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プロローグ

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「君と取引がしたい」 


 兄のルシアンの上司であるレヴァント公爵家の嫡男マクシミリアンが、私の前に座って開口一番そう告げた。

 レヴァント公爵家のマクシミリアン様と言えば青薔薇の騎士様と呼ばれ、令嬢達からは絶大な人気がある令息だ。公爵家の嫡男で将来有望の上、容姿も最高ランク。まぁ、性格は少し難有りかもしれないけと、そのくらいは我慢してもあまりあるほどの優良物件。
 その優良物件が、ナゼに私のような不良物件に用があるのか、不思議で頭の中ほ疑問マークが飛んでいる。


「取引……ですか?」

「ああ、私と結婚してほしい」


 私の耳がおかしくなったのか、それとも幻聴だろうか……

 ああ、そうだ。揶揄われているんだ。きっとそうだわ。


 私はウェズリーズ伯爵家の長女のリディア。
 今年21歳になるんだけど、18歳で結婚することの多い貴族社会としては相当な行き遅れの部類。いわゆる、不良物件。婚約者がいる人は22歳くらいまでが許容範囲らしいけど、私にはそんな人はいない。そもそも結婚なんてしたくないのだから、放っておいてほしい。

 容姿だって、髪や瞳は貴族社会ではありきたりなストレート金髪と青い目。正直、貴族の半数はこの色味だ。
 マクシミリアン様の青み掛かった黒髪に、深い海を思わせる青の瞳。私の薄い水色とは全然違う。だからこそ、こんな申し出は嘘か嫌な予感しかしない。


「揶揄っていらっしゃるのですか?それであれば、別のご令嬢に声をおかけください」


 なんて最悪な日だと思って席を立とうとすると、「言葉が足りなかった。説明させてくれ」と引き留められた。この人は何が言いたいのだろう。


「結婚をしてほしいのは本当だが、契約結婚だ。ルシアンからあなたも周囲からのうるさい言葉にウンザリしていると聞いた。私も同じでね。それで、お互い干渉はしないということでどうかな?」
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