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「リディア、今日はどこへ行っていたんだ?」

「マクシミリアン様?私のすることには干渉されない契約でしたわよね」


 そういうと、彼は顔でもない顔をしてこちらを見ている。
 別に悪いことをしているわけではないし、元からの契約内容に反していないのだからそんなことを聞かれる筋合いはない。


「干渉しているのではない。せっかく義母上からお茶に誘われていたのに途中で退席することに対して申し訳ないと思わないのか?」

 
 えぇ、えぇ、あなたが大切なのはお義母さまだものね。私のことは放っておいて欲しいわ。


「私はマクシミリアン様が帰ってこられるまでお義母様とは十分話をしましたわ。それに、マクシミリアン様は私がいない方がよろしいでしょう?」


 彼にそう言ったときの表情を見て、私が何を言いたいのか理解したようで、顔を青くしている。気付かないと思っていたのか?


「それは……」

「よろしいですか?私はマクシミリアン様が誰にお心をお寄せになっていようと、そもそも気にしておりません。契約結婚ですものね。でも、そのお気持ちを人に知られないよう気を付けていただきたいですわ。あなたではなく、そのにご迷惑が掛かりますわよ」



「私は今まで通り、好きに過ごさせてもらえれば、別にかまいません。最初からのお約束ですし対価もいただいておりますから」


 そう言い終わると、席を立って部屋へ戻ろうとしたが、焦った彼が私を引き留めた。


「いや、リディ、待ってくれ…」

「もうお話することはないと思いますが。では失礼します。マクシミリアン様」


 振り返ることなく食堂を出て部屋へと戻る時に、事情を知らない公爵家の侍女がなんだか気になるような顔をしているから、念のためにフォローをしておいた。仲睦まじい夫婦を演じなくてはならないのだし、これも契約に含まれるだろう。ああ、面倒くさい。


「はぁ、旦那様は私が帰るのが遅いと心配しすぎで困るわ。友人から夫婦円満な秘訣を教えて欲しいと頼まれたものだから、つい長居をして話し込んでいたのに。でも、そう心配されるのって嬉しいわね」


 ……これくらいでいいだろう。侍女の顔にも笑顔が戻り、喧嘩ではなかったのだと理解できたようだ。いつの日か全てがばれたときは謝るしかないので、今のうちに謝っておこう。心の中で……


『騙してごめんね……』
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