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35 マクシミリアン side
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店の二階でリディから話を聞いていたが、彼女が少し興奮し始めたので場所を変えることにした。とりあえず屋敷に戻って、改めて話をしようと告げた。
その屋敷に戻るまでの馬車の中でも彼女は窓の外を見たまま一切俺の顔を見ない。心配になり真横に座って彼女を捕まえるように腰に手を回す。
こんな風に女性の横で手を回しているとは自分でも信じられない。
だが、こうでもしないとリディがどこかへ行ってしまいそうな気がした。
屋敷に戻り、そのまま自分の執務室の横にある休憩するための部屋へと連れて行った。
友人達もよく呼んで話をしながらお酒を嗜んだりする部屋として使っているが、リディが入るのは初めてだ。
気持ちを少しでも楽にさせようと、テーブルの上にワインやウイスキーを並べ、彼女に何を飲むかと聞くと俺が手にしていたブランデーを飲むと言った。
ブランデーの芳醇な香りでまた落ち着くだろうかとグラスに注ぎ、彼女に手渡す。
こくんと彼女の喉をブランデーが流れる。その光景を、俺はもしかすると初めて見たのかもしれない。若干伏せられた瞳が嫌になまめかしく、心臓が弾む。
そしてリディは色々なことを話し始めた。
孤児院の慰問に行っていることで「みんな自分の兄弟姉妹、そして子供のような存在なのよ。可愛い子たちなの」と、そこにいる子供の事を愛しむような表情を浮かべてそう言った。
そして、アルコールが進むたびに饒舌になっていくリディは、レ・グラン以外の事も話し始めた。
ラ・シュエットがイザベラ嬢と共同経営をしているというのだ。
ラ・シュエットは、この一年で急成長したドレスのレンタルやリメイクを行う店で、学園や商家、下級貴族に人気の店だ。最近では庶民界隈にも店を出して手広く商売をしていると評判の店だが、まさかリディも経営に参加しているとは思わなかった。
そう、今の今まで気が付かなかった。
その屋敷に戻るまでの馬車の中でも彼女は窓の外を見たまま一切俺の顔を見ない。心配になり真横に座って彼女を捕まえるように腰に手を回す。
こんな風に女性の横で手を回しているとは自分でも信じられない。
だが、こうでもしないとリディがどこかへ行ってしまいそうな気がした。
屋敷に戻り、そのまま自分の執務室の横にある休憩するための部屋へと連れて行った。
友人達もよく呼んで話をしながらお酒を嗜んだりする部屋として使っているが、リディが入るのは初めてだ。
気持ちを少しでも楽にさせようと、テーブルの上にワインやウイスキーを並べ、彼女に何を飲むかと聞くと俺が手にしていたブランデーを飲むと言った。
ブランデーの芳醇な香りでまた落ち着くだろうかとグラスに注ぎ、彼女に手渡す。
こくんと彼女の喉をブランデーが流れる。その光景を、俺はもしかすると初めて見たのかもしれない。若干伏せられた瞳が嫌になまめかしく、心臓が弾む。
そしてリディは色々なことを話し始めた。
孤児院の慰問に行っていることで「みんな自分の兄弟姉妹、そして子供のような存在なのよ。可愛い子たちなの」と、そこにいる子供の事を愛しむような表情を浮かべてそう言った。
そして、アルコールが進むたびに饒舌になっていくリディは、レ・グラン以外の事も話し始めた。
ラ・シュエットがイザベラ嬢と共同経営をしているというのだ。
ラ・シュエットは、この一年で急成長したドレスのレンタルやリメイクを行う店で、学園や商家、下級貴族に人気の店だ。最近では庶民界隈にも店を出して手広く商売をしていると評判の店だが、まさかリディも経営に参加しているとは思わなかった。
そう、今の今まで気が付かなかった。
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