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しおりを挟む「リズ、今日の昼から来客がある。同席してほしい」
「来客…ですか?」
「ああ、コゼルス侯爵夫妻とルカ殿が来られる。お前に話があるそうだ」
お父様が朝食の席でそうおっしゃられて、お母様もお兄様も不満があるような顔をしていらっしゃるわ。
ルカ様が取っていた態度に関して、その理由は家族のみんなが知ることとなっているけれど、うまく立ち回れなかったルカ様に対して非難が集まったのは事実なのよね。でも、親子揃って来るという事は、婚約の解消に向けての話し合いかしら。本当に今更よね。
「リズ、お兄様が一緒にいてやるからな」
「やめてください。自分にことを『お兄様』だなんて、なんだか怖いです」
「そうよヘイデン。あなたがいると話が進まないわ」
「お父様、侯爵様もいらっしゃるのですか?」
「ああ、リズに話をしたいとおっしゃられてな」
確かに伯爵家の我が家が断るなど、さすがに無理ですわね。
侯爵家に対して、そこまで強い態度は出られない。というか、お父様はルカ様に怒っていたのに、その理由を知ってからは少しルカ様よりなのよね。
お母様も少しはルカ様擁護になったけど、まだ私の味方なのよ。お兄様もそうかしら。私を見る目が優しいですし、ルカ様の事を話すときは表情は嫌そうですものね。
「だが、リズ。嫌なら、同席しなくてもいいぞ。私はお前が傷つくのは見たくないからな」
「私もよ。リズ。母として、娘の幸せが全てですわ。リズが同席しないなら、その時はヘイデンを着かせるわ」
「そうだぞリズ。いつでも代わるから、嫌ならいうんだぞ」
お父様もお母様もお兄様も、私の事を考えてくれてるのね。嬉しい。
でも、ここまでくると侯爵様が来られた時に、ちゃんと話をするべきだって思うわね。
何を言われるのかわからないけれど、けじめだと思ってしっかりと対面しないとね。
お昼からという事だから、まだ時間もあるし、のんびりと刺繍をしていようかしら。
お父様の誕生日が来月だから、少し凝ったデザインのハンカチでも贈ろうと思って、この間からデザインを考えて刺し始めたのよね。
もともと刺繍は嫌いではないけど、細かいデザインや凝ったデザインのものはあまり刺すことはしてこなくて、いつも定番のものしか作ってこなかったから、来年のお父様やお兄様の誕生日には、驚くほどの刺繍をして、褒めてもらいたいなって。
昔、ルカ様にも贈ったことがあったわね。
今見ると、目を覆いたくなるくらいの出来だわ。もう捨てているかしら。領地にいる頃は、まさか王都に来てこんな思いをするとは考えもしなかったわね。
でも、図書館で借りた刺繍デザイン集に書かれていた中に、お父様が好きな花のデザインがあって、それも古典的なアレンジをされているものだったから、男の人でも使いやすいかと思ったの。
少し凝っているけど、頑張って仕上げなきゃね。
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