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 馬車を降りた後は、彼のエスコートで会場へと入場したのだが、なんだか周囲の視線が痛い。
 いつも着ないようなドレスを着ているからだろうか。

 いつもの通りマックスと一曲だけ踊り、いつも通りイザベラの元へと向かおうと考えていたのだけれど、この日はどういうわけかマックスが二曲目も三曲目も踊ると言い出した。

 いつもと違うその様子に驚きながら、仲の良い夫婦を演じるために笑みを浮かべた。


「今日はどうしたのですか?こんなに三曲も踊るだなんて」

「いや……周囲を見てみるといい。令息達が君に注目している」

「え?そんなことないでしょ。今までもそんな……」


 周囲を見ると、あの痛い視線の正体はこれだったのかと思うほど、こちらを見ている人達がいる。もちろん令嬢の視線も含まれるが、正直、こんなに注目を浴びることなどしていない。


「ああ、あなたと三曲も踊ったからの令嬢達の視線ですわね」

「……いや、それとは違うのだが」

「なんですか?他に理由が?」

「それは、リディが美しいからだ」

「……は?何、世迷言を言ってるのですか?」

「いや……本当だ。今日の君はとても素敵だ。本当に美しい」

「お世辞は結構です。私、踊ったら帰りますわ。もうアピールもよろしいでしょう?」

「君が帰るなら、私も帰ろう」


 もう、いつもと違うマックスに調子が狂う。結局、イザベラとも話すこともできず、王族の方々に挨拶をしてから帰宅した。


 なぜかマックスも一緒に。


 家に帰る頃には精神的にもくたびれてしまい、もう早く眠りたいと身体も悲鳴を上げ始めた。やはり明日はレ・グランでケーキだわ。
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