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 屋敷に到着し、部屋まで送ってくれるマックスだったが、何か言いたそうな顔をしているのにはっきりとしない。

 でも、怒っているわけでもなさそうなので、そのままスルーしておいた。もし言い合いになったところで、今日はもうその気力がない。


「もういいですよ。ここには誰もいないから取り繕わなくても」


 マックスから手を離して部屋へ一人で戻ろうとした。すると彼は突然私の手を取り、自身に引き寄せるようにして気が付くと彼の腕の中にすっぽりと捉えられているような形になっていた。


「ちょっと……マックス。何を…」


 抗議をしようと彼の顔を見上げると、彼は「綺麗だ」と言って私に口付けをしたのだ。それも触れるだけではない、濃いやつを。



「ん……ふざけないで!」


 彼を突き飛ばすように腕から逃れ部屋へと逃げ帰ったが、周囲に誰もいなかったことが幸いだった。メイドにでも聞かれようものなら、義両親の耳に入ってしまう。

 溜息をついて、ソファーに座り込んだ。

 マーサがやってきて、早い帰宅で何があったのか聞かれたが、それこそ自分でもわからない。今日は今までなかったことばかりがあって、理解しきれない。


「マーサ。今日はもう休みたいの」


 そう告げると、私の顔色をみてさっさと湯を張り、ドレスを脱がせ湯あみを終わらせ夜着を着せられてあっという間にベッドの中だ。
 しかし、疲れた身体が休みたいと訴えているにもかかわらず、今日のマックスのいつもと違う様子に不安を感じた。不安というか、疑問というか、なんとも言い表せない気持ちだ。


「綺麗だ」とか「美しい」とか、今までに一度も聞いたことがないし、ダンスも三曲も踊るなんて今までになかったことだ。ましてや、同意なしに口付けなどもってのほかだ。あれは私の初めての……



 あぁぁぁぁぁ!もう!なんなのよ!


 なんだか、眠れそうにないな……
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