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1日目(2) 夜 運命なんて変えてやる
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太陽が沈みかかっている。
きれいな夕日と裏腹にみんな不安が溢れていた。
まだ津波は来ていないが東京が沈んだと言う知らせをラジオで聴き、誰もが落ち着いてはいられなかった。
俺ら家族は家を出て二十分弱で横尾山のお寺の前に着くことが出来た。
むなしくも祭りの準備が残っている。
俺たちが着くと他の家族が先に階段を上っていた。
村の偉い人がどんな高さの津波が来るか分からないから階段を上るようにと命じていたからだ。
君も果歩ちゃんの家族の中にいた。もう上り始めている。
みんな避難していたことにほっとした。
しばらくして圭太と会い、一緒に上ることになった。
「なあ結城、なんで日暖ちゃんの家族はいないんだ? 」
「日暖の家族は東京にいってんだ。本当だったら引っ越す予定でさ、日暖より少し早く東京に行ってんだよ」
「日暖ちゃん引っ越すの?何で結城が知ってんだよ」
俺は質問に答えなかった。
山頂まで行ったら君に話しかけに行くか悩んでいて、あまり聞いていなかったからだ。
「どうなんだよ結城。聞いてんのか」
「一昨日、いや昨日聞いた。それより上に着いたら横尾山高校の友達どこかに集めようぜ」
「オーケー。じゃあ、地蔵の前にみんな集めようぜ、俺始めて行くしな」
「分かった」
階段は結構長く、みんなバテてきて少し進みが止まってきた。
しかしみんなの声かけもあってか津波が来る前には頂上につくことができた。
頂上につくとテントの用意が始まっていた。
まだ遅い時間ではないが疲れて寝ている人までいた。
俺も母ちゃんとテントを張り、地蔵の前に向かった。
もう先に、圭太によばれた高校の友達がいた。
その中に君もいた。本当だったら二人で祭りを楽しむはずだったのに。
圭太が見当たんなかったがすぐに見つけることが出来た。
階段のところに一人座っていたのだ。
「どうした圭太、怖いのか? 」
「いや別に。この町が水に変わるなら見てみたいと思ってね」
「圭太が集めたのにいないわけにはいかないだろ。もうみんな集まってるぞ」
「裕樹あの場所覚えてる? 」
圭太は都会の方を指差した。
「圭太が泣いたところだろ」
「ひどいな、別に思い出はそれだけじゃないだろ。また行きたいな」
「そうだな、とりあえずは死なないことだ」
「死なないって、流石に津波もここまでは来ないだろ」
「それもそうだな、ここまでは来ないはずだ」
どこまで来るかなんて俺は知っている。
俺は確信しているのだ。みんな死なないで済むはずだと。
「そうだよな、つうかあんなビルよりも高い建物なんてあったけ? 」
「ビルよりも高い? そんなものあるわけねぇ……」
津波が来ていた。この前見た津波よりでかい、デカすぎる。
こんなとこなんて簡単に呑み込まれてしまうほどの大きさだ。
何で津波の高さが変わっているんだよ。
ものすごく速いスピードで津波が迫ってきている。
「津波だ、津波が来たぞ」
「何あれ、デカすぎるだろ」
周りで騒ぎが始まった。誰もが絶望の顔をしている。
君も圭太も母ちゃんも咲も騒ぎで見えなくなった。
「なんで変わってるんだよ。悪い現実を夢にしてくれるんじゃねえのかよ。みんな死ぬ運命がなんで変わんねぇんだよ」
もう波が目の前まで迫っている。
その時君が近づいてきて、俺の胸に飛び込んだ。
「怖いよ結城くん、私たち死んじゃうのかな? 」
目が充血している。怖いよな、俺でも怖いんだから。
みんな津波が目の前に現れ、唖然として誰も動くものはいなくなった。
その中で俺の声はものすごくでかく、響いていた。
「日暖、目つぶってな。次に目を開けたときには良い明日を見せてやる。こんな運命俺が変えてやっから」
この状態を救える可能性があるのは俺だけだ。
「頼む、ここに神がいるんならよ。全てが水に沈む運命を夢に変えてくれよ。もう誰にもいなくなってほしくねえんだ」
水が俺らのところに降り注いだ。そして全てが海の一部になった。
きれいな夕日と裏腹にみんな不安が溢れていた。
まだ津波は来ていないが東京が沈んだと言う知らせをラジオで聴き、誰もが落ち着いてはいられなかった。
俺ら家族は家を出て二十分弱で横尾山のお寺の前に着くことが出来た。
むなしくも祭りの準備が残っている。
俺たちが着くと他の家族が先に階段を上っていた。
村の偉い人がどんな高さの津波が来るか分からないから階段を上るようにと命じていたからだ。
君も果歩ちゃんの家族の中にいた。もう上り始めている。
みんな避難していたことにほっとした。
しばらくして圭太と会い、一緒に上ることになった。
「なあ結城、なんで日暖ちゃんの家族はいないんだ? 」
「日暖の家族は東京にいってんだ。本当だったら引っ越す予定でさ、日暖より少し早く東京に行ってんだよ」
「日暖ちゃん引っ越すの?何で結城が知ってんだよ」
俺は質問に答えなかった。
山頂まで行ったら君に話しかけに行くか悩んでいて、あまり聞いていなかったからだ。
「どうなんだよ結城。聞いてんのか」
「一昨日、いや昨日聞いた。それより上に着いたら横尾山高校の友達どこかに集めようぜ」
「オーケー。じゃあ、地蔵の前にみんな集めようぜ、俺始めて行くしな」
「分かった」
階段は結構長く、みんなバテてきて少し進みが止まってきた。
しかしみんなの声かけもあってか津波が来る前には頂上につくことができた。
頂上につくとテントの用意が始まっていた。
まだ遅い時間ではないが疲れて寝ている人までいた。
俺も母ちゃんとテントを張り、地蔵の前に向かった。
もう先に、圭太によばれた高校の友達がいた。
その中に君もいた。本当だったら二人で祭りを楽しむはずだったのに。
圭太が見当たんなかったがすぐに見つけることが出来た。
階段のところに一人座っていたのだ。
「どうした圭太、怖いのか? 」
「いや別に。この町が水に変わるなら見てみたいと思ってね」
「圭太が集めたのにいないわけにはいかないだろ。もうみんな集まってるぞ」
「裕樹あの場所覚えてる? 」
圭太は都会の方を指差した。
「圭太が泣いたところだろ」
「ひどいな、別に思い出はそれだけじゃないだろ。また行きたいな」
「そうだな、とりあえずは死なないことだ」
「死なないって、流石に津波もここまでは来ないだろ」
「それもそうだな、ここまでは来ないはずだ」
どこまで来るかなんて俺は知っている。
俺は確信しているのだ。みんな死なないで済むはずだと。
「そうだよな、つうかあんなビルよりも高い建物なんてあったけ? 」
「ビルよりも高い? そんなものあるわけねぇ……」
津波が来ていた。この前見た津波よりでかい、デカすぎる。
こんなとこなんて簡単に呑み込まれてしまうほどの大きさだ。
何で津波の高さが変わっているんだよ。
ものすごく速いスピードで津波が迫ってきている。
「津波だ、津波が来たぞ」
「何あれ、デカすぎるだろ」
周りで騒ぎが始まった。誰もが絶望の顔をしている。
君も圭太も母ちゃんも咲も騒ぎで見えなくなった。
「なんで変わってるんだよ。悪い現実を夢にしてくれるんじゃねえのかよ。みんな死ぬ運命がなんで変わんねぇんだよ」
もう波が目の前まで迫っている。
その時君が近づいてきて、俺の胸に飛び込んだ。
「怖いよ結城くん、私たち死んじゃうのかな? 」
目が充血している。怖いよな、俺でも怖いんだから。
みんな津波が目の前に現れ、唖然として誰も動くものはいなくなった。
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この状態を救える可能性があるのは俺だけだ。
「頼む、ここに神がいるんならよ。全てが水に沈む運命を夢に変えてくれよ。もう誰にもいなくなってほしくねえんだ」
水が俺らのところに降り注いだ。そして全てが海の一部になった。
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