私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください

稲垣桜

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 ※途中から視点が変わります。



 ◇ ◇ ◇




 危機的状況では、周りがスローモーションに見えるというのは本当なのね。
 私の目に映っている風景が、ゆっくりゆっくりとコマ送りのように見えている。

 あ…私、落ちてるのね。


「リズ!!!」


 今の声……ルカ…様?


 テラスの木製の柵が壊れていたのか、私はその柵と一緒にテラスの真下にある池に真っ逆さまに落ちた。

 ドボンという音と共に、私の身体は深い水の中へと沈んでいって、水面がどんどんと離れていくのが見えた。



 私…死んじゃうのかな?




 ルカ様と一緒に出掛けたかったな…



 ルカ様にエスコートされて舞踏会にも行きたかったな…



 そういえば、私、ルカ様に何も伝えてない…



 私の気持ち…



 私は…




 揺らめく水面が一瞬陰り、私の視界は真っ暗になった。





 ◇ ◇ ◇





 ルカはエリザベスが二階のテラスにいる姿を見かけて、外階段からテラスに上がろうとしていた。
 リリアンナが休んでいるし、ハッキリと一方的な強迫ともとれる歪な関係の解消を公にしたことで、残り僅かの学園生活をエリザベスと過ごそうと決めていたルカは、この日、エリザベスを探していたのだ。

 伯爵家を訪ねて全てを話し、もう一度エリザベスとの信頼関係を取り戻したいと切に願い、そしてリリアンナとの嘘で飾られた関係をすべて公表して、エリザベスとの仲をやり直そうと考えていた。

 そしてこの日。
 教室へ行くとエリザベスが不在で、どこにいるのかとあちらこちらを探しているうちに、二階のテラスで自分と同じクラスの令嬢達と一緒にいるエリザベスを見つけた。

 彼女達がリリアンナの取り巻きの令嬢達だと気が付いたルカは、エリザベスが何か言われているのだろうとすぐにテラスへと急いだが、次の瞬間、令嬢に押されたエリザベスが、テラスの柵を突き破って真下の池へと落ちていくのを目の当たりにした。


「リズ!!!」


 ルカはエリザベスが池に落ちるのを目の前で見て、全身が凍りつくような不安に支配されたが、すぐに彼女を追うように池へ飛び込んだ。

 池に沈むエリザベスを見失わないよう視界の悪い池の奥に目を凝らし、沈んでいく彼女に手を伸ばした。

 

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