私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください

稲垣桜

文字の大きさ
上 下
22 / 27

22.

しおりを挟む

「お嬢様。旦那様がお呼びです」

「来られたのね」

「はい。先ほど、応接室へとお通しして、お待ちいただいております」


 お昼を回ってから、いつ呼ばれてもいいように準備をしていてよかったわ。


「今行くわ」


 さてと。どんな話になるのかしら。

 応接室で待っていたコゼルス侯爵夫妻は顔色は悪いし、ルカ様も痩せられて、なんだか今にも倒れそうなくらいの顔色だわ。
 大丈夫かしら。


「それで、今日の訪問はどのような用件でしょうか?」


 お父様が目の前に座るコゼルス侯爵様にそう伺うと「今回の事、私どもからもお詫びいたします」と、部屋に入って早々、ルカ様の御両親のコゼルス侯爵夫妻から、深々と頭を下げられながらそうおっしゃられて、少々居心地が悪いわね。


「今回の事とは?我が家の娘に対する失礼な態度の事でしょうか」

「ルカから聞きました。特にこの一年、エリザベス嬢には大変失礼な態度を取っていたこと、理由があったとはいえ、それが独断だったことは、私としても不徳の致すところです。エリザベス嬢はもちろんリンデン伯爵家の皆様に対し、心からの謝意を示したいと思っている。申し訳なかった」

「コゼルス侯爵、あなたは知らなかったのだろう?私がデビュタントの時に送った手紙を読んで、相当慌てていらした。何も知らなかったということでしょう。なにもかもがルカ殿の独断…ということなのでしょう」


 リュベルス殿下やロイド様がおっしゃられたように、ルカ様の独断。
 それだけ私を想っている?それだけ守りたかった?だから何?それで守られた私が嬉しいと喜ぶと思っているの?そんなの自己満足でしかないわよね。


「コゼルス侯爵家としては、どうするおつもりでしょう。考えをお聞かせ願えますか?」

「我が家としては、エリザベス嬢との婚約はそのまま継続とさせていただきたい。ルカの気持ちを汲んでもらえないでしょうか」


 勝手よね。私の気持ちは無視なのかしら。


「……それは少し勝手ではありませんか?」


 その返事を聞いて、横に座るお父様が震える声でポツリと。


「……」

「娘は領地から戻り一年です。学園に入学して一年です。その間、ルカ殿から何の説明もないまま他のご令嬢との仲良い姿を見せつけられた娘の気持ちはどうなるのでしょう。一度きりのデビュタントでも連絡もなく、どんな気持ちだったか考えましたか?娘は人形ではないのです。血の通った心のある人なのですよ!傷つくとは考えなかったのですか!」

「それは…本当に申し訳ない」


 お父様が私の言いたい事をきっちりと言ってくれて、なんだかスッキリ。


「リズ。お前はルカ殿に言いたい事はないのか?」

「言いたい事はお父様がおっしゃったことと変わりませんわ。それに、以前にもはっきりと伝えましたし。そうですわね。コゼルス侯爵令息様?」


 ルカ様は私がそう声を掛けると、ビクッと身体を固くされ、縋るような視線を私に向けていらっしゃいますけど、なんだか、私が虐めている様だわ。


「最後にお聞きしたいのですが、リリアンナ様は高位貴族の嫡男の妻の座を望んでいらっしゃったのでしょう?では学園を卒業したらどうするおつもりだったのですか?そのままご婚約されるおつもりだったとか?」

「それはない!!私はリズだけだ!」


 ではどうするつもりだったのですか。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】記憶をなくしたあなたへ

ブラウン
恋愛
記憶をなくしたあなたへ。 私は誓約書通り、あなたとは会うことはありません。 あなたも誓約書通り私たちを探さないでください。 私には愛し合った記憶があるが、あなたにはないという事実。 もう一度信じることができるのか、愛せるのか。 2人の愛を紡いでいく。 本編は6話完結です。 それ以降は番外編で、カイルやその他の子供たちの状況などを投稿していきます

うーん、別に……

柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」  と、言われても。  「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……  あれ?婚約者、要る?  とりあえず、長編にしてみました。  結末にもやっとされたら、申し訳ありません。  お読みくださっている皆様、ありがとうございます。 誤字を訂正しました。 現在、番外編を掲載しています。 仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。 後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。 ☆☆辺境合宿編をはじめました。  ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。  辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。 ☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます! ☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。  よろしくお願いいたします。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。

夢風 月
恋愛
 カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。  顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。  我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。  そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。 「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」  そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。 「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」 「……好きだからだ」 「……はい?」  いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。 ※タグをよくご確認ください※

諦めた令嬢と悩んでばかりの元婚約者

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
愛しい恋人ができた僕は、婚約者アリシアに一方的な婚約破棄を申し出る。 どんな態度をとられても仕方がないと覚悟していた。 だが、アリシアの態度は僕の想像もしていなかったものだった。 短編。全6話。 ※女性たちの心情描写はありません。 彼女たちはどう考えてこういう行動をしたんだろう? と、考えていただくようなお話になっております。 ※本作は、私の頭のストレッチ作品第一弾のため感想欄は開けておりません。 (投稿中は。最終話投稿後に開けることを考えております) ※1/14 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!

月城光稀
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!? ※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

婚約者は私を愛していると言いますが、別の女のところに足しげく通うので、私は本当の愛を探します

早乙女 純
恋愛
 私の婚約者であるアルベルトは、私に愛しているといつも言いますが、私以外の女の元に足しげく通います。そんな男なんて信用出来るはずもないので婚約を破棄して、私は新しいヒトを探します。

処理中です...