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第二章

26 クラウディアの一日

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 セグリーヴ侯爵家で過ごし始めたクラウディアは、眠りにつく前にゆっくりと考える時間を作るようにしていた。
 ジルベルトからの説明で自分のできることをやろうと決めたものの、少し焦りがあった。自分にできるのだろうかと。
 魔力は少ないと自覚できるが、その事は心配する必要はないと言われた事も少し気がかりだったが、『クロスローズの令嬢は病弱で国外で療養中』という噂が広まっていることも、心に引っかかっていた。

 しかしゆっくりと勉強できるのだから、やるしかないのだと拳を空に掲げた。


 そして毎日、朝早くからカイラードから剣の基礎を習うことになったが、クラウディアは前回の生でクロスローズの一族ということもあり剣を一通りは習っていた。
 記憶にはないがどうやら意識下のどこかにその記憶があるらしく、剣を扱う際の基礎や対戦形式の練習もある程度こなせているようだ。
 しかし、それはあくまでも基礎なのでそれらを基に体力増強しながら多方面からアプローチを始めることにした。

 そしてカイラードからは毎回「体力を付けるのが先だなー。毎日、走ろうか」と言われていた。


 食後にはジルベルトとクインから魔法と魔術を習うことに時間を費やし、お昼前に図書室で少し時間をつぶしてお昼を食べ、その後はロレナからマナーや貴族の一般教養を習い、日によってダンスの練習や楽器の練習もあったりと、分刻みと言っていいような日々を送っていた。

 クラウディアは、大変だけど充実した時間で、習えば習うほどもっと違う新しいことを学びたくなるという不思議なループにはまっていた。


 午前も午後も好きなことをしてもいいと休憩を兼ねての空き時間も作ってあったが、その時間の大半は図書室で過ごすことが多かった。

 セグリーヴ侯爵家の図書室は広い吹き抜けの空間を中心に壁一面に本棚が並び、その重厚さはクロスローズの屋敷に似ていると感じるところがあった。
 そしてエストレージャ王国では見たことのない本も多々あり夢のような空間でもあった。
 一度目の記憶のおかげか、言語に関しても不自由なく使えることが本当に助かったと思いながらクラウディアは興味のある項目が書いてあるだろうという本を手に取り机の上に並べ、どれから読み始めようかと思案していた。 


・魔術の属性と特徴
・魔術陣の展開と種類
・光属性の拡大解釈と可能性
・複数属性の合成と可能性


(この辺りは実践も必要かな?叔父様は私は無属性で全てに適応することができるって言ってたから、複数属性の合成は試せそうかな。まぁ、光属性以外は平均値以下みたいだけど、それもこれからどうなるかわからないし、付与するのであればそれでもいけるはずよね。まあ、それも魔力の制御ができるようにならないと無理だろうけど。お兄様なら、剣に付与することもできるかしら?それも試してみたいな)


 考えれば考えるほど、やりたいことが次々と浮かんできてきりがない。
 本を一冊手に取り何と無しに開く。
『稀有な魔法全集』と表紙に書かれている本は、回復魔法や収納魔法など、めずらしい魔法や魔術が書かれているものだった。


(薬も劇的に効くようなものもないし、怪我で死んでしまうこともよくあるんだよね。我が家の浄化の力をどうにかして治癒に転成できないかな?超回復まで行かなくてもいいから、命を落とすことがないくらいの回復でいいのだけど、いい方法はないかな?)

 そう思いながら、読み始めた。

(そう……まず、できることからね。)


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