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第一章

16 叔父と甥

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 それから数日後ベイリーはカルロスと相談し、クラウディアを国外にいるクロスローズの血族の屋敷での療養を決めた。

 それはカルロスの弟でもありベイリーの叔父にあたる人物で、今は隣国のエアストン国で侯爵位を賜っている人物だ。

 クロスローズの血を引いているだけあり浄化の力に秀で、エアストン国に旅行していた際にその国の王族を助けたことで伯爵位を賜り、その後の功績で今では侯爵の地位を得ていた。



 その人物。
 ジルベルト・フォン・セグリーヴは、カルロスとはだいぶん年が離れていることもあり、ベイリーの兄と言ってもいいほどの年齢だ。
 だが多岐にわたる実力を持つカルロスと比べると、浄化に関しては彼に負けないほどの実力を持っていた。
 

 今回もその力を見込み、クラウディアの浄化の助力を願うための療養先として選び、すぐ連絡を入れた所、セグリーヴ侯爵自らクロスローズの屋敷へやってきた。
 

「ベイリー。久しぶりだな」


 ジルベルト・フォン・セグリーヴもまた金の髪に瑠璃の瞳というクロスローズの特徴を受け継いでいて、ベイリーよりも精悍な体つきをしているようだった。


「叔父上、お久しぶりです。今日はお時間を取っていただき……」
 
「そんな挨拶はなしだ。早く会わせてくれるか?」


 ジルベルトには前もって詳細を伝えてあるので、早々にクラウディアとの対面をさせるために彼女の部屋へと案内した。本来なら、多国間との転移には多少問題があるとされているが、クロスローズ家とセグリーヴ家に関しては親戚ということから特別に許可が出ていた。

 そしてここ数日の様子などを話しながら二人でクラウディアの部屋へと向かう。


 部屋の扉を開けると、グレースが側の椅子に腰かけながらクラウディアの様子を不安げな表情を浮かべ見つめていた。涙を流してはいないものの、その目は赤く潤んでいる。


「グレース。叔父上がいらっしゃった」

「ジルベルト様、お久しぶりです」


 グレースはスッと立ち上がり一礼をした。
 ジルベルトの屋敷で療養する事になったと聞いてはいたが、ジルベルト自身が来たということは、クラウディアをエアストン国の彼の屋敷へと連れていく日だということだと気が付き、グレースは思わず唇を噛んだ。

 
「グレースに似ているな」


 ジルベルトはベッドに横になっているクラウディアの顔を見て、そう呟いた。


「叔父上……、よろしくお願いします」

「ああ。言われなくても可愛い又姪だ。責任をもって預かる」


 そう言うと、持ってきた石の付いたペンダントをクラウディアの首にかけ、彼女を抱き上げた。


「来たばかりだが、すぐに戻る。この状態なら何もかも早いことに越したことはない」


 ジルベルトはクラウディアの顔をみて表情を硬くした。
 それを目にしたベイリーは、背中に冷たいものを感じたが、すぐに転移陣を準備させるように言伝をして部屋を出た。


「ベイリー、グレース。私に任せなさい」


 そう一言い残し、転移陣をくぐりその姿は消えた。
 
 
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