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しおりを挟むそれにしても、掴まれた腕が痛いわ。
袖をまくってみると、若干痣になっているみたい。
溜息を吐いたところに、ヒース様が「エリザベス嬢、おはよう」と声をかけてくださって、慌てて袖を戻したのですが、しっかりと見られていたようです。
「見てたよ。今のコゼルス侯爵家のルカ殿だろ?腕を掴まれてたようだけど、見たところ大丈夫じゃなさそうだね」
ヒース様は私の顔を見て、少し眉を下げられて。もしかして私、ひどい顔をしているのかしら。確かにルカ様に声を掛けられるとは思っていなかったですし、腕を掴まれるとも思わなかったですもの。
でも、結局、どんな用件で私を呼び止められたのかしら?わからないままね。
そのままヒース様には医務室へと連れていかれて、掴まれた手の手当をされたのですが、やはり少し痛みが残ります。どれだけ強い力で掴んだのかしら。
隣で待ってくれているヒース様は、子犬のように垂れた耳と尻尾が見えるような、そんな顔をして私の腕を見ています。明日には治る程度でしょうし、そんな顔で見られると、先ほど同様私が悪いようですわ。
そういえばヒース様はオルダーウッド伯爵家の次男でしたわね。お兄さんは隣国に留学中だと。隣国って興味あるのよ。だって大好きな【アマンダ王国の雪】はその国の作家さんの作品なんだもの。
「エリザベス、君はルカ殿と婚約しているんだろう?」
「ええ、そうですが、まともに4年は会っていませんし…」
「4年?でも、学園に入学してもうすぐ一年だよ?その間も会ってないのか?」
「ええ、会っていません。お忙しくて時間がないそうで、私に会う時間が取れないそうです」
ヒース様は、私がこの一年、同じ学園生なのに会っていないという事の方が驚きのようですね。
まあ、普通そうですわよね。いくら忙しいとはいえ、全く時間が取れないなどという事はないですよね。今日だって、意味が解らないけれど会えましたし。
「ルカ殿のあの噂は事実ってこと?」
「…噂でしたら、もう入学前から耳にしてますけど、恐らくそうだと思います」
私は教室へ戻るために先生にお礼を言って、医務室を後にしました。
ヒース様は難しい顔をしていますが、こればかりは私がどうこうできる事でもないですし。
リリアンナ様は私の名前を聞いても顔色も変えませんでしたし、路傍の石のような扱いでしたわ。公爵家からすると伯爵家など気に留める存在ではないのかしらね。
「エリー、遅かったわね」
「ごめんなさい。色々あってね」
先生が来る前ぎりぎりに教室に戻った私とヒース様にローズマリーが聞いてきたんだけど、その声と共に先生が教室に入ってきたから話はあとすることになりました。
授業中、どうしてルカ様が声を掛けてきたのかと考えたけど、思い当たることが全くないのよね。屋敷にルカ様が訪ねてこられた時に私が不在だったから咎める為なのかしら?それともその時に話すことを言うためとか?でもお兄様はルカ様の事をバカだとか言ってたし…
そんなことを何度も考えているうちに、気が付くとお昼で、いつも通りランチボックスを買って、裏庭の奥にあるガゼボに向かいました。
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