22 / 41
21
しおりを挟む
屋敷に到着し、部屋まで送ってくれるマックスだったが、何か言いたそうな顔をしているのにはっきりとしない。
でも、怒っているわけでもなさそうなので、そのままスルーしておいた。もし言い合いになったところで、今日はもうその気力がない。
「もういいですよ。ここには誰もいないから取り繕わなくても」
マックスから手を離して部屋へ一人で戻ろうとした。すると彼は突然私の手を取り、自身に引き寄せるようにして気が付くと彼の腕の中にすっぽりと捉えられているような形になっていた。
「ちょっと……マックス。何を…」
抗議をしようと彼の顔を見上げると、彼は「綺麗だ」と言って私に口付けをしたのだ。それも触れるだけではない、濃いやつを。
「ん……ふざけないで!」
彼を突き飛ばすように腕から逃れ部屋へと逃げ帰ったが、周囲に誰もいなかったことが幸いだった。メイドにでも聞かれようものなら、義両親の耳に入ってしまう。
溜息をついて、ソファーに座り込んだ。
マーサがやってきて、早い帰宅で何があったのか聞かれたが、それこそ自分でもわからない。今日は今までなかったことばかりがあって、理解しきれない。
「マーサ。今日はもう休みたいの」
そう告げると、私の顔色をみてさっさと湯を張り、ドレスを脱がせ湯あみを終わらせ夜着を着せられてあっという間にベッドの中だ。
しかし、疲れた身体が休みたいと訴えているにもかかわらず、今日のマックスのいつもと違う様子に不安を感じた。不安というか、疑問というか、なんとも言い表せない気持ちだ。
「綺麗だ」とか「美しい」とか、今までに一度も聞いたことがないし、ダンスも三曲も踊るなんて今までになかったことだ。ましてや、同意なしに口付けなどもってのほかだ。あれは私の初めての……
あぁぁぁぁぁ!もう!なんなのよ!
なんだか、眠れそうにないな……
でも、怒っているわけでもなさそうなので、そのままスルーしておいた。もし言い合いになったところで、今日はもうその気力がない。
「もういいですよ。ここには誰もいないから取り繕わなくても」
マックスから手を離して部屋へ一人で戻ろうとした。すると彼は突然私の手を取り、自身に引き寄せるようにして気が付くと彼の腕の中にすっぽりと捉えられているような形になっていた。
「ちょっと……マックス。何を…」
抗議をしようと彼の顔を見上げると、彼は「綺麗だ」と言って私に口付けをしたのだ。それも触れるだけではない、濃いやつを。
「ん……ふざけないで!」
彼を突き飛ばすように腕から逃れ部屋へと逃げ帰ったが、周囲に誰もいなかったことが幸いだった。メイドにでも聞かれようものなら、義両親の耳に入ってしまう。
溜息をついて、ソファーに座り込んだ。
マーサがやってきて、早い帰宅で何があったのか聞かれたが、それこそ自分でもわからない。今日は今までなかったことばかりがあって、理解しきれない。
「マーサ。今日はもう休みたいの」
そう告げると、私の顔色をみてさっさと湯を張り、ドレスを脱がせ湯あみを終わらせ夜着を着せられてあっという間にベッドの中だ。
しかし、疲れた身体が休みたいと訴えているにもかかわらず、今日のマックスのいつもと違う様子に不安を感じた。不安というか、疑問というか、なんとも言い表せない気持ちだ。
「綺麗だ」とか「美しい」とか、今までに一度も聞いたことがないし、ダンスも三曲も踊るなんて今までになかったことだ。ましてや、同意なしに口付けなどもってのほかだ。あれは私の初めての……
あぁぁぁぁぁ!もう!なんなのよ!
なんだか、眠れそうにないな……
315
お気に入りに追加
1,466
あなたにおすすめの小説

報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?
小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。
しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。
突然の失恋に、落ち込むペルラ。
そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。
「俺は、放っておけないから来たのです」
初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて――
ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない
天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。
だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません
Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。
家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに
“お飾りの妻が必要だ”
という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。
ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。
そんなミルフィの嫁ぎ先は、
社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。
……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。
更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない!
そんな覚悟で嫁いだのに、
旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───……
一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。
だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと──
公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、
幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。
二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。
しかし、リリーベル十歳の誕生日。
嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、
リリーベルを取り巻く環境は一変する。
リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。
そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。
唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。
そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう……
そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は───
※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』
こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。
めちゃくちゃチートを発揮しています……

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
水川サキ
恋愛
「僕には他に愛する人がいるんだ。だから、君を愛することはできない」
伯爵令嬢アリアは政略結婚で結ばれた侯爵に1年だけでいいから妻のふりをしてほしいと頼まれる。
そのあいだ、何でも好きなものを与えてくれるし、いくらでも贅沢していいと言う。
アリアは喜んでその条件を受け入れる。
たった1年だけど、美味しいものを食べて素敵なドレスや宝石を身につけて、いっぱい楽しいことしちゃおっ!
などと気楽に考えていたのに、なぜか侯爵さまが夜の生活を求めてきて……。
いやいや、あなた私のこと好きじゃないですよね?
ふりですよね? ふり!!
なぜか侯爵さまが離してくれません。
※設定ゆるゆるご都合主義
私のお金が欲しい伯爵様は離婚してくれません
みみぢあん
恋愛
祖父の葬儀から帰ったアデルは、それまで優しかった夫のピエールに、愛人と暮らすから伯爵夫人の部屋を出ろと命令される。 急に変わった夫の裏切りに激怒したアデルは『離婚してあげる』と夫に言うが… 夫は裕福な祖父の遺産相続人となったアデルとは離婚しないと言いはなつ。
実家へ連れ帰ろうと護衛騎士のクロヴィスがアデルをむかえに来るが… 帰る途中で襲撃され、2人は命の危険にさらされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる