夢の架け橋に君が隠れる

オラフ

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1日目(3) 真夜中 夢の架け橋に

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 今日が終わるまであと3時間しかない。
 俺は疲れていた体を使って全力で休憩することもなく進み続けた。
 今日はいつもより涼しいので登れば登るほど冷たくて気持ちがよかった。
 24時になる前には頂上に着くことができた。
 頂上は下の祭りと違って暗かった。
 階段を上がると目の前にあるベンチに女性が座っていた。
 俺は彼女を知らない。どう足掻いても彼女との記憶は思い出せなかった。 
 しかし彼女こそが君なのだ。俺は隣に座り、彼女に話しかける。

「君は日暖なのか? 」

「結城くんも私のこと忘れちゃったの 」

「すまん、日暖の顔を思い出せないんだ」

「そっか。ごめん、ちょっと涙出てきちゃった」
 彼女は涙を流しながら、俺から顔を背けた。

「俺から顔を背けんなよ」

 その時、彼女の後ろから大きな音が聞こえた。
 花火が打ち上げられたのだ。
 横尾祭りでは11時55分から5分間花火が絶え間なく上がり続ける。
 その花火によって振り向いた彼女の目から流れる涙が輝いている。
 君は俺の顔をじっと見ていた。
 俺の心臓の鼓動がうるさく鳴り響いた。
 俺は目の前にいる女性に一目惚れしていたのだ。
 後ろの花火とリンクした君の綺麗な顔を見て、俺は彼女が日暖だと確信した。
 俺は君の目に吸い込まれるように口づけをした。

「やっぱり君は日暖なんだな、俺をまた好きにさせちまうんだからよ。泣かせること言ってごめんな」

 君は下を向いていた。
 俺は君を優しく抱いた。

「そうやって私のこともう離さないで。次忘れたら許さないから」

「大丈夫、何があっても離さない。どこに隠れてても世界中が日暖を忘れても俺がまた探し出してやるからよ」

 もう一度君と口づけを交わす。
 二人のキスを輝かせるように、花火は上がり続けていた。


「なあ日暖、何で横尾山の山頂にいたんだよ」

 俺たち二人は山頂から降り、終わった祭りの残骸を横目に帰っていた。 

「体が勝手に動いてたんだよね。横尾山に向かうように仕向けられてた感じがする」

「どういうことだよ? 」

「私考えたんだけどさ、今日の祭りって何のための祭りか知ってる? 」

「確か七夕の祭りだろ」  

「そう、さっきの花火だって天の川を連想してるしね」

「そうなの、それは知らなかった」

「ていうことはさ、横尾山の頂上は天の川にある架け橋なんじゃないかな。会いたくてしょうがない二人が天の川の架け橋で会うようになってたんだよ」

「それは素晴らしい発想力だ。日暖は案外ロマンチストなんだな」

「なにそれ、ばかにしてない? 違うとしても結局結城くんと会えたから別に良いけど」

「俺も日暖に会えてうれしいよ」

 確かに頂上が架け橋だとして、俺が架け橋を上りきる前に津波が来たということは、俺は二回も架け橋から落ちて川に溺れたと言うことかもしれない。
 溺れたからもう一回朝から繰り返すはめになったのかもしれないな。   
 なぜ頂上が橋なのか?
 もしかすると地蔵が、織姫と彦星の物語を見たいがために俺らは付き合わされていたのかもしれない。
 真相は分からない。
 今日はもう君が東京に引っ越す日になっている。
 果歩ちゃんの家に着いた。

「じゃあな、日暖。引っ越す前にちゃんと寝とけよ」

「明日私のこと送りに来てくれる? 」

「分かった、約束な。早く帰らないと果歩ちゃんが心配するぞ」

「そうだね、おやすみ」

「おやすみな」

俺は日暖が家に入るのを見届けて家に帰った。
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