婚約者に忘れられていた私

稲垣桜

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27 誘い

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「ア、アシュリー、今度、一緒に町へ行かないか?」


 ロドニー様は髪をいじりながら、何やら言いにくそうにそうおっしゃられました。
 私も色々と助けていただいたお礼もしたいことですし、その申し出を快くお受けして、今度の私のお休みに町へ行くことになりましたが、いつも見ることのない、なにか…そう、自信なさげな様子が気になりましたわ。


 ―――なにか悩み事でもお有りなのかしら?


 

 そしてお休みの前の日、カサンドラ様に「明日、町に行くのでしょう?何時に出るのかしら?」と聞かれ、素直にお答えすると「じゃあ、準備しないとね」と、当日になり、他の仲間たちに拉致されるように部屋に連れていかれ、まるで着せ替え人形のように着替えや化粧を施されてしまいました。


「アシュリー、それでロドニーを落としてくるのよ!」



 なぜ決定事項なのでしょう。そもそもロドニー様は私などに興味など抱かれていないでしょうし、困りましたわね。ロドニー様にお会いしたら、しっかりとお話しておいた方がよろしいですわね。





 ◇ ◇ ◇





 町に行ってから、待ち合わせによく使われる時計台の前にある噴水公園へと向かいました。

 でも、この日は同僚の皆様にいつもよりもに仕上げられましたから、目立つのでしょうか、どうも視線を感じるのです。

 この噴水公園には私の他にも待ち合わせをしている方が多いのでしょうか。周囲を気にする方が多いですね。待ち人を探しているのでしょうか。


「アシュリー、一人なのか?」


 待ち合わせの時間までもうすぐというところで、どういうわけか会いたくない方に会うものなのですね。
 

「すみません。待ち合わせをしているのです」

「アシュリー!頼むから話を聞いてくれないか?」

「いえ…お断りしますわ。もう他人なのですから、名前で呼ばないでくださいますか?」

「いいじゃないか。俺と君の仲だろう?」


 その男性……エドウィン様は私の手を取り、強引に連れ出そうとするので、さて、どうしましょうか…と思案しました。一応護身術は習っておりますから、対応はできるのですが…


「待たせたね、アシュリー。おや?タウナー伯爵家のエドウィン殿」

「ベイモント侯爵家のロドニー殿……」

「こんなところで何を?」

「ロドニー殿こそ、アシュリーと何を?」


 二人とも不機嫌な顔を隠しきれていないようですが、間に挟まれた私はとても居心地が悪いので、早く終わらせていただけないかしら?

 



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