上 下
11 / 41

10

しおりを挟む
 でも、義母はマックスの気持ちには一切気が付いていない様子だ。

 まあ、義父一筋だから恋愛感情というよりかは愛しい人の息子への愛情か……。侍女たちも後方に控えているため気がついていないみたいよね。 

 でも、その気持ちに気付いたからといって、今は親子なのだから仲を取り持つ訳にはいかない。どうしたものかと思って二人を見ていると、マックスが私の姿に気がついた。そして、私の浮かべる表情に何かを感じたのか、一瞬表情を固くし視線をそらす。


「お義母様、約束があることを思い出しましたの。マクシミリアン様がいらっしゃったことですし、久しぶりに親子の時間を過ごされてはいかがですか?」


 そう言って、マックスを残してサロンを後にし、簡単に準備を整えて街へ出た。




 イザベラの店に寄り、前に話をしていた作業場の運営の状況を聞いてから簡素な服に着替えた。
 カフェに顔を出すのだが、流石にドレスだと目立ちすぎる。

 イザベラの店に置いてある私用の服はこういうとき用に着替えるのに便利だ。


 カフェに着くと、この日は近くでなにかの集まりがあったからか持ち帰りの販売が多かったらしく、ケータリングも視野に入れてみようかと考えた。
 貴族は面倒なので商家狙いで、お菓子と飲み物のセットで売り込めば…。ついでに一緒に使うカトラリーなども勧めると最高かも。そんなことを考えつつ、従業員の控室から店内の様子をうかがった。


「オーナー、今日はどうしたんですか?来るのは明日のはずじゃ」

「そうなんだけどね」

「旦那さんと喧嘩ですか?」

「それはない。喧嘩するような仲じゃないもの」

「夫婦なのに?」

「うちは、利害関係で結ばれた夫婦なのよ」


 そうなんだと店長が納得したような返事をしたので、今までそんな話をしなかったなと思い返した。まあ、貴族の結婚なんてみんなそんなものよね。恋愛結婚なんて夢のまた夢だし、そもそも結婚なんて面倒この上ないわ。



 店内の様子を見ながら、なんだかもどかしい気持ちになる。もっと堂々と見たいし話も聞きたい。そこで、店長にちょっと頼みごとをしてみた。


「オーナー本気ですか?」

「もちろん。今日は無理だけど、次に来るときはお願いね」

「はあ…わかりましたよ。でもくれぐれも気を付けてくださいね」

「もちろんよ」


 私は店長にある頼みごとをして、それを実行するために何をするべきかを考えた。まあ、その事を一番叶えてくれるのはイザベラだろう。今日の帰りに話を付けようと考えた。

 そして店を出てイザベラの店でまた着替え、お願いごとの準備を頼んだ。内容を話すと「面白そうね」と意気揚々と準備を受け入れてくれたので、安心して任せることにした。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ニートシルキー ~僕とステラの不思議な生活~

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:269pt お気に入り:385

婚約者を忘れた王太子はちゃらんぽらんを止める?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:40

ヒーローには日向が似合う

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:249pt お気に入り:4

婚約破棄でかまいません!だから私に自由を下さい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:291pt お気に入り:3,344

最後の思い出に、魅了魔法をかけました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:64

一番になれなかった身代わり王女が見つけた幸せ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:525pt お気に入り:7,614

処理中です...