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しおりを挟む曲が終わり、お兄様の元へと戻りましたが、どういうわけか、リュベルス殿下までもが私にダンスをと申し出られました。これはお兄様の仕業ですわね。
「リュベルス殿下、兄が無理を言ったようで申し訳ございません」
「いや、私がエリザベス嬢と踊りたかったんだ」
また、お世辞がうまいですわ。
王族といい高位貴族の方々は、表情をお作りになるのもうまいですし、そのお言葉も甘いものが多くて、もうお腹いっぱいですわ。一応お礼だけは伝えておいて、この時間が早く終わるように願うだけだわ。
「今日はルカにまだ会ってないのか?」
「ダンスの途中にお見かけはしましたが、直接はまだ…」
「そうか。あそこにいるが、なんか私のことを睨んでいるようだぞ」
「ご冗談を。政略の相手にそのような視線を向けるわけありませんでしょう?」
「政略の相手…ねぇ」
「きっと、私から声をかけないことが気に入らないのでしょう。まあ、かけるつもりもありませんが」
「エリザベス嬢、ルカのことは私から謝らせてもらおう。私の部下でもあるからな」
「どうして殿下が謝られるのですか?」
リュベルス殿下は少し気まずい顔をしましたが、一瞬で仮面をつけられたようでさわやかな笑顔に戻っています。さすがです。見習いたいくらいですわね。
「だが、ルカと話をしていないのだろう?」
「学園に入学する前は、お昼をルカ様とご一緒に…とか、放課後に町へ…とか、楽しみにしてたのですよ。それなのにルカ様は一方的に時間が取れないと私に手紙で告げられ、こちらからお誘いしても断られ、私は歩み寄ろうと努力はしました。でも、もうルカ様も卒業ですし、どうにもなりません。私もこの先の事を少しは考えておりますし」
「それは、ルカを見限るという事か?」
「そうですわね。父も兄も限界の様ですし、私も先のない未来に夢は見ませんし」
「エリザベス嬢。ルカにも事情があるとは考えないのか?」
「たとえ事情があったとして、それは、何も話さなくてもよいという事でしょうか?私が傷ついても構わないと?ないがしろにしても大丈夫だと、そうお思っていらっしゃるのですか?」
リュベルス殿下は冷徹だという噂の通り、人の気持ちは二の次なのかしら?なんだか残念だわ。お兄様の上司で次期国王とはいえ、少し……いえ、言わないでおきましょう。
そしてお兄様のところへと戻りましたら、お父様がいらっしゃいました。どうやらルカ様のご両親のコゼルス侯爵夫妻が、慌てた様子でお父様に謝られたようです。
そうですわよね。この婚約が破談となれば、コゼルス侯爵家の家業にも影響が出ますからね。
「明日にでもルカ殿を謝罪に行かせるとか言っていたが、リズはどうしたい?」
「今更ですね。何年会っていないとお思いですか?もうどうでもいいですわ。どうせ言うことは決まっているのでしょ?連絡が遅れてすまないとか、エスコートするつもりだった…とか、コレはお詫びに…とか言って花の一つでもお持ちになるのでしょう?」
口にすると、なんだかその光景が目に浮かぶようですわね。私の顔もお分かりになるのかしら?
「明日は友人達と街へ行く約束をしていますから、ルカ様が来られても私は不在ですわ。勝手にさせておけばいいのでは?そもそも、謝るつもりがあるのでしたら、いま会場にいらっしゃるのだから声を掛けられるはずでしょう?」
そうです。謝るつもりがあるのなら、今この場でお父様や私に声をかけるべきでは?エスコートできなかったからと、ダンスの申し込みをするくらいの気持ちがあって然りですわよ。
「お父様、そろそろ帰りませんこと?足が痛くて」
新しい靴を履いてのダンス4曲は、少し堪えたようですね。
「そうだな。ヘイデンはまだいるのだろう?私たちは先に帰る。もし、あのバカから接触があったら、お前に任せる。好きにしろ」
「任せてください。まあ、私に声をかける度胸があればですがね」
お兄様は楽しそうにそうお父様に言っていますけど、そうですわね、ルカ様はお兄様のことが苦手でしたわね。口数の少ないルカ様と、反対に多いお兄様。お二人の会話は私とルカ様の時よりも酷いものですし。
まあ、歩み寄りをするかどうかをしっかりと考えなければ、私の未来は真っ暗ですわね。
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