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30.クラン設立へ向けて
しおりを挟む30.クラン設立へ向けて
「せいっ!」
空高く放り投げられた手榴弾が目標物の近くに落ちて爆発する。
手榴弾の爆発を受けたハチの巣が爆散してドロップ品である蜂蜜の入った瓶をいくつか落とす。
なんか前回も見たことある感じだなって?しょうがないじゃないか手榴弾が楽なんだもの特に今回の相手は。
今日は昼過ぎから新井さんとVR空間のプレイベートルームで用事があり、それまで暇なので家から一番近いダンジョンまでやってきている、その距離なんと家から自転車で5分という近さだ。
ここは蜂の魔物とその巣があるフィールド型ダンジョン。
【養蜂家の森】というFランクのダンジョンになる。
このダンジョンに入る人はほぼいない、理由としてはそもそも俺が住んでいる所って田舎で人が少ないって言うのと、Fランクダンジョンでうまみが少ないというのと蜂の魔物はダンジョン外の蜂より少し大きくけれどその性質は変わらないので相手するにも厄介なのだ。
1匹だけでぶんぶん飛んでいる所を倒すなら余裕だが、もし巣をちょっとでも刺激すれば群れで襲ってくるのでランクの低さに見合わない強さを持っているってのもある。
さらにドロップ品が蜂からは針と羽が、ハチの巣から蜂蜜がドロップするがそもそも針も羽も使い道が無い、唯一蜂蜜が食品として扱えて食べれるがダンジョン産だからといって特別美味しいというわけでもなく普通だ。
もっと高ランクのダンジョンで出てくるハチの巣だと美味しい蜂蜜だったりレアドロップではロイヤルゼリーも出たりするのでなおさら低ランクで採る人なんていない。
そういうわけでめちゃくちゃ近所にあるFランクダンジョンだけど今まで来ることなく放置していたわけだ、それが今回来ることにしたのは昼から用事があるからそこまで遠くに行けないってのと手榴弾が手に入った事によってこういった小さくて群れる相手には楽勝になったというのがある。
〝手榴弾〟 攻撃力:2000 耐久:200
【GunSHOP】スキルの力により現実の物よりもさらに爆発力が上がった破片手榴弾。
レバーを握り込んでから安全ピンを外し、最後にレバーを解放してから5秒後に爆発する設計になっている。
人相手にはセーフティがかかり怪我をさせない安全な造りになっているが爆発した際の衝撃までにはその効果が及ばないので取り扱いには注意が必要になる。
手榴弾は1つ700GPもするから赤字になるがこういった遊びにちょっと使うぐらいにはGPに余裕がある。
基本的に銃さえ壊れなければ消費するのは弾だけだしGPはどんどんたまる一方だった。
「あ、ここは警戒状態か」
巣によっては最初から警戒状態で蜂が何匹も外へ出ている所もある、そんなときに使うのはスタングレネードだ。
〝スタングレネード〟
【GunSHOP】スキルの力により現実の物よりもさらに威力が上がり実用的になったスタングレネード。
レバーを握り込んでから安全ピンを外し、最後にレバーを解放してから5秒後に爆発する設計になっている。
人相手にはセーフティがかかり怪我をさせない安全な造りになっているが爆発した際の衝撃までにはその効果が及ばないので取り扱いには注意が必要になる。
実際にあるスタングレネードはゲームや映画のような凄まじい効果は及ぼさないらしいがこれは【GunSHOP】スキルで購入した物なのでその効果はちゃんとしているみたいだ。
「よいしょっと」
スタングレネードを巣へと投げる、巣の大きさはおよそ5から6メートルほどもあるハチの巣としてはかなりでかいが魔物だしこんなものなんだろう。
ハチの巣へと投げ込まれたスタングレネードが巣に当たり一瞬で巣の外と中の両方から蜂が集まるがスタングレネードが爆発して大きな音と光を発する。
ぼとぼとぼと、と蜂の落ちる音がするのでそこへ今度は手榴弾を投げ込む。これで安全に倒せる。
「ドロップは蜂蜜と、スタミナ回復薬かこんなもんか」
一応、巣の攻略なのでドロップ品以外にも物が落ちている事がある。まぁそのほとんどは意味のない物だったり当たりでも今みたいにスタミナ回復薬だったりするが。
ドロップ品を拾ってからチラッと携帯で時間を確認するとちょうどもうすぐお昼という時間になっていた。
「帰るか」
ご飯食べて新井さんに招待された場所までいこう。
◇ ◇ ◇ ◇
「おや?神薙君、おはよう」
「新井さん?おはようございます」
いつも学校へ出席するときと同じ様にVRのゴーグルと手袋を付けてベットへ寝転んでからVR空間へと飛んだ。
その後、世界中でよく使われる友達とただ同じ空間で遊ぶときに使うアプリを立ち上げそこへ新井さんに貰った招待コードを入力してここまで飛んできた。
このアプリはただ友達と同じ空間へといる為の物だけではなくここから一緒に別の世界へ飛んだりゲームをしたり、このアプリから色んな所へ行けたりできたりするから基本となるアプリになる。
視界が晴れるとそこにいたのはスーツをビシッと着た新井さん、VRアバターが本人スキャンのやつで一瞬びっくりしたが頭の上に名前がついていたのでわかりやすかった。
VR空間で頭の上に名前が表示されるのはフレンド登録されている相手だけだ、そのほとんどはVRネームを自分で作って使うらしくて、本名の人もたまにいると聞くが新井さんがそうだったとはなこっちからすれば分かりやすくていいと思うけれど。
まぁそういう俺も神薙 響の名前から神薙をそのまま片仮名のカンナギにしただけだ、だから多分新井さんもすぐに俺だってわかったんだと思う。
「取り合えずこっちに座りなよ」
「はい、スーツ姿の新井さんは初めて見ますね」
「これかい?仕事していた時にね営業で使うかもしれないからと会社に言われて作ったんだけれど結局ほとんど使う事はなかったよ」
「ほへー」
そう言いながらも新井さんはカタカタと仮想キーボードを立ち上げて何か事務作業をしている。
「それで、クランの話しとは?」
「あぁ、ごめんねちょっとだけ待ってもらえるかな?このメールだけ返信したら終わるから」
「了解」
どうやらちょうど切りのいい所までやってしまいたいみたいだ。少し暇な時間ができたので部屋の中を見回してみる。
こういったプライベート空間は自分の好きに家具などを設置できる、課金すれば有名な所のを使えたり今は存在しない過去にあったアンティークなどを再現した物を使えたりとその幅は広い。
現実の家具を購入したときに仮想空間でも使えるコードを貰えたり、無料で配布している所もある。
そんな自由度の高い仮想空間でのプレイベートルームだが、新井さんのは和室仕様になっている。
畳にこたつに掛け軸とかまでかかっていて、まさに誰もがイメージする和室って感じだ。
外には縁側がありちょっとした庭園などもあってかなり豪華な空間なのがわかる、しかもさらに外の景色はサイバーパンク調なので面白い、ネオンの光るでかいビルに空を車が飛び交っている。
こたつは掘りごたつになっており部屋にはクッションがいくつもあるのでここで寝転がって休める形になっている。
因みにこたつにはちゃんとみかんが入った籠があるが、これはもちろん食べる事はできない。
それでも手に持ったり動かしたりはできるのでオブジェクトとして存在はしている。
VR空間内で使える現実と連動した携帯端末を開きソシャゲのアプリを立ち上げる、今日のログインボーナスとかを貰っておかないと。
「っと、待たせてごめんね。こっちは終わったよ」
「はい」
縁側にクッションを置いて寝転がっていた体勢から起き上がり新井さんのいる掘りごたつへと戻る。
「それでクランについてなんだけれど」
「うん」
「神薙君はクランの立ち上げ方について知っているかな?」
なんだ?突然。
「?書類だすだけなんじゃないんですか?」
「それがね、書類を出す前にクランとして力があるかどうかの試験があるんだよ」
「ほー?それはどういった物なんですか?」
「これを見てくれるかい?」
そういって新井さんは空中へ表示させていた仮想ブラウザをこちらへと持ってくる。
「依頼書?」
仮想ブラウザにはダンジョン協会発行の依頼書がいっぱいあるページが表示されていた。
ダンジョン協会のクランへの依頼書、それは素材の採取から特定の魔物の討伐及びそのドロップ品の納品やダンジョン内調査を行うための職員の護衛任務などその依頼は多岐にわたる。
ダンジョン協会がクランを指定する依頼もあるが、その他の物のほとんどはこういった形でクランでならどこでも受けれるようになっている。
変わったところでは愛玩用の魔物の捕獲などもある、こういった物は金持ちの道楽なのか結構な報酬になっているがそもそもこれ倫理的に魔物を飼うって平気なんだろうか?とか気になる所はあるが、実はダンジョンで捕獲された魔物を外で飼うって事はそこそこある。
さすがに野生化しないようにかなり厳重に管理されているが、その問題をクリアできる金持ちや国などは一定数いる。
中国にたしか魔物による動物園みたいな、魔物園とでも言えばいいのか?がある。
「そう、この中からDランク以上に設定されている依頼をクリアする事でクラン設立の許可がでるんだよ」
「そうなんですね」
まぁ言われてみればたしかに?書類ポンっとだすだけでクラン立ち上げれたらその数は物凄い事になりそうだ。ダンジョン協会だってどんなクランがあるかは把握したいだろうし無条件に増やすようなことはしないか。
「これなんてどうかな?これなら2人で達成できると思うんだけれど」
どれどれ?Dランクダンジョンの【大樹の木立】に出てくる『フォレストウルフ』の毛皮を30枚?多いな。
達成報酬は素材としての買取値段に依頼料として60万円がプラスされるか。果たしてこれは多いのだろうか?
「あれ?というか2人でいくんですか?」
新井さんと2人でいくのか?
「そうだね………今のところ私達のクランへと加入が決定しているのは私と神薙君の2人だけだからね」
まじか………2人だけのクラン……深くは考えないでおこう。
「流石に2人は少なくないですか?事務処理もあるでしょうし新井さんが忙しくなりすぎるのでは?」
「あぁ!そうだった事務処理全般をしてくれる人も加入予定だよ。これで3人だね」
「3人ですか」
「他にも声をかけたんだけどね、みんなそれぞれ入りたいところがあったみたいで断られたよ」
俺は特に何も考えてなかったから簡単に決めてしまったけど、みんなちゃんと入りたいところとか考えてるんだな。
「お?新井さん、これ見て下さいよ。これなら俺多分ソロで行けますよ」
「何々?『幻想鳥』の捕獲!?これランクBの依頼だよ?本当に達成できるの?」
「はい、考えがあるので大丈夫だと思います」
「神薙君がそういうならいいけれど………私の方でも一応ソロで達成できそうなのを受けておくよ?」
「はい」
Bランク依頼:《『幻想鳥』の捕獲》
Cランクダンジョンの【世界樹の花園】にいる『幻想鳥』を生きたまま捕獲してください。達成報酬は500万に生け捕り時の状態によりボーナスを追加します。
これが受けようと思っている依頼だ。
捕獲するのは特殊な魔物でその習性のせいで捕獲が難しい鳥だ。
この鳥については変わった魔物として以前テレビで紹介しているのを見て覚えていた、今の俺なら『幻想鳥』を捕獲する事が出来るはずだ。
アレを使えば。
「せいっ!」
空高く放り投げられた手榴弾が目標物の近くに落ちて爆発する。
手榴弾の爆発を受けたハチの巣が爆散してドロップ品である蜂蜜の入った瓶をいくつか落とす。
なんか前回も見たことある感じだなって?しょうがないじゃないか手榴弾が楽なんだもの特に今回の相手は。
今日は昼過ぎから新井さんとVR空間のプレイベートルームで用事があり、それまで暇なので家から一番近いダンジョンまでやってきている、その距離なんと家から自転車で5分という近さだ。
ここは蜂の魔物とその巣があるフィールド型ダンジョン。
【養蜂家の森】というFランクのダンジョンになる。
このダンジョンに入る人はほぼいない、理由としてはそもそも俺が住んでいる所って田舎で人が少ないって言うのと、Fランクダンジョンでうまみが少ないというのと蜂の魔物はダンジョン外の蜂より少し大きくけれどその性質は変わらないので相手するにも厄介なのだ。
1匹だけでぶんぶん飛んでいる所を倒すなら余裕だが、もし巣をちょっとでも刺激すれば群れで襲ってくるのでランクの低さに見合わない強さを持っているってのもある。
さらにドロップ品が蜂からは針と羽が、ハチの巣から蜂蜜がドロップするがそもそも針も羽も使い道が無い、唯一蜂蜜が食品として扱えて食べれるがダンジョン産だからといって特別美味しいというわけでもなく普通だ。
もっと高ランクのダンジョンで出てくるハチの巣だと美味しい蜂蜜だったりレアドロップではロイヤルゼリーも出たりするのでなおさら低ランクで採る人なんていない。
そういうわけでめちゃくちゃ近所にあるFランクダンジョンだけど今まで来ることなく放置していたわけだ、それが今回来ることにしたのは昼から用事があるからそこまで遠くに行けないってのと手榴弾が手に入った事によってこういった小さくて群れる相手には楽勝になったというのがある。
〝手榴弾〟 攻撃力:2000 耐久:200
【GunSHOP】スキルの力により現実の物よりもさらに爆発力が上がった破片手榴弾。
レバーを握り込んでから安全ピンを外し、最後にレバーを解放してから5秒後に爆発する設計になっている。
人相手にはセーフティがかかり怪我をさせない安全な造りになっているが爆発した際の衝撃までにはその効果が及ばないので取り扱いには注意が必要になる。
手榴弾は1つ700GPもするから赤字になるがこういった遊びにちょっと使うぐらいにはGPに余裕がある。
基本的に銃さえ壊れなければ消費するのは弾だけだしGPはどんどんたまる一方だった。
「あ、ここは警戒状態か」
巣によっては最初から警戒状態で蜂が何匹も外へ出ている所もある、そんなときに使うのはスタングレネードだ。
〝スタングレネード〟
【GunSHOP】スキルの力により現実の物よりもさらに威力が上がり実用的になったスタングレネード。
レバーを握り込んでから安全ピンを外し、最後にレバーを解放してから5秒後に爆発する設計になっている。
人相手にはセーフティがかかり怪我をさせない安全な造りになっているが爆発した際の衝撃までにはその効果が及ばないので取り扱いには注意が必要になる。
実際にあるスタングレネードはゲームや映画のような凄まじい効果は及ぼさないらしいがこれは【GunSHOP】スキルで購入した物なのでその効果はちゃんとしているみたいだ。
「よいしょっと」
スタングレネードを巣へと投げる、巣の大きさはおよそ5から6メートルほどもあるハチの巣としてはかなりでかいが魔物だしこんなものなんだろう。
ハチの巣へと投げ込まれたスタングレネードが巣に当たり一瞬で巣の外と中の両方から蜂が集まるがスタングレネードが爆発して大きな音と光を発する。
ぼとぼとぼと、と蜂の落ちる音がするのでそこへ今度は手榴弾を投げ込む。これで安全に倒せる。
「ドロップは蜂蜜と、スタミナ回復薬かこんなもんか」
一応、巣の攻略なのでドロップ品以外にも物が落ちている事がある。まぁそのほとんどは意味のない物だったり当たりでも今みたいにスタミナ回復薬だったりするが。
ドロップ品を拾ってからチラッと携帯で時間を確認するとちょうどもうすぐお昼という時間になっていた。
「帰るか」
ご飯食べて新井さんに招待された場所までいこう。
◇ ◇ ◇ ◇
「おや?神薙君、おはよう」
「新井さん?おはようございます」
いつも学校へ出席するときと同じ様にVRのゴーグルと手袋を付けてベットへ寝転んでからVR空間へと飛んだ。
その後、世界中でよく使われる友達とただ同じ空間で遊ぶときに使うアプリを立ち上げそこへ新井さんに貰った招待コードを入力してここまで飛んできた。
このアプリはただ友達と同じ空間へといる為の物だけではなくここから一緒に別の世界へ飛んだりゲームをしたり、このアプリから色んな所へ行けたりできたりするから基本となるアプリになる。
視界が晴れるとそこにいたのはスーツをビシッと着た新井さん、VRアバターが本人スキャンのやつで一瞬びっくりしたが頭の上に名前がついていたのでわかりやすかった。
VR空間で頭の上に名前が表示されるのはフレンド登録されている相手だけだ、そのほとんどはVRネームを自分で作って使うらしくて、本名の人もたまにいると聞くが新井さんがそうだったとはなこっちからすれば分かりやすくていいと思うけれど。
まぁそういう俺も神薙 響の名前から神薙をそのまま片仮名のカンナギにしただけだ、だから多分新井さんもすぐに俺だってわかったんだと思う。
「取り合えずこっちに座りなよ」
「はい、スーツ姿の新井さんは初めて見ますね」
「これかい?仕事していた時にね営業で使うかもしれないからと会社に言われて作ったんだけれど結局ほとんど使う事はなかったよ」
「ほへー」
そう言いながらも新井さんはカタカタと仮想キーボードを立ち上げて何か事務作業をしている。
「それで、クランの話しとは?」
「あぁ、ごめんねちょっとだけ待ってもらえるかな?このメールだけ返信したら終わるから」
「了解」
どうやらちょうど切りのいい所までやってしまいたいみたいだ。少し暇な時間ができたので部屋の中を見回してみる。
こういったプライベート空間は自分の好きに家具などを設置できる、課金すれば有名な所のを使えたり今は存在しない過去にあったアンティークなどを再現した物を使えたりとその幅は広い。
現実の家具を購入したときに仮想空間でも使えるコードを貰えたり、無料で配布している所もある。
そんな自由度の高い仮想空間でのプレイベートルームだが、新井さんのは和室仕様になっている。
畳にこたつに掛け軸とかまでかかっていて、まさに誰もがイメージする和室って感じだ。
外には縁側がありちょっとした庭園などもあってかなり豪華な空間なのがわかる、しかもさらに外の景色はサイバーパンク調なので面白い、ネオンの光るでかいビルに空を車が飛び交っている。
こたつは掘りごたつになっており部屋にはクッションがいくつもあるのでここで寝転がって休める形になっている。
因みにこたつにはちゃんとみかんが入った籠があるが、これはもちろん食べる事はできない。
それでも手に持ったり動かしたりはできるのでオブジェクトとして存在はしている。
VR空間内で使える現実と連動した携帯端末を開きソシャゲのアプリを立ち上げる、今日のログインボーナスとかを貰っておかないと。
「っと、待たせてごめんね。こっちは終わったよ」
「はい」
縁側にクッションを置いて寝転がっていた体勢から起き上がり新井さんのいる掘りごたつへと戻る。
「それでクランについてなんだけれど」
「うん」
「神薙君はクランの立ち上げ方について知っているかな?」
なんだ?突然。
「?書類だすだけなんじゃないんですか?」
「それがね、書類を出す前にクランとして力があるかどうかの試験があるんだよ」
「ほー?それはどういった物なんですか?」
「これを見てくれるかい?」
そういって新井さんは空中へ表示させていた仮想ブラウザをこちらへと持ってくる。
「依頼書?」
仮想ブラウザにはダンジョン協会発行の依頼書がいっぱいあるページが表示されていた。
ダンジョン協会のクランへの依頼書、それは素材の採取から特定の魔物の討伐及びそのドロップ品の納品やダンジョン内調査を行うための職員の護衛任務などその依頼は多岐にわたる。
ダンジョン協会がクランを指定する依頼もあるが、その他の物のほとんどはこういった形でクランでならどこでも受けれるようになっている。
変わったところでは愛玩用の魔物の捕獲などもある、こういった物は金持ちの道楽なのか結構な報酬になっているがそもそもこれ倫理的に魔物を飼うって平気なんだろうか?とか気になる所はあるが、実はダンジョンで捕獲された魔物を外で飼うって事はそこそこある。
さすがに野生化しないようにかなり厳重に管理されているが、その問題をクリアできる金持ちや国などは一定数いる。
中国にたしか魔物による動物園みたいな、魔物園とでも言えばいいのか?がある。
「そう、この中からDランク以上に設定されている依頼をクリアする事でクラン設立の許可がでるんだよ」
「そうなんですね」
まぁ言われてみればたしかに?書類ポンっとだすだけでクラン立ち上げれたらその数は物凄い事になりそうだ。ダンジョン協会だってどんなクランがあるかは把握したいだろうし無条件に増やすようなことはしないか。
「これなんてどうかな?これなら2人で達成できると思うんだけれど」
どれどれ?Dランクダンジョンの【大樹の木立】に出てくる『フォレストウルフ』の毛皮を30枚?多いな。
達成報酬は素材としての買取値段に依頼料として60万円がプラスされるか。果たしてこれは多いのだろうか?
「あれ?というか2人でいくんですか?」
新井さんと2人でいくのか?
「そうだね………今のところ私達のクランへと加入が決定しているのは私と神薙君の2人だけだからね」
まじか………2人だけのクラン……深くは考えないでおこう。
「流石に2人は少なくないですか?事務処理もあるでしょうし新井さんが忙しくなりすぎるのでは?」
「あぁ!そうだった事務処理全般をしてくれる人も加入予定だよ。これで3人だね」
「3人ですか」
「他にも声をかけたんだけどね、みんなそれぞれ入りたいところがあったみたいで断られたよ」
俺は特に何も考えてなかったから簡単に決めてしまったけど、みんなちゃんと入りたいところとか考えてるんだな。
「お?新井さん、これ見て下さいよ。これなら俺多分ソロで行けますよ」
「何々?『幻想鳥』の捕獲!?これランクBの依頼だよ?本当に達成できるの?」
「はい、考えがあるので大丈夫だと思います」
「神薙君がそういうならいいけれど………私の方でも一応ソロで達成できそうなのを受けておくよ?」
「はい」
Bランク依頼:《『幻想鳥』の捕獲》
Cランクダンジョンの【世界樹の花園】にいる『幻想鳥』を生きたまま捕獲してください。達成報酬は500万に生け捕り時の状態によりボーナスを追加します。
これが受けようと思っている依頼だ。
捕獲するのは特殊な魔物でその習性のせいで捕獲が難しい鳥だ。
この鳥については変わった魔物として以前テレビで紹介しているのを見て覚えていた、今の俺なら『幻想鳥』を捕獲する事が出来るはずだ。
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