27 / 27
27.
しおりを挟む
視点が変わります。
◇ ◇ ◇
池に飛び込んで沈んでいくエリザベスの手を掴み、ようやく水面へと引き上げた時、池の浅いところに教師の姿も見えた。どうやら見ていた生徒が呼びに行ったようだ。
ルカは腕に抱えたエリザベスを大人に託すことなく岸まで運んだ。
「リズ!!リズ!!目を開けろ!リズ!!」
息のしていないエリザベスを腕に抱き、その恐怖から何をしたらいいのかパニックになっていたルカに、教師が喝を入れた。
「しっかりしろ!水を吐かせて、気道確保だろう!」
「はいっ!」
保険医もやってきて、エリザベスの容態を確認していると、彼女がゴボッと水を吐いた。そしてうっすらと目を開けか細い声で何かを言って、そのまままた目を閉じた。
「リズ!!」
「運ぶぞ!」
「「はい!」」
ルカはエリザベスを抱き上げて、教師の先導で医療室へと向かった。
この学園では剣術の授業もある為、医療の資格のあるものが保険医として勤めていることもあり、近くの病院へ運ぶよりも適切な治療を受けられる。
そのこともあり、彼女を医療室へと運び込んだ。
ルカはエリザベスを抱えながら彼女の身体の冷たいことに、また恐怖を感じて何度もエリザベスに声をかけた。
「リズ、もう着くから」
「リズ、大丈夫か?」
「リズ、しっかり!」
付き添う教師でさえ、こういう状況でなければ微笑ましく思うその姿を視界に入れ、先を急いだ。
「春先とはいえこのままでは体が冷える。服を脱がせて毛布で包むんだ!」
ルカは何も考えず、自分でやるべきだという主張をするように彼女を腕から降ろして、その制服のボタンに手を伸ばすと、後ろから襟を掴まれ後ろに引き倒された。
「なっ…!」
「お前、バカか?令嬢の服を脱がすなどもってのほかだ!婚約者であってもダメだろう!」
そう叱責された瞬間、どこからか現れた看護助手の女性がカーテンをシャッと引いて、エリザベスの世話をし始めた。ルカはそこでようやく自分が何をしようとしたのかに気が付いた。
「…はい」
「しかし、よく助けたな。よくやった」
「先生…リズは…エリザベスは大丈夫ですよね?このまま何てことはないですよね?」
「水を吐いたからな。少し様子を見る必要はあるが、大丈夫だろう。お前は見たんだろう?何があったんだ?」
そこでルカはエリザベスのあの落ちる瞬間を思い出し、目をギュッと閉じた。
あいつらは許すものか!
◇ ◇ ◇
池に飛び込んで沈んでいくエリザベスの手を掴み、ようやく水面へと引き上げた時、池の浅いところに教師の姿も見えた。どうやら見ていた生徒が呼びに行ったようだ。
ルカは腕に抱えたエリザベスを大人に託すことなく岸まで運んだ。
「リズ!!リズ!!目を開けろ!リズ!!」
息のしていないエリザベスを腕に抱き、その恐怖から何をしたらいいのかパニックになっていたルカに、教師が喝を入れた。
「しっかりしろ!水を吐かせて、気道確保だろう!」
「はいっ!」
保険医もやってきて、エリザベスの容態を確認していると、彼女がゴボッと水を吐いた。そしてうっすらと目を開けか細い声で何かを言って、そのまままた目を閉じた。
「リズ!!」
「運ぶぞ!」
「「はい!」」
ルカはエリザベスを抱き上げて、教師の先導で医療室へと向かった。
この学園では剣術の授業もある為、医療の資格のあるものが保険医として勤めていることもあり、近くの病院へ運ぶよりも適切な治療を受けられる。
そのこともあり、彼女を医療室へと運び込んだ。
ルカはエリザベスを抱えながら彼女の身体の冷たいことに、また恐怖を感じて何度もエリザベスに声をかけた。
「リズ、もう着くから」
「リズ、大丈夫か?」
「リズ、しっかり!」
付き添う教師でさえ、こういう状況でなければ微笑ましく思うその姿を視界に入れ、先を急いだ。
「春先とはいえこのままでは体が冷える。服を脱がせて毛布で包むんだ!」
ルカは何も考えず、自分でやるべきだという主張をするように彼女を腕から降ろして、その制服のボタンに手を伸ばすと、後ろから襟を掴まれ後ろに引き倒された。
「なっ…!」
「お前、バカか?令嬢の服を脱がすなどもってのほかだ!婚約者であってもダメだろう!」
そう叱責された瞬間、どこからか現れた看護助手の女性がカーテンをシャッと引いて、エリザベスの世話をし始めた。ルカはそこでようやく自分が何をしようとしたのかに気が付いた。
「…はい」
「しかし、よく助けたな。よくやった」
「先生…リズは…エリザベスは大丈夫ですよね?このまま何てことはないですよね?」
「水を吐いたからな。少し様子を見る必要はあるが、大丈夫だろう。お前は見たんだろう?何があったんだ?」
そこでルカはエリザベスのあの落ちる瞬間を思い出し、目をギュッと閉じた。
あいつらは許すものか!
1,989
お気に入りに追加
3,496
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

【本編完結】記憶をなくしたあなたへ
ブラウン
恋愛
記憶をなくしたあなたへ。
私は誓約書通り、あなたとは会うことはありません。
あなたも誓約書通り私たちを探さないでください。
私には愛し合った記憶があるが、あなたにはないという事実。
もう一度信じることができるのか、愛せるのか。
2人の愛を紡いでいく。
本編は6話完結です。
それ以降は番外編で、カイルやその他の子供たちの状況などを投稿していきます

うーん、別に……
柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」
と、言われても。
「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……
あれ?婚約者、要る?
とりあえず、長編にしてみました。
結末にもやっとされたら、申し訳ありません。
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。
誤字を訂正しました。
現在、番外編を掲載しています。
仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。
後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。
☆☆辺境合宿編をはじめました。
ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。
辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。
☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます!
☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。
よろしくお願いいたします。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※

諦めた令嬢と悩んでばかりの元婚約者
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
愛しい恋人ができた僕は、婚約者アリシアに一方的な婚約破棄を申し出る。
どんな態度をとられても仕方がないと覚悟していた。
だが、アリシアの態度は僕の想像もしていなかったものだった。
短編。全6話。
※女性たちの心情描写はありません。
彼女たちはどう考えてこういう行動をしたんだろう?
と、考えていただくようなお話になっております。
※本作は、私の頭のストレッチ作品第一弾のため感想欄は開けておりません。
(投稿中は。最終話投稿後に開けることを考えております)
※1/14 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。

婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!
月城光稀
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!?
※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり


婚約者は私を愛していると言いますが、別の女のところに足しげく通うので、私は本当の愛を探します
早乙女 純
恋愛
私の婚約者であるアルベルトは、私に愛しているといつも言いますが、私以外の女の元に足しげく通います。そんな男なんて信用出来るはずもないので婚約を破棄して、私は新しいヒトを探します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる