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第五章
44 教会での祈り
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クラウディアは九歳で目覚め、一度目のことを思い出してからというもの、神への感謝を伝えるために毎年教会へ通うことにしていた。
あの日あの時に、自分の本当の時間が動き始めたのだと思っているからだが、いつかその理由がわかるような気がして毎年目覚めた日に教会へと通うことを決めていた。
そして12歳になったことを機に、教会へ一人で行くことにしていたのだ。
ヴェリダ教の猊下でもある大叔父様に話したところ、お祈りの日の朝、担当の神官が屋敷まで迎えに来てくれるように手配をしてくれて、しかもお祈りの時は一人がいいという条件もなんなく許可が下りた。あきらかな特別待遇なのだが、彼らからするとそれも仕方ないこと…いや、当たり前の事なのだろう。
「とても澄んだきれいな空だなぁ。こんな日になら神に祈りが届くかな…」
場所の窓から外を見上げながらふと呟いた。
「クラウディア様、そろそろ到着いたします」
「ありがとう」
クロスローズの領地でもあるナシュールの教会は、町の住民たちの憩いの場でもある大きな公園の横に建っている。その為、建物の正面は人が多いため教会の裏へ馬車を回してもらい、そこで降りた。
お忍びで教会を訪れる人達への配慮もありそういった出入口は準備されているようで、今回この入り口から中へと入ることになっていた。
「さぁ、参りましょう。」
馬車の扉が外から開けられ神官がそう声をかけた。
馬車の外には案内を任されている神官見習いの姿も見えて、彼らはこの教会に併設されている孤児院の出身者で、市井で働くより神に仕える道を選んだらしい。
その彼らの先導で大きな扉をくぐる。
裏口とはいえ貴族のお忍びにも使用されるとあってか、その入り口は質素で重厚な造りをしていた。そして長い廊下を歩きある部屋の扉の前で立ち止まった。
「ではクラウディア様。準備ができましたらお呼びしますので、こちらでお待ちください」
神官見習いに案内された部屋は巡礼に訪れた人が泊まる部屋のようで、中は簡素にまとめられており、小さなベッドと机といすが揃えられた清潔で清貧さのわかる部屋だった。
教会に来ているのだから待っている時には清貧に…そう話をして貴族用の部屋は最初から断ってこの部屋を希望したのだが、とてもコンパクトにまとまっているのがクラウディアはとても気に入った。
そして小さな窓からは先ほど馬車を降りた場所が見えた。
そしてその窓からかすかに聞こえてくる町の賑わいが、この場所の静けさを強調しているようで心が落ち着いていく様だ。
―――こんな風に時間を過ごすなんて贅沢ね。
ふふふっと思わず笑いが漏れる。その時、一台の馬車が到着するのが見えた。
―――あら?私みたいにお忍びなのかな?
そう思った時、部屋をノックする音が聞こえ振り返ると扉が開き、いつも見る神官が優しい微笑みを浮かべていた。
「クラウディア様。準備ができましたのでこちらへ」
「わかりました。今行きます」
そう返事をしてからもう一度窓の外を見たが、馬車の主は降りたらしく、その姿は見えなかった。
―――誰だったのかな…
「さあ、こちらへどうぞ。私はこちらで控えておりますので、終わりましたらお声をおかけください」
「ありがとうございます」
先程の部屋から礼拝堂まではそう離れてはいないようで、廊下を進み角を曲がるとすぐに礼拝堂の重厚な扉が目に入った。
その扉を開けると200人は入れそうな広い礼拝堂の前方に、この国の国教であるヴェリタ教の神の像が設置されていて、クラウディアはその前に跪いた。
ヴェリタ神の像はクラウディアの父親くらいの年齢の男性の姿をしていて、この国の建国時に姿を現した神を映したものだと伝えられている。長い髪を後ろに流していて、その顔はとても優しそうな微笑みを浮かべているヴェリダ神は、あの日、セグリーヴ侯爵家で顕現した時とほとんど変わらない姿だった。
「ヴェリタの神よ。私に今一度の機会を与えてくださったことを、心より感謝いたします」
そのまま祈りを捧げていたクラウディアは、礼拝堂のドアが開いたことにも気づくことなく熱心に祈り続けた。
あの日あの時に、自分の本当の時間が動き始めたのだと思っているからだが、いつかその理由がわかるような気がして毎年目覚めた日に教会へと通うことを決めていた。
そして12歳になったことを機に、教会へ一人で行くことにしていたのだ。
ヴェリダ教の猊下でもある大叔父様に話したところ、お祈りの日の朝、担当の神官が屋敷まで迎えに来てくれるように手配をしてくれて、しかもお祈りの時は一人がいいという条件もなんなく許可が下りた。あきらかな特別待遇なのだが、彼らからするとそれも仕方ないこと…いや、当たり前の事なのだろう。
「とても澄んだきれいな空だなぁ。こんな日になら神に祈りが届くかな…」
場所の窓から外を見上げながらふと呟いた。
「クラウディア様、そろそろ到着いたします」
「ありがとう」
クロスローズの領地でもあるナシュールの教会は、町の住民たちの憩いの場でもある大きな公園の横に建っている。その為、建物の正面は人が多いため教会の裏へ馬車を回してもらい、そこで降りた。
お忍びで教会を訪れる人達への配慮もありそういった出入口は準備されているようで、今回この入り口から中へと入ることになっていた。
「さぁ、参りましょう。」
馬車の扉が外から開けられ神官がそう声をかけた。
馬車の外には案内を任されている神官見習いの姿も見えて、彼らはこの教会に併設されている孤児院の出身者で、市井で働くより神に仕える道を選んだらしい。
その彼らの先導で大きな扉をくぐる。
裏口とはいえ貴族のお忍びにも使用されるとあってか、その入り口は質素で重厚な造りをしていた。そして長い廊下を歩きある部屋の扉の前で立ち止まった。
「ではクラウディア様。準備ができましたらお呼びしますので、こちらでお待ちください」
神官見習いに案内された部屋は巡礼に訪れた人が泊まる部屋のようで、中は簡素にまとめられており、小さなベッドと机といすが揃えられた清潔で清貧さのわかる部屋だった。
教会に来ているのだから待っている時には清貧に…そう話をして貴族用の部屋は最初から断ってこの部屋を希望したのだが、とてもコンパクトにまとまっているのがクラウディアはとても気に入った。
そして小さな窓からは先ほど馬車を降りた場所が見えた。
そしてその窓からかすかに聞こえてくる町の賑わいが、この場所の静けさを強調しているようで心が落ち着いていく様だ。
―――こんな風に時間を過ごすなんて贅沢ね。
ふふふっと思わず笑いが漏れる。その時、一台の馬車が到着するのが見えた。
―――あら?私みたいにお忍びなのかな?
そう思った時、部屋をノックする音が聞こえ振り返ると扉が開き、いつも見る神官が優しい微笑みを浮かべていた。
「クラウディア様。準備ができましたのでこちらへ」
「わかりました。今行きます」
そう返事をしてからもう一度窓の外を見たが、馬車の主は降りたらしく、その姿は見えなかった。
―――誰だったのかな…
「さあ、こちらへどうぞ。私はこちらで控えておりますので、終わりましたらお声をおかけください」
「ありがとうございます」
先程の部屋から礼拝堂まではそう離れてはいないようで、廊下を進み角を曲がるとすぐに礼拝堂の重厚な扉が目に入った。
その扉を開けると200人は入れそうな広い礼拝堂の前方に、この国の国教であるヴェリタ教の神の像が設置されていて、クラウディアはその前に跪いた。
ヴェリタ神の像はクラウディアの父親くらいの年齢の男性の姿をしていて、この国の建国時に姿を現した神を映したものだと伝えられている。長い髪を後ろに流していて、その顔はとても優しそうな微笑みを浮かべているヴェリダ神は、あの日、セグリーヴ侯爵家で顕現した時とほとんど変わらない姿だった。
「ヴェリタの神よ。私に今一度の機会を与えてくださったことを、心より感謝いたします」
そのまま祈りを捧げていたクラウディアは、礼拝堂のドアが開いたことにも気づくことなく熱心に祈り続けた。
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