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夜になり、マックスが帰ってきたので、「お義父様たちが戻られるそうよ」と話したところ、何時もあまり変わらない表情が珍しく、パッと明るくなったような気がした。
私も表情に出ていたのだろう、すぐに取り繕うが「そうか」と言って目をそらす。
その言葉と表情に直感で何かを感じた私は、さりげなく「どうしたの?気になることでもあった?」と声をかけた。すると「いや、リオがいないとなんか物足りなくてな」などと言ったのだ。
(絶対に嘘だな。何か隠してる??)
結局、私の抱いたその違和感はぬぐえないまま終わったけれど、まさか数日後に私の直感が大当たりするとは思わなかった。
二日後、領地から戻られた義両親を出迎え、馬車に揺られ疲れた様子だったことから「今日はゆっくりとお休みください。向こうでのお話は明日にでもゆっくり聞かせてくださいね」と告げて部屋を後にした。
リオ君はもう眠ってしまっていたので部屋へと連れて行き(寝顔が天使だわ)義両親もそのまま部屋へと入られたのを確認し、私も離れへと戻った。
そして次の日の昼過ぎに、義母から本館のテラスでお茶をしようとお誘いがあった。
「お義母様、お疲れはもう取れましたか?」
「もう通常通りよ。旦那様が休みながらの方が楽だって気を使ってくれていたから、一晩眠ったらもうすっかり」
「お義母様達は本当に仲がよろしいですね。見ている私も照れてしまいますわ」
「まあリディ。あなたも新婚でしょう?マックスも旦那様に似ているから、愛情表現は豊かでしょう?」
「マクシミリアン様が……ですか?」
「違うの?」
義母の言うマックスとは他の人間ではなかろうか……
あの無表情、無関心のマックスが、愛情表現豊か??そんなことはない。しかし、義姉の友人だった義母がそう言うからには、あの表情は作り物なのだろうか……
「マクシミリアン様は、あまり表情にはお出しになりません。お言葉もあまり……」
「そうなの?あの子、照れてるのかしらね。リディは可愛いから」
義母の口からあり得ない言葉が出た、可愛いって何?これほど私に似つかわしくない言葉を聞くとは。
「お義母様。可愛いだなんて御冗談を言わないでください」
「冗談じゃないわ。あなたに似合うドレスを仕立てて、あなたに合った化粧と髪型をしないからよ。あなたは間違いなく原石よ。宝石の原石」
そう断言した義母は「マックスに任せていられないわね」と次回の王宮で行われる舞踏会のドレスを私が手配するからと宣言し、嬉しそうに御用達のデザイナーに連絡を入れるように伝えている。
そのまましばらくドレス談義をしているとマックスが帰宅したようで、義母が「ここへ呼んでくださる」と侍女に伝えている。マックスが来るなら丁度切り上げるタイミングかな。
私は彼が来る前に席を離れ、お花摘みに行くために席を外した。
戻ってくると、テラスの方から楽しそうな笑い声が耳に届き、それがマックスと義母の声だとわかるが、こんな彼の笑い声を聞いたのはもしかすると初めてかも。
そして目に入った二人の姿は、誰が見ても恋人同士か夫婦にしか見えない。遠目にも、マックスが熱のこもった瞳で義母を見つめていて、その頬は少し赤い…かな?
その光景を目にした瞬間、私の中で欠けていたパズルのピースがカチッと音を立ててはまった。
(マックスってお義母様の事が好きなのか。だから私に契約をもちかけたのね……)
私も表情に出ていたのだろう、すぐに取り繕うが「そうか」と言って目をそらす。
その言葉と表情に直感で何かを感じた私は、さりげなく「どうしたの?気になることでもあった?」と声をかけた。すると「いや、リオがいないとなんか物足りなくてな」などと言ったのだ。
(絶対に嘘だな。何か隠してる??)
結局、私の抱いたその違和感はぬぐえないまま終わったけれど、まさか数日後に私の直感が大当たりするとは思わなかった。
二日後、領地から戻られた義両親を出迎え、馬車に揺られ疲れた様子だったことから「今日はゆっくりとお休みください。向こうでのお話は明日にでもゆっくり聞かせてくださいね」と告げて部屋を後にした。
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そして次の日の昼過ぎに、義母から本館のテラスでお茶をしようとお誘いがあった。
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「お義母様達は本当に仲がよろしいですね。見ている私も照れてしまいますわ」
「まあリディ。あなたも新婚でしょう?マックスも旦那様に似ているから、愛情表現は豊かでしょう?」
「マクシミリアン様が……ですか?」
「違うの?」
義母の言うマックスとは他の人間ではなかろうか……
あの無表情、無関心のマックスが、愛情表現豊か??そんなことはない。しかし、義姉の友人だった義母がそう言うからには、あの表情は作り物なのだろうか……
「マクシミリアン様は、あまり表情にはお出しになりません。お言葉もあまり……」
「そうなの?あの子、照れてるのかしらね。リディは可愛いから」
義母の口からあり得ない言葉が出た、可愛いって何?これほど私に似つかわしくない言葉を聞くとは。
「お義母様。可愛いだなんて御冗談を言わないでください」
「冗談じゃないわ。あなたに似合うドレスを仕立てて、あなたに合った化粧と髪型をしないからよ。あなたは間違いなく原石よ。宝石の原石」
そう断言した義母は「マックスに任せていられないわね」と次回の王宮で行われる舞踏会のドレスを私が手配するからと宣言し、嬉しそうに御用達のデザイナーに連絡を入れるように伝えている。
そのまましばらくドレス談義をしているとマックスが帰宅したようで、義母が「ここへ呼んでくださる」と侍女に伝えている。マックスが来るなら丁度切り上げるタイミングかな。
私は彼が来る前に席を離れ、お花摘みに行くために席を外した。
戻ってくると、テラスの方から楽しそうな笑い声が耳に届き、それがマックスと義母の声だとわかるが、こんな彼の笑い声を聞いたのはもしかすると初めてかも。
そして目に入った二人の姿は、誰が見ても恋人同士か夫婦にしか見えない。遠目にも、マックスが熱のこもった瞳で義母を見つめていて、その頬は少し赤い…かな?
その光景を目にした瞬間、私の中で欠けていたパズルのピースがカチッと音を立ててはまった。
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