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しおりを挟む私はミッチェル様と別れて、すぐ近くの待ち合わせ場所のカフェへ向かいました。
このカフェ。反対側の大通りに同じ名前で新しいお店ができたことで、昔からあるこちらの店も人気が出たのよね。そしてこちらの方が落ち着くの。
この間、新しいお店に入ったから、今回はこっち。ここのレモンパイが美味しいのよね。
「お待たせ~」
「エリー、良かったぁ。来ないかと思ったんだよ」
ルシアが私の顔を見てほっとしたようにそう言いました。なぜ?もしかして、昨日のルカ様とお兄様のやり取りを見ていたのかしら。
「来るに決まってるじゃない。口がもうレモンパイになってるんだから」
「でも、家を出る時、止められなかった?」
「出る時?いいえ、お兄様にはゆっくり楽しんでこいと送り出されたわよ」
どうやら、私だけが知らないようで、みんな知ってるってこと?これは聞きださなきゃ。
「昨日、先に帰ったから何があったか知らないのよ。聞かせてくれない?」
「私達、少し離れてたからあまりよく聞こえなかったの。でも、ローズマリーは聞いたのよね」
「ふっふっふっ、ぜーんぶ聞いたわよ」
ストロベリーブロンドの髪を後ろにさっと靡かせるように手で払い、聞いて聞いてと言わんばかりの顔をしているから、思わず笑っちゃった。
「昨日ね、私がエリーのお兄さんのヘイデン様に挨拶をしているときにルカ様がいらしたのよ」
「「「ふんふん、それで?」」」
「ルカ様ったら、機嫌悪そうなお顔でヘイデン様に『エリザベスはどこですか』って聞いたの」
「「「ふんふん、それから?」」」
「そうしたらヘイデン様が『おや?君は参加していたのか?妹のエスコートもしないから来ていないのかと思ったよ』って笑いながら言ってたけど、目は笑ってないのよね。つめたぁ~い目をしてたわ」
「そりゃぁそうよね。ヘイデン様はエリーの事、大好きだもの。ルカ様に勝ち目ないわよね」
みんなうんうんと頷きながら、そんなことを言ってる。
まあ、私もお兄様には愛されてるって感じるけど、それがちょっと度を越してるって言うか、なんだか重いって言うか…嫌じゃないのよ。ただ、もう少し普通にしてほしいって言うのかな?
「そしたらルカ様も何も言い返せなくって、気まずーいって顔されてね。ヘイデン様も追い打ちをかけるように『まあ、妹もあなたがいなくても困りませんし』って言ったのよ。ちょっとルカ様が可愛そうって思ったけど、そもそもエスコートしなかったルカ様が悪いのだから、同情できないわよね」
ローズマリー様がその光景を思い出しているのか、少し眉間にしわが…
「それでね、その後に『明日、リンデン伯爵家へお伺いします。その時に改めて話を…』って言ったルカ様の言葉を遮るように、ヘイデン様が『ここで言われても、私は屋敷に戻らないかもしれませんよ』なんておっしゃって。ヘイデン様、よほど頭に来てたのね。でも、その後にあのバカ女に連れていかれてたし、訳が分かんないわよね」
伺うって、やっぱり来るときにすれ違ったのはルカ様の家の馬車だったのね。でも、もうだいぶん時間が経ってるし、さすがにもう帰ってるわよね。
「だから、今日はエリーが来ないかもって思ってたのよ!ルカ様が訪ねてくるだろうから、待ってるのかしらって」
「…それ、初耳なのよ。お兄様も何も言わなかったし」
「そうなの?ヘイデン様は会わせたくなかったのね」
そうよねぇ。お兄様、ルカ様に失礼なこと言ってないかしら。いくら年上とはいえ、我が家は伯爵家。ルカ様は侯爵家なのよ。
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