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第八章
114 外交
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先月、エアストン国との国境に近いリコリスで魔獣の被害が多発し、その対応に駆り出されたニコラスは魔獣を退治したことで、エアストン国にも広がっていた被害を防いだとしてエアストン国から招待を受けていた。
そしてジークフリートはエアストン国へと向かうメンバーを選び、ニコラスと共に、リコリスの駐屯騎士団の団長のメドウ伯爵、外務副大臣のフローレス伯爵、それと数名の文官を向かわせた。
エアストン国では、王族を交えての晩餐会が行われ、歓迎の夜会、騎士団との交流、そしてこれから国境における魔獣に対する対応の協議が行われることになり、エアストン国へ入国した面々は、それぞれの役割に徹することになっていた。
昼餐会では国境の駐屯騎士団の団長でもあるメドウ伯爵と、最前線で対応したニコラスに対しての称賛と共に、これからの協力の要請があった。
エアストン国の国王は50近い年齢で、そろそろ代替わりを考えている様で、国境での憂いを無くしたい思惑が透けて見えるが、実際に国境での魔獣はエストレージャ王国にも被害が出ているのだから、どちらの責任という訳でもないのだ。
エアストンの外務副大臣でもあるオラクル公爵も同じ意見を持ち、後日行われる協議でガジュラス団長も含め対策を話し合う事になっていた。
その日の夜に行われた歓迎の夜会では、エアストン国の様々な貴族を紹介され、ニコラスにとっては居心地の悪い場となった。
幸い、レイン騎士団団長のガジュラス公爵や、カイラードの親でもあるセグリーヴ侯爵も参加していたことで、乗り切れたと言っても過言ではなかった。
「甥から聞きましたが、ニコラス殿はこういう場ではダンスをされないとか。周りを見回せば、貴方と懇意になりたいと思っているご令嬢が多くいらっしゃるようですが」
ジルベルトは意地悪をするようにニコラスにそう言った。確かに、周囲を見回せば、外務副大臣のオラクル侯爵の娘のジョルジーヌや、副騎士団長でもあるトランジーヌ伯爵の娘のミラベルなどは、ジルベルトが見る限り、特に熱い視線を送っているようだ。
「お聞きになられたのですか?」
「ええ、ジェイクも耳にしているようですよ」
そう言って、ジェイクもまた笑みを浮かべながら僅かに頷いている。
二人共その事をわかっていてからかいながらも令嬢達の館としてそこに絶ってニコラスの相手をしているのだが、それにニコラスは気が付かなかった。
「ニコラス殿には意中のお相手がいるようですし」
ジルベルトはそう言いなから耳に手をやり、ニコラスの身につけているピアスを示唆して、また優しく微笑んだ。
甥のベイリーからはニコラスとクラウディアの事を知らされ、嬉しいのだが、娘が成長しててを離れるようなそんな気持ちを感じで、ニコラスを少し困らせたかったのだ。
「ニコラス殿、向こうでは彼女とも練習をしているのだろう?どうだ?最近、腕を上げただろう。私とカイラードで鍛えているからな」
その言葉を聞いて、ニコラスは目を見開き、一瞬だが言葉を失っていた。
カイラードと練習はしているのだろうと思ったが、まさかレイン騎士団の団長からも手ほどきを受けているとは思わなかったからだ。
「ガジュラス侯爵は、私の妻の兄なんだよ」
なるほど…とニコラスはカイラードの強さの秘密がわかった気がした。
クロスローズとガジュラスの血を引いているのであれば、才能も計り知れないものだろうと。
これから楽しくなりそうな予感がして、口角が上がる。
「ガジュラス侯爵。いえ、レイン騎士団長。ぜひ、一度お相手願いたいですね」
「ニコラス殿のお相手であれば、喜んでお受けしよう」
そう言って、この先のことを色々と話し合った。
そしてジークフリートはエアストン国へと向かうメンバーを選び、ニコラスと共に、リコリスの駐屯騎士団の団長のメドウ伯爵、外務副大臣のフローレス伯爵、それと数名の文官を向かわせた。
エアストン国では、王族を交えての晩餐会が行われ、歓迎の夜会、騎士団との交流、そしてこれから国境における魔獣に対する対応の協議が行われることになり、エアストン国へ入国した面々は、それぞれの役割に徹することになっていた。
昼餐会では国境の駐屯騎士団の団長でもあるメドウ伯爵と、最前線で対応したニコラスに対しての称賛と共に、これからの協力の要請があった。
エアストン国の国王は50近い年齢で、そろそろ代替わりを考えている様で、国境での憂いを無くしたい思惑が透けて見えるが、実際に国境での魔獣はエストレージャ王国にも被害が出ているのだから、どちらの責任という訳でもないのだ。
エアストンの外務副大臣でもあるオラクル公爵も同じ意見を持ち、後日行われる協議でガジュラス団長も含め対策を話し合う事になっていた。
その日の夜に行われた歓迎の夜会では、エアストン国の様々な貴族を紹介され、ニコラスにとっては居心地の悪い場となった。
幸い、レイン騎士団団長のガジュラス公爵や、カイラードの親でもあるセグリーヴ侯爵も参加していたことで、乗り切れたと言っても過言ではなかった。
「甥から聞きましたが、ニコラス殿はこういう場ではダンスをされないとか。周りを見回せば、貴方と懇意になりたいと思っているご令嬢が多くいらっしゃるようですが」
ジルベルトは意地悪をするようにニコラスにそう言った。確かに、周囲を見回せば、外務副大臣のオラクル侯爵の娘のジョルジーヌや、副騎士団長でもあるトランジーヌ伯爵の娘のミラベルなどは、ジルベルトが見る限り、特に熱い視線を送っているようだ。
「お聞きになられたのですか?」
「ええ、ジェイクも耳にしているようですよ」
そう言って、ジェイクもまた笑みを浮かべながら僅かに頷いている。
二人共その事をわかっていてからかいながらも令嬢達の館としてそこに絶ってニコラスの相手をしているのだが、それにニコラスは気が付かなかった。
「ニコラス殿には意中のお相手がいるようですし」
ジルベルトはそう言いなから耳に手をやり、ニコラスの身につけているピアスを示唆して、また優しく微笑んだ。
甥のベイリーからはニコラスとクラウディアの事を知らされ、嬉しいのだが、娘が成長しててを離れるようなそんな気持ちを感じで、ニコラスを少し困らせたかったのだ。
「ニコラス殿、向こうでは彼女とも練習をしているのだろう?どうだ?最近、腕を上げただろう。私とカイラードで鍛えているからな」
その言葉を聞いて、ニコラスは目を見開き、一瞬だが言葉を失っていた。
カイラードと練習はしているのだろうと思ったが、まさかレイン騎士団の団長からも手ほどきを受けているとは思わなかったからだ。
「ガジュラス侯爵は、私の妻の兄なんだよ」
なるほど…とニコラスはカイラードの強さの秘密がわかった気がした。
クロスローズとガジュラスの血を引いているのであれば、才能も計り知れないものだろうと。
これから楽しくなりそうな予感がして、口角が上がる。
「ガジュラス侯爵。いえ、レイン騎士団長。ぜひ、一度お相手願いたいですね」
「ニコラス殿のお相手であれば、喜んでお受けしよう」
そう言って、この先のことを色々と話し合った。
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