やり直ししてますが何か?私は殺される運命を回避するため出来ることはなんでもします!邪魔しないでください!

稲垣桜

文字の大きさ
上 下
111 / 213
第八章

102 エアストン国へ

しおりを挟む
 この日からニコラスは外交関連の交渉の為、エアストン国へ向かう王弟の護衛の一員としてその一行に同行していた。

 日程は一週間ということだが、その前後には準備やらなにやらで二週間以上の日が抑えられている為、ウィルバートでの練習には参加できないでいた。ということは、ニコラスにとってクラウディアに会える貴重な時間を奪われるという事で、正直苛立っていた.


 近衛第一騎士団の主要メンバーが護衛のリストに選抜されていること、今回の外交先が友好国でもあるエアストン国という事もあって、危険が及ぶ心配はほとんどない。
 そしてエアストン国のレイン騎士団の厳重な警備もあり、そこまで気負うことなく訪れることができるのだ。


 今回は国境付近で増えつつある魔物の被害に関する各協定を話し合うために、詳細の資料を持ち寄り話し合いを重ねるために訪れたのだ。


 以前から国境付近の森に、多数の魔物が住んでいることも確認されていたが、このところ人的被害が出るようになり、作物の被害も時折見られるようになった。
 その魔物も狂暴化が見られる個体もあり、その原因と対策の協議に王弟自らエアストン国を訪れていたのだ。


 そしてニコラスがそのメンバーに選ばれたのも、紅蓮の狼の名を持つ人物の実力を見たいというレイン騎士団の上層部の要望が通った形なのだ。


 王弟が使節団の一員と共に協議に取り組んでいる頃、ニコラスの姿は王宮の一角にあるレイン騎士団の団長室にあった。


「ようこそエアストン国のレイン騎士団へ。デフュール公爵令息殿。私はレイン騎士団団長、ジェイク・フォン・ガジュラスと申す」

「こちらこそ、お招きにあずかり心より感謝しております。ニコラス・ファロ・デフュールです」


 お互いに握手を交わすがその目は笑っておらず、相手の実力を測るようなそんな気迫のようなものが感じられる。
 その証拠に、側に控えている補佐官たちの身体はわずかに震えている様だ。


「今日は是非、我らが騎士団の練習に参加してほしいのだが、時間はあるのだろう?ニコラス殿」

「ええ、そのつもりで参りました。ウィルバート公爵からもくれぐれもよろしくと伝えて欲しいと言われておりますし」

「ほう。ジークフリートか。昔はよくやり合ったものだが、あいつもまだ現役なのだな」


 そんな話をしながら、練習をしている鍛錬場へと足を向けた。
 団長室から鍛錬場は歩いてもほんの数分で、部屋を出るとすぐににぎやかな声が耳に届く。剣の交わる音も聞こえ、ニコラスの気持ちも上がる。


「みんな、集まれ」


 ジェイクは鍛錬場にいる団員に声をかけた。
 その響く声は、一番遠くにいる団員にも届き、すぐに駆け足で集まってくるが、その動きはとても早く集まって並んだ姿は綺麗に一直線に足先が揃っている。さすがエアストン国でもエリートでもあるレイン騎士団だ。


「エストレージャ王国からの客人だ。みんなもよく知っているだろう。紅蓮の狼の名を持つデフュール公爵令息だ」


 ニコラスは内心、その紹介の仕方はないだろうと思いながら、ジェイクに視線を向けつつ団員へと挨拶をした。


「ニコラス・ファロ・デフュールです。今日は、高名なレイン騎士団の練習に参加できることを楽しみにしています」


 その言葉で、団員からは驚きの声と共に歓喜の悲鳴に似た叫び声が湧いた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

親友に裏切られた侯爵令嬢は、兄の護衛騎士から愛を押し付けられる

当麻月菜
恋愛
侯爵令嬢のマリアンヌには二人の親友がいる。 一人は男爵令嬢のエリーゼ。もう一人は伯爵令息のレイドリック。 身分差はあれど、3人は互いに愛称で呼び合い、まるで兄弟のように仲良く過ごしていた。 そしてマリアンヌは、16歳となったある日、レイドリックから正式な求婚を受ける。 二つ返事で承諾したマリアンヌだったけれど、婚約者となったレイドリックは次第に本性を現してきて……。 戸惑う日々を過ごすマリアンヌに、兄の護衛騎士であるクリスは婚約破棄をやたら強く進めてくる。 もともと苦手だったクリスに対し、マリアンヌは更に苦手意識を持ってしまう。 でも、強く拒むことができない。 それはその冷たい態度の中に、自分に向ける優しさがあることを知ってしまったから。 ※タイトル模索中なので、仮に変更しました。 ※2020/05/22 タイトル決まりました。 ※小説家になろう様にも重複投稿しています。(タイトルがちょっと違います。そのうち統一します)

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら

キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。 しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。 妹は、私から婚約相手を奪い取った。 いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。 流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。 そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。 それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。 彼は、後悔することになるだろう。 そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。 2人は、大丈夫なのかしら。

わたしはくじ引きで選ばれたにすぎない婚約者だったらしい

よーこ
恋愛
特に美しくもなく、賢くもなく、家柄はそこそこでしかない伯爵令嬢リリアーナは、婚約後六年経ったある日、婚約者である大好きな第二王子に自分が未来の王子妃として選ばれた理由を尋ねてみた。 王子の答えはこうだった。 「くじで引いた紙にリリアーナの名前が書かれていたから」 え、わたし、そんな取るに足らない存在でしかなかったの?! 思い出してみれば、今まで王子に「好きだ」みたいなことを言われたことがない。 ショックを受けたリリアーナは……。

処理中です...