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第六章
53 王妃主催のお茶会
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王宮の奥にある庭園では、王妃主催のお茶会の準備が始まろうとしていた。
王妃主催とはいえかしこまった物ではなく、王太子と同年代の子の交流を目的としたものだと説明があったが、その裏では、王太子の婚約者候補の選定の事を頭の隅においていた。
「招待者はそろそろ到着するころね。レイナルドたちの準備はできているの?」
「はい、レイナルド様と仲の良い御令息方もお部屋でお待ちです」
その返事を聞いて安心したようで、頷きながら会場に向かうためにレイナルド達のいる部屋へと向かった。
王妃がレイナルド達を迎えに行く話をしている頃には、既に母親や侍女を連れだった令嬢や令息が続々と集まり始めたが、その中にはクラウディアの姿はなかった。
「今日、王太子殿下もご出席されるのよ。お母様が、『婚約者を決めるのかも』って言っていたわ」
「私のお母様も言ってたわ。どんな方かしら?」
数名の令嬢がこそこそと話をして、今回のお茶会の意図が公表していないまでも知られていることを物語っていた。
「さあレイナルド、行きますよ。お友達も一緒にいらっしゃい」
ダメと言わせない笑顔を浮かべた王妃が、先に会場となっている庭園へと入っていく。
「みなさん。私のお茶会に来てくれてありがとう。今日は、息子と同年代の子達との交流をしてもらいたくてお呼びしたの。紹介するわ。レイナルド、いらっしゃい」
呼ばれて会場入りしたレイナルドは、さすがに王族だけあり、心の中が表に、表情に出ないように振る舞い、笑顔を浮かべて挨拶をした。
「レイナルド・リリー・エストレージャです。今日はゆっくりしていってください」
彼に初めて会う令嬢が大多数のようで、顔を赤らめている姿もちらほら見えた。
「レイナルドの友達も紹介するわね」
そう言って、ジェラルド、リオネル、ローラントも紹介される。彼らもまた、公爵家の令息として、感情を表に出さないように気を付けて挨拶をした。
「あの人、素敵だわ…お母様、あの人は誰なの?」
そう母親に話したのは、綺麗にセットされたなローズレッドの髪をしたジゼル・フォン・アーテル伯爵令嬢だった。彼女はレイナルド達の1つ下なのだが、両親から甘やかされすぎて、少しわがままなところがある。その彼女が「いいな」と言ったのは、リオネルだった。
「ジゼル、あの方はデフュール公爵家の次男の方よ。伯爵家では王太子殿下は無理でも、公爵家なら大丈夫よ。頑張りなさい」
母親のミリアムも権力には弱いようで、公爵家と繋がりを持てることに期待をしていた。
夫のアーテル伯爵は侯爵家の出身なのだが、彼の兄が家督を継いだために今は伯爵位を受け継いでいる。その為、ミリアムは少しでも上の階級への憧れが人一倍強かった。
「話しかけていらっしゃい。大丈夫よ、あなたは可愛いのだから」
そう言ってミリアムは娘を送り出した。
この日は、交流を中心としているため、身分の違いは問われることはなかった。
庭園の開けた場所に大きな長いテーブルがいくつも置かれており、令息令嬢達はそこに集まり、その名の通り“お茶会”が始まった。
母親たちは場所を隣に準備された席へ移動し、侍女達もまた離れたところで待機している。
ここに集められた令息令嬢は伯爵家以上の貴族で、いずれは学園で王太子と同窓になるような年齢の子供達だった。
つまり、王太子のお相手だけではなく、この先の学友としての顔合わせも兼ねているお茶会だった。
その会場には、公爵家からはアデライトやフィオナが参加しており、話の輪に加わっているのが見えた。
彼女たちもまた公爵家という名を背負うものとして、間違った対応をしないようにと言われ育っているため、幼いながらもこういう場でも姿勢を崩すことはない。他の令嬢達より大人っぽく見えるのはそういうところが表れているのだろう。
しかし、このお茶会には気乗りしていなかったレイナルド、ジェラルド、リオネル、ローラントは、愛想笑いを浮かべる程度で、令嬢達と仲良くなるというようなことはなかった。
そして、令嬢達から熱い目で見られていることにも気が付かない振りをし、ただこのお茶会が早く終わる事だけを考えて。
「ジェラルド様、クラウディア様はお元気ですか?」
アデライトが隣に座っているジェラルドに話しかけた。
公爵家同士で、クラウディアと会う事のあるアデライトは、ジェラルドとは顔見知りなのだが話した事はなかった。フィオナもそうなのだが、彼女は向かい側のローラントの隣にいたため、話声は聞こえない様だ。
「アデライト嬢、クラウディアから聞いているよ。いつも手紙をくれると嬉しそうに話してくれるからね」
「まあ、嬉しいです。今度クラウディア様とフィオナ様と一緒に会う約束をしたのです。まだ先になると思いますけど、楽しみにしていますわ」
今までクラウディアが誰かに会うという事は聞くことがなかったので若干驚いたが、同じ年齢の公爵家の令嬢なのだから、そういう機会を作ることは、いいことだろうとジェラルドも思った。
「アデライト嬢、クラウディアと仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしく頼むよ」
アデライトに向けられたジェラルドの笑顔は、キラキラ輝く王子様スマイルだ。短い金の髪も光に当たってキラキラと輝いていることもあってか、レイナルドと共に正に王子と言ってもいいほどの笑顔だ。そしてその笑顔は、もちろんだが他の令嬢達の注目を浴びている。
そして、その笑顔を向けられていたアデライトには違う意味の視線が集まっていたのは言うまでもない。
「あの…リオネル様。私、アーテル伯爵家のジゼルと申します」
皆が席を立って庭園内の散策を始めた時に、ジゼルは思い切ってリオネルに話しかけた。
リオネルもまた公爵家の人間として、失礼な態度をとらないように気を付けて挨拶を返す。本来なら、身分が下の者から話しかけることは出来ないのだが、王妃が『レイナルドは自分から令嬢に声をかけることはしないだろうから』という理由で、今回のお茶会は特別に許可が出ていた。
「デフュール公爵家のリオネルです。確かアーテル伯爵令嬢の兄は、私の兄とジュネス学園で同じ学年でしたね」
リオネルと声をかけられたことに対して気になることはあったものの、アーテルの名前を聞いて、彼女の兄の存在を思い出し話題にした。それ以外、思いつくようなことがなかったというのが本当のところだが。
「私は兄とは交流がないのです。兄が寮で生活するようになってから、屋敷にはほとんど戻ってこないので」
「そうなのですね。私の兄も同じようなものです。たまに帰ってきたときに、剣の相手をしてもらうくらいですよ」
一目惚れしたリオネルと話ができ、舞い上がるような気持になっていたのだが、そこにもう一人、二人の間に入るように一人の令嬢が声をかけてきた。
「私も話に混ぜていただけます?アーモア侯爵家のレイラですわ。リオネル様」
ココアブラウンの髪をした勝ち気そうな少女がリオネルの隣に立って挨拶をする。
「これはアーモア侯爵令嬢。今日はリアムと一緒に参加ですか?」
「ええ、お兄様もレイナルド様と同級ですから」
リオネルは、どうしてこうも令嬢が近付いてくるのだろうと思いちらりと周りを見たが、レイナルドの周りにもジェラルドの周りにもローラントの周りにも、令嬢の姿が見え逃げられそうにない事を悟り、そのまま当たり障りのない話をして、このお茶会が早く終わることを願った。
「はあ…終わったな」
参加者が帰ったことを確認して、レイナルドがため息交じりに呟いた。
「思ったよりも疲れたな…」
「ああ、令嬢達は思ったよりも積極的だな」
「ローはちょっと令嬢と話したと思ったら、すぐに男ばかりと話してたからなぁ」
しっかりと逃げた事をチクリと言う。しかし、完全な確信犯だったローラントは、三人に向かって「お疲れ様」と他人事のように声をかける。
社交として、こういう場の経験は必要だとわかってはいるもののどうしても慣れない。まだ初回という事もあるのだろうが、精神的にクルものがあった。
溜息を一つ吐き、「母上はまた開催しそうだな…」とレイナルドがぼそっと言うと、その言葉を耳にした三人は、一瞬動きが止まり、同じく溜息を洩らした。
王妃主催とはいえかしこまった物ではなく、王太子と同年代の子の交流を目的としたものだと説明があったが、その裏では、王太子の婚約者候補の選定の事を頭の隅においていた。
「招待者はそろそろ到着するころね。レイナルドたちの準備はできているの?」
「はい、レイナルド様と仲の良い御令息方もお部屋でお待ちです」
その返事を聞いて安心したようで、頷きながら会場に向かうためにレイナルド達のいる部屋へと向かった。
王妃がレイナルド達を迎えに行く話をしている頃には、既に母親や侍女を連れだった令嬢や令息が続々と集まり始めたが、その中にはクラウディアの姿はなかった。
「今日、王太子殿下もご出席されるのよ。お母様が、『婚約者を決めるのかも』って言っていたわ」
「私のお母様も言ってたわ。どんな方かしら?」
数名の令嬢がこそこそと話をして、今回のお茶会の意図が公表していないまでも知られていることを物語っていた。
「さあレイナルド、行きますよ。お友達も一緒にいらっしゃい」
ダメと言わせない笑顔を浮かべた王妃が、先に会場となっている庭園へと入っていく。
「みなさん。私のお茶会に来てくれてありがとう。今日は、息子と同年代の子達との交流をしてもらいたくてお呼びしたの。紹介するわ。レイナルド、いらっしゃい」
呼ばれて会場入りしたレイナルドは、さすがに王族だけあり、心の中が表に、表情に出ないように振る舞い、笑顔を浮かべて挨拶をした。
「レイナルド・リリー・エストレージャです。今日はゆっくりしていってください」
彼に初めて会う令嬢が大多数のようで、顔を赤らめている姿もちらほら見えた。
「レイナルドの友達も紹介するわね」
そう言って、ジェラルド、リオネル、ローラントも紹介される。彼らもまた、公爵家の令息として、感情を表に出さないように気を付けて挨拶をした。
「あの人、素敵だわ…お母様、あの人は誰なの?」
そう母親に話したのは、綺麗にセットされたなローズレッドの髪をしたジゼル・フォン・アーテル伯爵令嬢だった。彼女はレイナルド達の1つ下なのだが、両親から甘やかされすぎて、少しわがままなところがある。その彼女が「いいな」と言ったのは、リオネルだった。
「ジゼル、あの方はデフュール公爵家の次男の方よ。伯爵家では王太子殿下は無理でも、公爵家なら大丈夫よ。頑張りなさい」
母親のミリアムも権力には弱いようで、公爵家と繋がりを持てることに期待をしていた。
夫のアーテル伯爵は侯爵家の出身なのだが、彼の兄が家督を継いだために今は伯爵位を受け継いでいる。その為、ミリアムは少しでも上の階級への憧れが人一倍強かった。
「話しかけていらっしゃい。大丈夫よ、あなたは可愛いのだから」
そう言ってミリアムは娘を送り出した。
この日は、交流を中心としているため、身分の違いは問われることはなかった。
庭園の開けた場所に大きな長いテーブルがいくつも置かれており、令息令嬢達はそこに集まり、その名の通り“お茶会”が始まった。
母親たちは場所を隣に準備された席へ移動し、侍女達もまた離れたところで待機している。
ここに集められた令息令嬢は伯爵家以上の貴族で、いずれは学園で王太子と同窓になるような年齢の子供達だった。
つまり、王太子のお相手だけではなく、この先の学友としての顔合わせも兼ねているお茶会だった。
その会場には、公爵家からはアデライトやフィオナが参加しており、話の輪に加わっているのが見えた。
彼女たちもまた公爵家という名を背負うものとして、間違った対応をしないようにと言われ育っているため、幼いながらもこういう場でも姿勢を崩すことはない。他の令嬢達より大人っぽく見えるのはそういうところが表れているのだろう。
しかし、このお茶会には気乗りしていなかったレイナルド、ジェラルド、リオネル、ローラントは、愛想笑いを浮かべる程度で、令嬢達と仲良くなるというようなことはなかった。
そして、令嬢達から熱い目で見られていることにも気が付かない振りをし、ただこのお茶会が早く終わる事だけを考えて。
「ジェラルド様、クラウディア様はお元気ですか?」
アデライトが隣に座っているジェラルドに話しかけた。
公爵家同士で、クラウディアと会う事のあるアデライトは、ジェラルドとは顔見知りなのだが話した事はなかった。フィオナもそうなのだが、彼女は向かい側のローラントの隣にいたため、話声は聞こえない様だ。
「アデライト嬢、クラウディアから聞いているよ。いつも手紙をくれると嬉しそうに話してくれるからね」
「まあ、嬉しいです。今度クラウディア様とフィオナ様と一緒に会う約束をしたのです。まだ先になると思いますけど、楽しみにしていますわ」
今までクラウディアが誰かに会うという事は聞くことがなかったので若干驚いたが、同じ年齢の公爵家の令嬢なのだから、そういう機会を作ることは、いいことだろうとジェラルドも思った。
「アデライト嬢、クラウディアと仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしく頼むよ」
アデライトに向けられたジェラルドの笑顔は、キラキラ輝く王子様スマイルだ。短い金の髪も光に当たってキラキラと輝いていることもあってか、レイナルドと共に正に王子と言ってもいいほどの笑顔だ。そしてその笑顔は、もちろんだが他の令嬢達の注目を浴びている。
そして、その笑顔を向けられていたアデライトには違う意味の視線が集まっていたのは言うまでもない。
「あの…リオネル様。私、アーテル伯爵家のジゼルと申します」
皆が席を立って庭園内の散策を始めた時に、ジゼルは思い切ってリオネルに話しかけた。
リオネルもまた公爵家の人間として、失礼な態度をとらないように気を付けて挨拶を返す。本来なら、身分が下の者から話しかけることは出来ないのだが、王妃が『レイナルドは自分から令嬢に声をかけることはしないだろうから』という理由で、今回のお茶会は特別に許可が出ていた。
「デフュール公爵家のリオネルです。確かアーテル伯爵令嬢の兄は、私の兄とジュネス学園で同じ学年でしたね」
リオネルと声をかけられたことに対して気になることはあったものの、アーテルの名前を聞いて、彼女の兄の存在を思い出し話題にした。それ以外、思いつくようなことがなかったというのが本当のところだが。
「私は兄とは交流がないのです。兄が寮で生活するようになってから、屋敷にはほとんど戻ってこないので」
「そうなのですね。私の兄も同じようなものです。たまに帰ってきたときに、剣の相手をしてもらうくらいですよ」
一目惚れしたリオネルと話ができ、舞い上がるような気持になっていたのだが、そこにもう一人、二人の間に入るように一人の令嬢が声をかけてきた。
「私も話に混ぜていただけます?アーモア侯爵家のレイラですわ。リオネル様」
ココアブラウンの髪をした勝ち気そうな少女がリオネルの隣に立って挨拶をする。
「これはアーモア侯爵令嬢。今日はリアムと一緒に参加ですか?」
「ええ、お兄様もレイナルド様と同級ですから」
リオネルは、どうしてこうも令嬢が近付いてくるのだろうと思いちらりと周りを見たが、レイナルドの周りにもジェラルドの周りにもローラントの周りにも、令嬢の姿が見え逃げられそうにない事を悟り、そのまま当たり障りのない話をして、このお茶会が早く終わることを願った。
「はあ…終わったな」
参加者が帰ったことを確認して、レイナルドがため息交じりに呟いた。
「思ったよりも疲れたな…」
「ああ、令嬢達は思ったよりも積極的だな」
「ローはちょっと令嬢と話したと思ったら、すぐに男ばかりと話してたからなぁ」
しっかりと逃げた事をチクリと言う。しかし、完全な確信犯だったローラントは、三人に向かって「お疲れ様」と他人事のように声をかける。
社交として、こういう場の経験は必要だとわかってはいるもののどうしても慣れない。まだ初回という事もあるのだろうが、精神的にクルものがあった。
溜息を一つ吐き、「母上はまた開催しそうだな…」とレイナルドがぼそっと言うと、その言葉を耳にした三人は、一瞬動きが止まり、同じく溜息を洩らした。
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