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しおりを挟むそして気が付くと、1年の終わりを告げる舞踏会の話題を耳にするようになりました。
この舞踏会は、学園の卒業性を送り出す三ヶ月前に、その年に成人となった令息令嬢のデビュタントも兼ねた舞踏会が開かれるのです。
デビュタントに関しては、この国では学園の一年生が該当します。
私たちが参加の中心となるのですから、こう話題を耳にすることが多くなるのも頷けますね。卒業生との最後の交流も兼ねてですからね。
そのデビュタントですが、家族か婚約者がエスコートすることになっています。私の場合はルカ様ですが、ルカ様はどうするつもりなのでしょう。まだ休みは先ですから未だに連絡がないのもわかりますが、ドレスを一から準備するとなると、ある程度期限は決まってしまうのですけど。
というより、未だに学園でも声をかけていただいた覚えがないですね。お姿をお見掛けしても、リリアンナ様と並び歩く姿ですし、お父様も少々苛立っておりますわ。
「あの男は何を考えている。無理なら無理と連絡の一つも寄こせばよいものを!」
「お父様、いいではありませんか。私はお父様と参加するのが夢だったのですから、気になさらなくてもよいですわ」
「リズ、だがな」
「気にしていても仕方ないですし、イライラするくらいなら最初から期待はしない方がいいですわ」
そしてあっという間にデビュタントの日がやってきました。
予想通りと言いますか、ルカ様からは一切の連絡はありませんでしたので、お父様は少々意地悪心を出しまして、コゼルス侯爵様が屋敷を出る直前に手紙が届くようにと一通の便りをお書きになりました。
『本日、娘のエリザベスがデビュタントを迎えることとなりました。ルカ殿からは連絡がない為、私がエスコートすることになりましたが、娘のエスコートが出来るとは思っていなかった為、連絡もしてこないルカ殿には感謝しかありません。会場で顔を見ましたら是非言葉をかけてくださいますと娘も喜びます』
もちろん、ルカ様のご両親の侯爵様宛ですが、嫌味ですわね。
実際、婚約者の方がデビュタント前ですと家族がエスコートする場合が多いです。でも、私の場合は婚約者がいますし、そのルカ様は今、20歳です。世間からするとエスコートするべきなのですが、どうやら彼にはその常識がないようですね。
以前、侍女に前髪の事を話したら「ずっと気になっていたのです。切りましょう!」とあっさりと切られていたこともあって、この日は前髪を整えて、しっかりと目が見えるようになっています。みんなから言われたこともあって、今では昔思ってたほど瞳の色を気にすることも少なくなりました。
そして当日の朝は侍女たちに磨かれ、お兄様が選び抜いた白いドレスに身を包み、お父様にエスコートをしていただいて会場の王宮へと到着しました。
我が家は伯爵家なので、入場の順番は真ん中くらいですね。ちょうどいいくらいです。
ローズマリーと、ルシア、ジーナも一緒にデビュタントですから、会場でお会いするのが楽しみなのです。学園でお会いするよりも新鮮な気持ちですわ。
さて、そろそろ順番ですわね。
お父様の手を取り、一緒に会場へと入場しましょう。
会場はとても広く、中央の奥には二階のテラスへ続く大階段があり、その奥には王族の方が登場される大きな扉があります。この日は二階への出入りは禁止になっているので、大階段は王族の皆様が降りてこられるだけのようです。
そして会場にはジーナとルシアの姿が見えましたので、先に挨拶を交わしました。ローズマリーはまだあとからのご入場でしょうし、しっかりと入場口を見ながら話をします。
「エリーはお父様のエスコート?」
「ええ、お兄様とどちらがエスコートをするか言い合いになってましたわ」
「ルカ様はどうしたの?婚約者でしょう?」
「さぁ、どうしたのでしょうね。連絡もないので、なにをなさっているのか。大方、あの方と一緒にいらっしゃるのではないですか?」
ルシアもジーナも上に姉が兄がいらっしゃるので、ルカ様の噂を知っていらっしゃるのです。私にも心配して話してくださいましたし、気になさっていたのでしょうね。優しい方々です。
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