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第七章
82 ニコラスの告白
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「さて、練習開始ね。走ろうか」
サラに声をかけられ鍛錬場を走り始めたが、最初の頃はから比べても体力がついてきたなとクラウディアは実感していた。
そして走り終わってから体をほぐし、基本の型の剣舞をサラと二人で始め、準備万端な状態で練習開始を待った。
「ねえ、ディア。ニックに会うの、楽しみなんでしょ?」
今月に入ってすぐ、ニコラスの所属騎士団の勤務体系の見直しがかかり、あの告白まがいの日から二週間ほど顔を合わせない日が続いていた。
テオドールとの練習は王都でやっているようだが、この屋敷での練習は参加していなかったこともあって、サラはニコラスに聞きたい事があっても我慢する日々を過ごしていた。
そして彼らが来る前に、サラはクラウディアにそう言っいながらいきなりくすぐり、まるでじゃれ合う猫のように転がり合った。
「お前達、仲いいな」
笑顔で見降ろされたその顔は、優しい笑顔を浮かべたニコラスだった。その後方にはテオドールの姿も見える。
「ニック、久しぶりね。それで最近どう?」
「最近?そうだな…国境にいた時は毎週大変だったが、今は王宮だからな。まあ、違う意味で忙しいな」
仕事のことを聞かれたと思ってそう答えたのだが、サラが欲しかった答えはそれではなかった。
「もう、違うわよ。」
そう言いながら立ち上がりニコラスにボソッと耳打ちをした。何を話したのかわからなかったけど、ニコラスの目がチラリとクラウディアに向けられる。
「サラ、お前、そんな事ばっかり考えてるのか?」
冷ややかな視線をサラに向け、呆れたように軽くため息をついて体をほぐし始めたニコラスの姿を見て、サラは「手ごわいわね」とポツリと呟いた。
「何を聞いたか知らないが、お前はニックに勝てないぞ」とテオドールがサラに意地悪な笑みを浮かべながらそう言う。ニコラスの方が一枚も二枚も上手なのだから、勝てないのはわかっているものの、挑みたくなるのがサラの性分だ。
「もう、兄さん。そんなこと言わないでよ」
「なあ、ディア、お前もそう思うだろう?」
◇ ◇ ◇
「なあディア、お前、サラに何を言った?」
真実を見極めるような眼をして、クラウディアに聞いてきた。
「何って?何のこと?私だって、サラが何を聞いたのか知りたいくらいなんだけど」
さっきの耳打ちしていたのが何だったのか、気になって仕方なかった。サラのことだから、何かとんでもないことを言ってそうだ。ニコラスは周りをちらっと見て、テオドールやサラがまだ言い合いをしているのを見て話し始めた。
「サラが、『いつディアに想いを告げるの?兄さんに取られるわよ』って言ってきたんだよ」
そう言ったニックの耳が赤くなっているのがわかり、口元を手で覆うようにしている。照れているような、そんな表情を隠しているのだろうか。
「なにそれ?……どういう、こと?」
サラがそんなことを言っているとは思いもせず、どうしてそんなことをニコラスに言ったのか驚いた。確かに以前、サラはそんなことを言っていたような気もする。
―――確かに、このところテオとディアの距離は近い。テオがディアに対して好意を抱いているのは明白だ。それはわかっているが、サラまでその事に気付いて俺に言ってくるとは、予想外だった。しかし、相手がテオだからと言って遠慮するつもりはないが。
ニコラスはサラに聞かれたことが、自身の心のうちにある気持ちに決心が付いたのだろう。
「前に『大人になって、結婚相手がいなかったら俺と結婚するか』って言ったこと覚えてるか?」
―――そんなことを言ってた…気がする。
「あれから、色々と考えたんだ。だが、いくら考えても、結論は一緒だった。俺が本気だと言えば、お前は受けてくれるか?俺にとってお前は手放したくない存在だ。ずっと……俺の側に居てほしい」
「ニック……、それ、本気で言ってるの?」
「ああ……、お前に公爵家に入れとは言わない。お前が俺を受け入れてくれるなら、俺は家を出てもいい。騎士として生きていくことだって厭わない。幸い、俺には優秀な弟がいるから家のことは心配しなくていい」
「ま、まって…だって私、結婚はしないって話をしてたよね。それがどうしてこうなるの?」
「ディアは俺が嫌か?」
「…嫌じゃ…ないけど…」
―――そう、嫌じゃない。でも、この気持ちを認めたら、心の中の何かが崩れそうで怖いのよ。
「嫌じゃないなら、考えてくれ。さっきも言ったが、俺は、本気だ」
熱を孕んだ赤い瞳は、まっすぐにクラウディアを捉えた。
「私……また子供だわ。ニックに似合う訳ないじゃない」
「そんなのは関係ない…」
彼の力強く、そして優しい赤い瞳はクラウディアの心を捉えて離さなかった。
クラウディアの脳裏には未来の姿が一瞬だが横切る。
幸せな未来が訪れるのであれば、その手を取るかもしれない。しかし、思い出すのは自身の死ぬ瞬間だ。その光景を思い出し冷静になる。
それが表情に出ていたのか、ニコラスの顔が瞬時に曇った。
「それとも、テオに何か言われたのか?」
ずいぶん前に、テオドールから『俺と付き合ってみるか』と言われたことはある。それに、クラウディアとして彼と交流しているから、距離感は近くなったと自覚はしていた。
それがニコラスの目にはどう映っていたのだろうかとふと考えたが、どう考えようが、クラウディアの考えはもう決まっているのだ。
「……テオとは何もないわ。それに、私はこの先、誰の手も取るつもりはないの。結婚しないって言ったでしょ」
悲しいような、辛いような、思いつめたような複雑な表情を浮かべたと思うと、急に笑顔になった。何かを誤魔化すようなその表情が、気になると言うか心配になった。何を思い詰めているのだろうと…
「ディア、どうしてそんな顔をする?」
「練習……、もう始まるよ」
そう言って、クラウディアはサラの元へ向かいニコラスと距離を取った。あのまま側に居る事が耐えられなかったのだ。彼の優しさが、気持ちが、すごく嬉しいのにとても辛かった。
◇ ◇ ◇
「ニコラスに何か言われたのか?」
ローラントがクラウディアの顔を見て何かあったのだろうと気が付き声を掛けてきたのだが、正直言って助かった。深呼吸を何度かして、少し頭を働かせた。
「ううん、別に。色々と直した方が良いところを教えてくれたの。ただ、それが多すぎてね……」
それで冷静さを欠いて見えたという理解をしてもらおうと言ってみたのだが、通用するのだろうか。
「まあ、ニコラスから見たら、俺達なんてまだまだひよっこだろうからな。気にするなよ」
「わかってる。今度は言われないように頑張るから」
そうだな、と笑顔を向けてくるのだが、ローラントの笑顔はテオドールとは違う天真爛漫な明るさが感じられ、何だかホッとした。
そしてローラントはクラウディアの肩を抱き、耳元で「絶対に見返してやろうな」と呟いた。
それに同意しながら、さっきのことを思い出していたのだった。
サラに声をかけられ鍛錬場を走り始めたが、最初の頃はから比べても体力がついてきたなとクラウディアは実感していた。
そして走り終わってから体をほぐし、基本の型の剣舞をサラと二人で始め、準備万端な状態で練習開始を待った。
「ねえ、ディア。ニックに会うの、楽しみなんでしょ?」
今月に入ってすぐ、ニコラスの所属騎士団の勤務体系の見直しがかかり、あの告白まがいの日から二週間ほど顔を合わせない日が続いていた。
テオドールとの練習は王都でやっているようだが、この屋敷での練習は参加していなかったこともあって、サラはニコラスに聞きたい事があっても我慢する日々を過ごしていた。
そして彼らが来る前に、サラはクラウディアにそう言っいながらいきなりくすぐり、まるでじゃれ合う猫のように転がり合った。
「お前達、仲いいな」
笑顔で見降ろされたその顔は、優しい笑顔を浮かべたニコラスだった。その後方にはテオドールの姿も見える。
「ニック、久しぶりね。それで最近どう?」
「最近?そうだな…国境にいた時は毎週大変だったが、今は王宮だからな。まあ、違う意味で忙しいな」
仕事のことを聞かれたと思ってそう答えたのだが、サラが欲しかった答えはそれではなかった。
「もう、違うわよ。」
そう言いながら立ち上がりニコラスにボソッと耳打ちをした。何を話したのかわからなかったけど、ニコラスの目がチラリとクラウディアに向けられる。
「サラ、お前、そんな事ばっかり考えてるのか?」
冷ややかな視線をサラに向け、呆れたように軽くため息をついて体をほぐし始めたニコラスの姿を見て、サラは「手ごわいわね」とポツリと呟いた。
「何を聞いたか知らないが、お前はニックに勝てないぞ」とテオドールがサラに意地悪な笑みを浮かべながらそう言う。ニコラスの方が一枚も二枚も上手なのだから、勝てないのはわかっているものの、挑みたくなるのがサラの性分だ。
「もう、兄さん。そんなこと言わないでよ」
「なあ、ディア、お前もそう思うだろう?」
◇ ◇ ◇
「なあディア、お前、サラに何を言った?」
真実を見極めるような眼をして、クラウディアに聞いてきた。
「何って?何のこと?私だって、サラが何を聞いたのか知りたいくらいなんだけど」
さっきの耳打ちしていたのが何だったのか、気になって仕方なかった。サラのことだから、何かとんでもないことを言ってそうだ。ニコラスは周りをちらっと見て、テオドールやサラがまだ言い合いをしているのを見て話し始めた。
「サラが、『いつディアに想いを告げるの?兄さんに取られるわよ』って言ってきたんだよ」
そう言ったニックの耳が赤くなっているのがわかり、口元を手で覆うようにしている。照れているような、そんな表情を隠しているのだろうか。
「なにそれ?……どういう、こと?」
サラがそんなことを言っているとは思いもせず、どうしてそんなことをニコラスに言ったのか驚いた。確かに以前、サラはそんなことを言っていたような気もする。
―――確かに、このところテオとディアの距離は近い。テオがディアに対して好意を抱いているのは明白だ。それはわかっているが、サラまでその事に気付いて俺に言ってくるとは、予想外だった。しかし、相手がテオだからと言って遠慮するつもりはないが。
ニコラスはサラに聞かれたことが、自身の心のうちにある気持ちに決心が付いたのだろう。
「前に『大人になって、結婚相手がいなかったら俺と結婚するか』って言ったこと覚えてるか?」
―――そんなことを言ってた…気がする。
「あれから、色々と考えたんだ。だが、いくら考えても、結論は一緒だった。俺が本気だと言えば、お前は受けてくれるか?俺にとってお前は手放したくない存在だ。ずっと……俺の側に居てほしい」
「ニック……、それ、本気で言ってるの?」
「ああ……、お前に公爵家に入れとは言わない。お前が俺を受け入れてくれるなら、俺は家を出てもいい。騎士として生きていくことだって厭わない。幸い、俺には優秀な弟がいるから家のことは心配しなくていい」
「ま、まって…だって私、結婚はしないって話をしてたよね。それがどうしてこうなるの?」
「ディアは俺が嫌か?」
「…嫌じゃ…ないけど…」
―――そう、嫌じゃない。でも、この気持ちを認めたら、心の中の何かが崩れそうで怖いのよ。
「嫌じゃないなら、考えてくれ。さっきも言ったが、俺は、本気だ」
熱を孕んだ赤い瞳は、まっすぐにクラウディアを捉えた。
「私……また子供だわ。ニックに似合う訳ないじゃない」
「そんなのは関係ない…」
彼の力強く、そして優しい赤い瞳はクラウディアの心を捉えて離さなかった。
クラウディアの脳裏には未来の姿が一瞬だが横切る。
幸せな未来が訪れるのであれば、その手を取るかもしれない。しかし、思い出すのは自身の死ぬ瞬間だ。その光景を思い出し冷静になる。
それが表情に出ていたのか、ニコラスの顔が瞬時に曇った。
「それとも、テオに何か言われたのか?」
ずいぶん前に、テオドールから『俺と付き合ってみるか』と言われたことはある。それに、クラウディアとして彼と交流しているから、距離感は近くなったと自覚はしていた。
それがニコラスの目にはどう映っていたのだろうかとふと考えたが、どう考えようが、クラウディアの考えはもう決まっているのだ。
「……テオとは何もないわ。それに、私はこの先、誰の手も取るつもりはないの。結婚しないって言ったでしょ」
悲しいような、辛いような、思いつめたような複雑な表情を浮かべたと思うと、急に笑顔になった。何かを誤魔化すようなその表情が、気になると言うか心配になった。何を思い詰めているのだろうと…
「ディア、どうしてそんな顔をする?」
「練習……、もう始まるよ」
そう言って、クラウディアはサラの元へ向かいニコラスと距離を取った。あのまま側に居る事が耐えられなかったのだ。彼の優しさが、気持ちが、すごく嬉しいのにとても辛かった。
◇ ◇ ◇
「ニコラスに何か言われたのか?」
ローラントがクラウディアの顔を見て何かあったのだろうと気が付き声を掛けてきたのだが、正直言って助かった。深呼吸を何度かして、少し頭を働かせた。
「ううん、別に。色々と直した方が良いところを教えてくれたの。ただ、それが多すぎてね……」
それで冷静さを欠いて見えたという理解をしてもらおうと言ってみたのだが、通用するのだろうか。
「まあ、ニコラスから見たら、俺達なんてまだまだひよっこだろうからな。気にするなよ」
「わかってる。今度は言われないように頑張るから」
そうだな、と笑顔を向けてくるのだが、ローラントの笑顔はテオドールとは違う天真爛漫な明るさが感じられ、何だかホッとした。
そしてローラントはクラウディアの肩を抱き、耳元で「絶対に見返してやろうな」と呟いた。
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