていく。
孤児院から教会の裏の馬車が置いてある場所までの長い廊下を進みながら、今度、みんなで訪ねようと考えながらクラウディアは帰途についた。
子供たちは神官の方から勉強を教えてもらっている時間だ。その間にこれからの打ち合わせをしようとシスターと約束をしていた。
「クラウディア様。わざわざ申し訳ありません」
シスターがクラウディアを出迎える時は、いつも慈愛に満ちた優しい笑顔を浮かべている。
対外的なものではなく、彼女にとっては全ての人々に対して、こんな表情を浮かべて接しているのだろう。それほど彼女は素敵なシスターなのだ。
「いえ、今日は教会へ来ていたので、そのままこちらへ寄らせていただいたのです。あれから、どうですか?」
三年前にシスターに提案していた、この孤児院を成長して出なければいけない子供たちのその後のことについての話をするためにきたのだが、今の状況の確認や見直しや要望などを聞くために、シスターを訪ねたのだ。
「ここを出て行った子達が時々訪ねてきてくれるのですよ。見習いとして入った店の方がよくしてくださると。来るたびに手土産まで持ってきてくれるのです。クラウディア様、本当にありがとうございます。今まで、仕事を得られずに、路頭に迷う子や犯罪に手を染めてしまう子も多かったので、私もとても嬉しくて」
「シスターがしっかりと行儀作法を教えていたからこそ、彼らも気負うことなく新しい道へと歩んでいけているのですよ」
「クラウディア様にそう言っていただけるなんて嬉しいですわね」
「シスター、その他の事でお困りのことはないですか?」
「大丈夫ですわ。毎回、公爵様から過分な寄付をいただいておりますし。足りないことと言えばそうですわね…小さな子供たちの相手をする元気な方かしら」
「子供たちの相手ですか?」
「ええ、私では子供の体力にはついていけません。それに他の仕事もあります。大きな子供達も勉強と教会の手伝いもありますから、幼い子供たちと思いっきり外で遊んでいただけるような、その様な方がいらしていただけると助かりますわね」
シスターが言う事にも一理あった。クラウディアでは本を読んだりすることはできても、外で遊ぶには子供達全員の相手をする体力が足りない。幼い子供たちは遊ぶのが仕事なのだから、思い切り動き回る環境は必要なのだ。
―――こういう時は、お兄様のような方が一緒に来ていただけるといいのよね。
そう考えて「ではシスター。私が誰か連れてきますわ」そう返事をして、他にも色々な話をしていうるうちに、あっという間に時間が過ぎた。
そして時間がきたのか、教会から神官長がわざわざクラウディアを迎えに来て、帰りの馬車へと送っていく。
孤児院から教会の裏の馬車が置いてある場所までの長い廊下を進みながら、今度、みんなで訪ねようと考えながらクラウディアは帰途についた。
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