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第五章

41 シモンと乗馬

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「クラウ、今日も行くかい?」


 クロスローズの屋敷を訪ねてきたシモンは外を指差しながら、ニコッと微笑むのだがその笑顔が意味するものは一つだった。そもそもシモンの服装が乗馬服なのだから感が鈍くてもわかるだろう。


「はい、もちろん。準備してくるから、お兄様、外で待ってて」


 そう言って部屋を出て行くクラウディアの後ろ姿を見つめるシモンは、笑顔を浮かべて彼女が消えた扉を見つめていた。


 ―――クラウは元気だなぁ


 そう考えながら厩舎へと向かった。
 クラウディアが乗馬を習い始めてもう一年になるが、練習を相当しているのか今ではそのレベルは中級まで到達していた。この調子ならゆっくり学んでも学園へ入学する前には上級になるだろうと考え、馬を駆ける彼女の姿を思い浮かべた。


 ―――彼女が馬を操る姿も様になるだろうな


 そんなことを考えていると、クラウディアが乗馬服に着替えて駆けてくるのが見える。急いで来て転ばないかつい心配になって手を差し出したくなるが、そんな風に過保護なことは彼女は良しとしない性格だ。


「お兄様、お待たせしました」

「走ると危ないよ。ゆっくりでいいから気を付けて」


 シモンは注意を促しながら笑顔を浮かべて、クラウディアが一生懸命駆けてくる姿を見ていた。可愛いクラウディアが自分に向かってくる姿は何事にも代えられないほどの喜びを感じ、それこそ可愛い妹を見守る兄だ。


「クラウ、今日は私と一緒に乗るかい?」


 いつもはそれぞれの馬に騎乗するのだが、この日は一緒に乗るのもいいかと思ってクラウディアを抱き上げてそう聞いたのだが、シモンの心の中では可愛いクラウディアを甘やかせたい気持ちもあった。


「お兄様と?」

「そうだよ。お姫様、一緒に乗っていただけますか?」


 クラウディアはニコッと笑って頷いた。







「それじゃあ、少し遠くまで行ってみるかい?」


 クラウディアはちょこんと抱えられるようにシモンの前に座り、最初はゆっくり、そしてどんどんとスピードを上げて、昔、家族と行った湖を遠くに望む高台へと馬を走らせた。
 その街道はきれいに整備されていて、ゆっくりであればクラウディアでも来ることができるような場所だったので、様子見も兼ねての遠乗りだ。


「クラウ、大丈夫?」

「はい!」


 シモンの顔を見上げてニコッと笑うが、クラウディアはこんなに長い時間二人で馬に乗ることは初めてで、しかもシモンの動きもとても丁寧だ。


「わぁ~きれい」

「まだ他にも一緒に行きたいところはあるんだけどね、クラウが遠乗りできるようになったら一緒に行こうか?」

「はいっ、早く、お兄様と一緒に遠乗りにいけるようにもっと練習を頑張ります」


 そしてしばらく景色を楽しんだ後、ゆっくりと屋敷への帰路に着いた。
 その間中、色々な話をした。今、何を勉強しているだとか、興味のあることはどんなことだとか、どこへ行きたいかなど、部屋にいる時とは違って、外の新鮮な空気と広大な自然はいつもよりものびのびと話が出来た。

 クラウディアもまた、こういう時間の過ごし方も楽しいと思いながら、シモンと密着している時間が長いことで緊張していたことを本人に知られないかドキドキしていた。



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