【完結】令嬢憧れの騎士様に結婚を申し込まれました。でも利害一致の契約です。

稲垣桜

文字の大きさ
上 下
10 / 41

しおりを挟む
 夜になり、マックスが帰ってきたので、「お義父様たちが戻られるそうよ」と話したところ、何時もあまり変わらない表情が珍しく、パッと明るくなったような気がした。

 私も表情に出ていたのだろう、すぐに取り繕うが「そうか」と言って目をそらす。

 その言葉と表情に直感で何かを感じた私は、さりげなく「どうしたの?気になることでもあった?」と声をかけた。すると「いや、リオがいないとなんか物足りなくてな」などと言ったのだ。


(絶対に嘘だな。何か隠してる??)


 結局、私の抱いたその違和感はぬぐえないまま終わったけれど、まさか数日後に私の直感が大当たりするとは思わなかった。




 二日後、領地から戻られた義両親を出迎え、馬車に揺られ疲れた様子だったことから「今日はゆっくりとお休みください。向こうでのお話は明日にでもゆっくり聞かせてくださいね」と告げて部屋を後にした。
 リオ君はもう眠ってしまっていたので部屋へと連れて行き(寝顔が天使だわ)義両親もそのまま部屋へと入られたのを確認し、私も離れへと戻った。


 そして次の日の昼過ぎに、義母から本館のテラスでお茶をしようとお誘いがあった。



「お義母様、お疲れはもう取れましたか?」

「もう通常通りよ。旦那様が休みながらの方が楽だって気を使ってくれていたから、一晩眠ったらもうすっかり」

「お義母様達は本当に仲がよろしいですね。見ている私も照れてしまいますわ」

「まあリディ。あなたも新婚でしょう?マックスも旦那様に似ているから、愛情表現は豊かでしょう?」

「マクシミリアン様が……ですか?」

「違うの?」


 義母の言うマックスとは他の人間ではなかろうか……
 あの無表情、無関心のマックスが、愛情表現豊か??そんなことはない。しかし、義姉の友人だった義母がそう言うからには、あの表情は作り物なのだろうか……


「マクシミリアン様は、あまり表情にはお出しになりません。お言葉もあまり……」

「そうなの?あの子、照れてるのかしらね。リディは可愛いから」


 義母の口からあり得ない言葉が出た、可愛いって何?これほど私に似つかわしくない言葉を聞くとは。


「お義母様。可愛いだなんて御冗談を言わないでください」

「冗談じゃないわ。あなたに似合うドレスを仕立てて、あなたに合った化粧と髪型をしないからよ。あなたは間違いなく原石よ。宝石の原石」


 そう断言した義母は「マックスに任せていられないわね」と次回の王宮で行われる舞踏会のドレスを私が手配するからと宣言し、嬉しそうに御用達のデザイナーに連絡を入れるように伝えている。

 そのまましばらくドレス談義をしているとマックスが帰宅したようで、義母が「ここへ呼んでくださる」と侍女に伝えている。マックスが来るなら丁度切り上げるタイミングかな。

 私は彼が来る前に席を離れ、お花摘みに行くために席を外した。
 戻ってくると、テラスの方から楽しそうな笑い声が耳に届き、それがマックスと義母の声だとわかるが、こんな彼の笑い声を聞いたのはもしかすると初めてかも。


 そして目に入った二人の姿は、誰が見ても恋人同士か夫婦にしか見えない。遠目にも、マックスが熱のこもった瞳で義母を見つめていて、その頬は少し赤い…かな?

 その光景を目にした瞬間、私の中で欠けていたパズルのピースがカチッと音を立ててはまった。


(マックスってお義母様の事が好きなのか。だから私に契約をもちかけたのね……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

処理中です...